チェ・ヨン33歳とユ・ウンス29歳の、もう一つのシンイ 「社内LOVEストーリー」
ドラマ最終回のチェ・ヨンが、天門をくぐって現代にやってきた
辿り着いた先は、2008年のソウル
天門にのみこまれたイムジャを探し求め、現代で錯綜するチェ・ヨン
そしてついに二人は再会。しかし、その時のウンスの年齢は29歳
そこにいたのはチェ・ヨンを知らない、まだ若い頃のウンスだった
「社内LOVE序章1」
*********
*アメンバーの方はすでに読んだお話ですが、結構加筆したのでよかった読みなおしてみてください。イメージ画像をつけました
その時、俺はそんなイムジャの態度に、途轍もない苛立ちを覚えた
これは紛れもない八つ当たりだ
分かっておる。この方に何の罪もない
これほどの長い年月、イムジャの事だけを想い、イムジャだけを求め過ごしてきた
そんな狂おしいほどの想いを露わにする事すら出来ぬ。押し殺すように自分の中に止めねばならぬ
目の前のこの方は、そのような俺の耐え難い想いなど露も知らずに、平然とした態度で笑いかける
向けられる先は、決して俺ではない。ただ、目の前に居る、面接官の俺へと
どす黒い想いが胸を燻らせる。俺は何てちっぽけな男だ。自分でも、この悲しみを制御しきれなかった
薄汚い気持ちが胸をついて、俺の口からは思ってもいない、馬鹿げたような言葉が吐き出されてしまった
あどけなく笑うイムジャに、憎しみにも似た、まさに愛憎の想いをぶつけたくなる
意地悪く、当て付けがましく
何も知らぬ顔で笑顔を向けるこの方が、憎たらしく思えた
此処にあるのは陰と陽
俺を飲みこむ悲壮感、虚無感、脱力感、絶望感。あらゆる陰の感情が血迷わせる
「名前は?」
「ユ・ウンスです」
「歳は?」
「29歳です」
「スリーサイズは?」
「えっ?」
「スリーサイズはと、聞いておるのです」
「やだ、え…それって、どういう…」
「胸・腰・尻。あなたはそのような事を、言わねば分かりませんか?」
気付けばそんな言葉が俺の口から出ていた
隣に座っていた部下の男が、小声で俺を止めようする。その時の俺は聞く耳すら持ち合わせていなかった
何この面接官の男?
いきなり何を言い出すの?
ウンスは表情を硬く強張らせた
「それって、その…この面接と何も関係なくありませんか?」
先日、勤めていた病院をいきなり首にされた。この会社からのオファー
大手だもの。まさに渡りに舟だった
イムジャが困惑したように顔を曇らせ、目の前の俺に戸惑いながらも、言葉を曲げずはっきりと言い返してきた
曲がった事は許せないこの方の気性
俺の知るイムジャと似通っていると思うほど、腹立たしく思えてしまう
「ユ・ウンスssi。面接に来たのであれば、面接官の問いには全て答えて頂かねば…」
ペンを握る手が震え、握りしめ拳に力を入れた。俺はいったい何を言っておるのだ
だが、言ってしまったものは、いまさら取り返しがつかぬ
こうなれば開き直りだ
嘘…何この人
面接室に入った瞬間、この男の顔に目が奪われてしまった
類稀なイケメンだと思ったら、頭でもおかしいんじゃないの?
それに何か…違和感が。あぁ、そうか。時代錯誤の変な話し方
最近この会社「チェ・ヨン将軍」のドラマを作ったって、ユラが言ってたわよね
面接来る前に見ようと思ったけど、結局見る前に寝ちゃった…
あなたはチェ・ヨン将軍?歴史ドラマの主人公でも気取っているわけ?
あっ、映画製作会社だから、成りきって態とやっているのかしら?
でも、ここは普通の映画製作会社じゃないって噂もある。裏の顔があるって話…
やっぱり面接官も普通の頭じゃないの?
ぶつぶつと呟きながら、何かを思案している様子のウンス
「答えぬのですか?」
チェヨンは苛立ちをぶつける様に、ウンスに対して冷たく言葉を重ねた
ウンスは男の声に顔をすくっと上げ
「そんな事を答えないと駄目ですか?」
眉間に皺を寄せ、困惑の色をさらに強く浮かべて窺った
「内定を欲しくはないのですか?欲しいのであれば…答えたほうが良いのでは?」
内定は欲しくないのかですって?
やだ、嘘…
これってセクハラ面接?
見たことないような世間離れしたイケメン
そんな事を言いそうな人に見えないのに
あっ。これって、もしかして私試されているのかしら?
