ホラーというか東宝特撮映画のジャンルのひとつ、空想スリラー映画ならあります。

 

 

 

〇マタンゴ(1963年)

 

 

・ストーリー

 

東京の病院に隔離された一人の男、彼は自らが体験した恐怖の出来事を語るところから始まる・・・

豪華なヨットで航海に出た彼を含む7人の男女。だが嵐に見舞われて難破するが無人島に漂着。

しかしその島はカビと不気味なキノコに覆われた孤島であった。

彼らは波打ち際の難破船を発見し少量の食糧を見つけるが、同時に未知のキノコ「マタンゴ」の標本と

「船員が日々消えていく」と記された日記、「キノコを食べるな」という警告も発見され、

この船が核実験の影響を調査する海洋調査船である事を知る。しかも船内の鏡はすべて壊されていた。

 

7人は始めこそキノコに手を出さず協力していたが・・・極限状態と飢餓から心はバラバラとなり、

さらにキノコに似た不気味な生物の出没し始め、遂には一人、また一人とキノコに手を出してしまう・・・

 

「美女と液体人間」、「電送人間」と後述の1作からなる3部作とは異なる変身人間シリーズですが、

本作はマタンゴというキノコおよび第3の生物そのものだけでなく、

「極限状態に置かれた人間の本性」という恐怖をも描き、第一線級のトラウマ映画として語り継がれています。

また、同時上映が明るい青春映画「ハワイの若大将」であったため、

そのギャップもまたある種の語り草として有名です。

 

 

 

〇ガス人間第一号(1960年)

 

 

・ストーリー

 

吉祥寺で発生した銀行強盗殺人事件の犯人を追う岡本警部補だが、犯人の車は五日市街道の崖から転落。

しかしその車には犯人の姿がなかった。しかも後に指紋はすべて銀行関係者のものである事が判明。

捜査中岡本は春日流家元・春日藤千代の屋敷を発見するも、その家は彼女と爺やの二人住まいだった。

だが数日後、今度は中野の銀行で強盗事件が発生。しかも不可解な事に金庫室には鍵がかかったままであり、

殺された行員は窒息死だが絞殺ではなく何かが器官に詰まった状態だったという。

その一方捜査を続ける岡本は恋人の新聞記者・京子の助けを借りながら藤千代を調査し、

酷い落ち目となった彼女が急に羽振りが良くなった事を知る。

急に大金ができた藤千代は高級車を買い、絶縁状態にあった弟子たちに大金を配って呼び戻し、

さらには「情鬼(じょうき)」という題目での発表会に向けて動き出していた。

そんな中、京子の新聞社に強盗事件の犯人と名乗る人物から犯行予告の電話が入り、

それを知った岡本は犯人が指定した新宿の銀行を張るが・・・犯人は裏をかいて大森の銀行を襲撃する。

しかし犯人は捕まり取り調べが行われるも・・・その犯人・西山は金の流れと隠し場所を吐かなかった。

そして藤千代の使った金と保管していた金がすべて事件のものである事が発覚し、彼女は逮捕される。

 

こうして事件は解決した・・・と思われていたが、図書館の司書・水野が警視庁記者クラブに姿を現し、

西山は模倣犯であり、吉祥寺と中野の事件の犯人が自分である事を記者たちに明かし、

今から記者立ち合いの元自首すると告げる。

にわかに信じがたい岡本たちを信用させるべく、水野は「事件の再現」を提案。

こうして再現が行われたが・・・そこで恐るべき事が起きる。

水野の身体がガス化して鍵のかかった金庫室に侵入、支店長を殺害し金を持ち出していく。

まさに事件を”再現”したのであった。

こうして「ガス人間」と名付けられた水野は藤千代の釈放を要求する一方、

警察が応じなかった事への報復行動を起こしつつ彼女を連れて行こうとする。

だが藤千代は自らの潔白を示すためにこれを拒む。

 

新聞社ではネタに困る中、京子が社告を出して面会を取り付けようと画策。

その目論見は成功し、水野は新聞社を訪れ過去を話す。

航空自衛隊でのジェットパイロットの夢破れ、退屈な図書館の司書として日々を過ごしていた中、

生物学の権威・佐野博士から助手として雇いたいという申し出があった。

佐野博士は人間ドックと吹聴して水野を実験台にし、宇宙飛行士を生み出す人体実験を行うが、

その結果自身の身体をガス化させる能力を持つガス人間が完成してしまう。

自分を騙した事、そして己の実験のために数人の青年を犠牲にした事への怒りから水野は博士を殺害。

絶望に打ちひしがれるも精神統一でガス状にも人間にもなれる事に気づき、

人間として生きようとする一方、全能感をも抱く事となってしまう。

その後に藤千代と出会い、自身の能力を「彼女を再評価させるため」の事だけに使ったのである。

 

こうして半ばガス人間に屈する形となった警視庁から釈放された藤千代であったが、

その経緯を知った弟子たちからは手を引かれてしまい、再び孤立状態となってしまう。

屋敷に来た水野に凶行を止めるよう説得するも・・・それでも彼の意志は揺るがなかった。

ガス人間の存在はやがて模倣犯や集金・公金を横領しガス人間にやられたと嘘をつく者たちを生み出し、

この社会不安を重く見た警視庁は水野抹殺を決断する。

その一方、切符が完売し発表会に臨む藤千代であったが、京子からその切符が警察の買い占めで完売した事、

世間では彼女の踊りよりも水野との関係に興味がある事を聞かされ、発表会は中止すべきと説得される。

しかし彼女は・・・経緯はどうであれ発表会開催に尽力した水野のためにも躍る事を決意する。

 

発表会当日・・・無毒無臭の可燃性ガスでホール諸共ガス人間を葬り去る計画の実行日でもあった。

舞台では舞う藤千代と鼓を打つ爺や、無人の客席では踊りを見守る水野の姿が・・・

果たしてガス人間を倒す作戦は成功するのだろうか・・・?

 

前述した2作と並ぶ変身人間シリーズ3部作のラストを飾る本作は、

スリラー要素こそ抑え目ではあるものの、前半の謎だらけの銀行強盗事件を追っていく過程、

後半のガス人間の恐怖と悲哀、そして人間ならざる男とその才能ゆえに世間から抹殺された女の悲恋と、

物語の路線切り返しの妙を体現した1作となっています。

 

劇伴に関しても秀逸な完成度を誇り、後年制作された「ウルトラQ」に大半が、「ウルトラマン」に少数が流用され、

非常に効果的な結果を与えていました。

ウルトラQの場合、メインタイトルと冒頭の追跡シーンの曲が主に怪獣のシーンで使われています。

ウルトラマンでは第10話「謎の恐竜基地」でのラスト、第37話「小さな英雄」でのイデ隊員が自らを恥じて再起するシーンに、

エンディング曲が用いられています。

BGMは1991年発売の「ウルトラマン総音楽集」にボーナストラックとして未使用分も含めて全曲が収録され、

ライナーノーツにはデータ・解説・楽曲メニューも記載されているほど、資料性にも富んだものとなっています。

 

公開50周年となる2010年には舞台版の上演も行われ、こちらはコメディ要素を交えながらも、

原作へのリスペクトを強く込めた作品となりました。

 

 

 

この他のスリラー映画以外にも、東宝特撮映画には「世界大戦争」や「日本沈没」など、

戦争、パニックの方向での恐ろしさを描いた作品もあります。

ただし視聴の際は留意して下さい。

 

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