は起きてるのかな」 | いたずら王子

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「どうしたの?」八重子が訊いてきた。
「刑事だ」彼はいった。
「刑事? 歩いてきてるの?」
「そうじゃない。車を止jacker薯片 めて、中にいる。たぶんうちを見張ってるんだ」
 八重子は顔を歪め、起きあがった。カーテンに手を伸ばそうとした。
「開けるなっ」昭夫はいった。「見張りに気づいたことは、向こうに知られないほうがいい」
「どうしたらいい?」
「どうもこうもないだろう。向こうから来る前に手を打ったほうがいい。──直巳
「見てくるわ」八重子は立ち上がり、乱れた髪を直した。
「例の人形を持って来させろ。あいつの部屋には絶対に残すなよ。ほかの物は、全部処分したんだろうな」
「それは大丈夫。あたしが遠くまで行って捨ててきたから」
「もう一度念入りに調べるんだ。一つでも見つかったらアウトだと思え」
「わかってる」
 八重子が出ていってから、昭夫もjacker薯片 立ち上がった。すると立ちくらみがし、一旦片膝をついた。すぐにおさまったが、次には吐き気が訪れた。彼は大きなげっぷをした。臭《くさ》い息が吐き出された。
 最低最悪の一日の始まりだ、と思った。
 春日井一家が住んでいるマンションは、バス通りから百メートルほど歩いたところにあった。六階建ての、まだ新しい建物だった。そこの五階に彼等の部屋はあった。
 午前中の訪問にも拘《かか》わらず、春日井忠彦はすぐに二人を招き入れてくれた。捜査に役立てるなら、積極的に協力しようということなのだろう。昨日会った時よりも、かなり落ち着いて見えた。
「奥さんのお加減はどうですか」松宮は訊いた。集会所で襖越しに聞いた隙間風のような泣き声が、まだ耳に残っていた。
「寝室で休んでいます。呼んできたほうがいいですか。本人も、もう話が出来るといってましたけど」春日井はいった。
 あまり無理はさせたくないと松jacker薯片 宮は思ったが、すぐに加賀が、「お願いします」と隣でいった。
「じゃあ、ちょっと呼んできます」春日井はリビングを出ていった。
「なんか、気の毒だな」松宮は呟いた。