いいわよ、私を舐めないでよ。そんな質問くらいで怯むユ・ウンスさんじゃないわ
若い女だからって馬鹿にしているんだ
たちの悪い奴らも相手にしているんだから。美容外科医を舐めるんじゃないわよ
ウンスは両手に力を入れると、チェヨンをきつく睨み返す
「いいわ答えます。最近は測った事はないですが…85、61、 89 cm 位かと」
どう?これで満足?顎をふんと突き出して、口をギュッと一文字に引いて答えた
その態度が俺のよく知るイムジャと重なり、胸がさらに締め付けられる
余りの遣る瀬なさに、胸が鷲掴みにされているようだ。息をするのも苦しい
俺の表情が脆すぎるほど呆気なく、歪んでいってしまうのが分かった
それを隠すため、取り繕うと、薄笑いを浮かべ、曖昧に誤魔化した
「悪くない…」
何か言わねば怪訝に思われると、チェヨンは薄笑いをさらに形作り呟く
「ならば、身長と体重は?」
何なのこの人…
普通、聞くとしても、スリーサイズじゃなくて身長、体重が先でしょ?
あぁ、嫌だ。冗談じゃない。本当に薄気味悪い男だわ
さっさと終わらせてもう帰ろう
「身長168cm、体重は45kg…です」
「そうですか。では今日の下着の色は?」
ウンスは耳を疑った
身長体重と話がそれた時点で、多少まともな流れになると予想していた
「はっ?」
こいつ何を言っているの?
「どのような下着をつけておるのかと。それは何色ですか?」
冗談じゃない
やっぱりこれって、セクハラ面接まんまじゃない。まるで陳腐なビデオね
ふざけないでよ、本当にアッタマに来た
「黒よ何?それがどうしたわけ?」
鼻息交じりに答える語尾が荒くなる
もう、いい加減にして。変な質問ばかり。本当に気分が悪い
「もっとまともな質問をして頂けませんか?これは医者の面接でしょ?」
こんな面接をするような会社、こっちから願い下げだわ
ウンスが席を立とうとした瞬間、その男はまた次の問いかけをしてきた
「得意な歌を…」
「はっ?」
「得意な歌を歌ってくれぬか」
ウンスは顎が外れそうなほど、大きく口を開いて顔を歪めた
セクハラ面接から、今度は歌?これは歌手のオーディションじゃないのよ?
ここは制作会社だから?私はここの保健室のドクターの募集に応募してきたのに
いいわよ。こうなったら最後までやってやろうじゃないの
ウンスはすくりと立ち上がると、凛とチェヨンに強い視線を突き付け、
両手をひらりとはためかせながら、素っ頓狂な声で歌いはじめた
耳から懐かしい声色が響いて来た
チェヨンは思わずその名を呟く
「イムジャ…」
慶昌君ママと三人で過ごした、あの日のイムジャの姿と、目の前で同じ音色で歌うユ・ウンスが重なる
(イメージ写真・アメ限定です)
涙がじわりとチェヨンの眸を包み込む
この場で涙を落とすわけには行かぬ
それが零れ落ちてしまわぬように、瞼をこれでもかと大きく見開いて…
だが堪えようとしても、胸の奥から次から次へと押し寄せてくる、やりきれないような深い悲しみ
あっという間にチェヨンの大きな眼球を包み込み、もうこれ以上堪えられなくなる
「アハハハハハ。酷い歌声だ。駄目だ、堪えられぬ。もう止めてくれ」
チェヨンは突然、顔を覆い隠しながら、部屋中に響き渡るような大きな声で、体を震わせながら笑い出した
「可笑しくて涙が止まらぬ。アハハハ、こんな酷い声は久方に聞いた」
不自然なほど声を立てながら笑った
「ちょっと、あなたが、得意な歌を歌えっていったんでしょ」
むっかつく!何よ!!
あ~本当に腹が立つ
最高潮に気分が悪くなりウンスはしかめっ面で、チェヨンを睨み付ける
「すまなかった。ここまで酷いとは…。座ってください」
チェヨンは笑い声を止めると、再度ウンスを座るように促した
そして周りの人間に気づかれないよう、こっそりと壁の方を向いて…
耐えきれず零れ出てしまった涙を、スーツの袖で拭い去った
ふ~と大きくため息を落とす。苛立ちながらも、ウンスは渋りつつ席に着いた
歌えって言うから歌ったのに。馬鹿にするなんて、冗談じゃないわ
ぶつぶつと不満を口にしていると、目の前の男からまた質疑をされた
何なのよと思いながら、顔をそちらに向けると、急にその男の表情が気にかかる
その表情から、先ほどまでと様子が異なっている事に気付く
「これで最後だ。…男はおるのか?」
「えっ」
「好いた男はおるのかと」
ウンスは驚いた
最初見たときからずっと気になっていた。冷たく氷のような眸
黒く大きな眸が印象的で、目があったそばから飲みこまれちゃいそうな、きらきらしたガラス玉みたいな目
だけど、何かを求めるように、その奥深くにぼんやりと光が燻っている
そんな目をしている男
この部屋に入って来たときから、初対面の人から受けたこともないような、強い視線を突き付けられた
急にその男の黒い眸がゆらゆらと揺らいで、視点が定まらなくなる
この人…急に何なの?意気消沈したわけ?急に弱気なしょげたような顔をしちゃって
好きな男がいるかって?
意味分からないわ
そんなの全然、仕事と関係ないじゃないの
私の事を、馬鹿にしているの?試しているの?なんなの?
それとも…私に興味でも持っているの?
まさかね。いま、会ったばかりだものあるわけない
でも、どっちにしても頭にくる…こんな風に侮辱されるために、私はわざわざ面接を受けに来たわけじゃない
けれど、その男の憂いに満ち溢れた顔が妙に気になり、心がざわつく
無視したいと思うが、ウンスは何故か無視をする事が出来なかった
ウンスから告げられるであろうその答えに、チェヨンの心が恐れから震えだした
もし居ると言われたら俺はどうすれば良いのだ。その答えを待つ時間が、途方もなく長く感じ、息を飲み込む
「いないわよ…」
面接官の男に聞こえないほど、ウンスは小さい声で呻くように告げる
いっ、今なんと?
「聞こえぬ」
イムジャは今何といった?もっとはっきりと言ってくれ
チェヨンは再び答えを求めた
ウンスは座っていた椅子から、勢いよく音をたて立ち上がった
「好きな男なんて、いませんってば。仕事が忙しかったの。何?文句ある?」
目の前の気持ち悪い面接官に向かってウンスは怒鳴りつけた
それがチェ・ヨン本部長と、私の最悪な出会いだった
*何でヨンがセクハラ面接なの?は聞かないで…りおが、ヨンにセクハラ面接させたかったからです(笑)
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チェ・ヨン33歳とユ・ウンス29歳の、もう一つのシンイ 「社内LOVEストーリー」
ドラマ最終回のチェ・ヨンが、天門をくぐって現代にやってきた
辿り着いた先は、2008年のソウル
天門にのみこまれたイムジャを探し求め、現代で錯綜するチェ・ヨン
そしてついに二人は再会。しかし、その時のウンスの年齢は29歳
そこにいたのはチェ・ヨンを知らない、まだ若い頃のウンスだった
「社内LOVE序章1」
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*アメ限定公開したものと、あらすじはまったく同じですか、修正してあります
俺は、本部長への座を勝ち取った。正直、役職などに興味などない
だが、それによりやっとこの手に出来る、代えがたいものがある
それは、このソウルの全住人情報が記録された”情報データーベース”へのアクセス権
シンイホールディングス社の機密データ
そして俺はついに見つけたんだ
ユ・ウンス
俺がこの身を焦がし続け、求めて止まないその女性、イムジャの名前を
あの方と望まぬ別れを迎えてから、もう三年の年月が過ぎようとしている
これでやっとあの方に会える
そう考えると、胸が爆発してしまうではないかと思うほど、激しく胸が鼓動し全身の血が沸き立った
だが歴史というのは何と残酷だ
俺に無残な現実が突き付けられた
イムジャが俺と初めて出会った時の歳は、俺が二十九歳、イムジャが三十三歳の時であったはず
しかし、イムジャの今の年齢は、二十九歳
天門が二人を別ち、離れ離れになってしまった時は、俺が三十歳、イムジャが三十四歳という事になる
そして俺がもし、この時代で年を重ねているとすれば、三年という年月が経ており、俺は三十三歳
つまり今この世界において、俺とイムジャの年齢が逆転していた
それは、ただ年齢が逆転しているという問題だけではない
イムジャが二十九歳であると言う事は、俺と出会った時のイムジャではない
それ以前という事になる
もっと分かりやすく言いかえるのであれば、今は二〇〇八年。イムジャが俺と出会うのは二〇十二年
この世界に居るイムジャは、俺と出会う前のイムジャだった
認めたくはないがおそらく…
イムジャは俺の事を知る由もないだろう
突き付けられたその現実に俺は愕然とした
しばらくの間、部屋で茫然としていた
俺が探し出したとしても、イムジャは俺の存在すら知らない可能性が高い。計算からその事が明白だった
だが、だからと言って、このままイムジャを諦める事も出来るわけがない
ならばやはりイムジャにお会いしたい
抑えきれない恋慕の想い。はち切れんばかりに胸の中で暴れ回る
たとえ…イムジャが、俺の事を…分からぬとしても…お会いしたい
このまま諦める事など到底できぬ
俺が知るイムジャでなくとも、一目イムジャの姿をこの目に…
吐き気がするような、この喉の渇き。もう耐えかねている
そこで俺は考えたのだった
どうすればイムジャと不自然ではなく、再会を果たす事が出来るものだろうか
見も知らぬ男の俺がいきなり訪ねて行っても、怪しまれるだけであろう
俺はそれから数日の間、何か良い手はないかと、策を模索し続けた。一つの或る名案が思い付いた
シンイホールディングスの社員の日常健康管理を担う保健室
そこの医員の募集がある事を知り、採用試験の候補者へとイムジャの名をあげた
勿論、裏から手をまわしてイムジャの職を失わせるように手筈を整え、イムジャ自ら来るように仕掛けた
そして今日が、その採用試験の日だった。もちろん機密情報を扱う本部長である俺も立ち会う事になっていた
俺が面接官として、イムジャが職を探す者として…ついに俺たちは、ここ天界で再会を果たすことになる
「ユ・ウンスssi お入り下さい」
緊張が身体中を硬くさせる
震える唇を何とか引き締めつつ、俺はミーティングルームの戸口へと言葉を告げた
心臓が飛び出てしまうんではないかと思うほど、ばくばくと激しく鼓動し始める
ペンを握る手が微かに震えて、じっとりと汗ばんでいた
「失礼しま~す」
勢いよく開かれた戸の隙間から、弾むような明るい声が聞こえてくる
全身に鳥肌がたった
この声はイムジャあの方だ
それは間違いなく、俺がずっと探し求め続けたイムジャの声であった
ごくりと息を飲みこむ
戸がさらに開かれ、赤い髪をした女性が、一歩、一歩とその中へ足を進めてきた
ますます、俺の肌は粟立つ。意識が集中し、言葉を失った
風貌は俺が知るイムジャより、だいぶ若く感じるものの、そこに現れた女性は間違いなく俺の知る人
確かに目の前にいる人は、俺がお慕いしておる、イムジャその女性だった
俺は気持ちが抑えきれず、無意識にガタンと音を立てて席を立ち、一歩、一歩と進んで行きそうになる
「本部長どうされたのですか?」
横にいた部下の男が怪訝そうに、声をかけながら俺の顔を窺ってきた
その声にはっと我に返った俺は
「いや。何でもない」
そう言って冷静を装いながら後ずさると、イスを引き再び席へとついた
明るく微笑みながら、その中へとイムジャが入って来た
激しく鼓動をし続けていた心臓が、痛いほど…まるで暴れるかの如く胸を打ち付けた
分かっていたはずだったのに…
俺は愕然とした
その笑顔は、俺へと本当に向けられた笑顔ではなかった
そのイムジャの眸の色を見た瞬間…すべてを悟ってしまう
目を背けたいような現実。落胆から俺は目を強く瞑る
受け止めきれない非情な現実だ
イムジャから差し向けられたその笑顔は、面接官である俺へ、作り上げられた形だけの笑顔だった
俺の予測は敵中していた。イムジャは俺の事が分からなかったのだ
淡い期待があっけなく打ち砕かれた
俺の目にじわりと涙がこみ上げて、咄嗟に両の唇をギュッと強く噛みしめた
そうでもせねば、この場で泣き崩れてしまうやもしれぬ。そんな失意のどん底に落ちて行った気分だ
この方はイムジャその方であって、俺が知るイムジャではなかった
やり場のない思いが胸を覆い尽くし、俺を飲み込むように、さらに奥深い闇の中へと、引きずり込むようだった
「初めまして。ユ・ウンスです」
ハッ。俺は短く息を吐く
初めましてだと?
そんな悲痛な俺の気持ちなど知りもせず、イムジャは高く頬をあげて、またにこりと笑顔を突き付けた
その声に気付いて、俺は我に返る
ユ・ウンスその響きが頭の中をぐるぐると駆け巡る
ゆっくりと面をあげると、あれ程見たかったはずのイムジャの笑顔がそこにあった…
俺の目の前でイムジャは…眩暈がするほど、眩しくて…
泣けちまうくらい、輝いて見えた
だがその目は俺を映してはいない。こんな悲しい笑顔がこの世に存在するのだろうか
しかし、俺の事が分からなくても、この方は間違いない、イムジャなのだ
イムジャである事には変わりない
何度も心の中で自分自身をそう諭して、落ち着かせるように渦巻く真気を整え、懸命に自分を立て直す
「どうぞお座り下さい」
顔を引き締めなおすと、視線で目配せをし、イムジャを席へとつかせた
「何からお話すればいいかしら?」
イムジャは無邪気に俺に話しかけてきた
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