チェ・ヨン33歳とユ・ウンス29歳の、もう一つのシンイ 「社内LOVEストーリー」
ドラマ最終回のチェ・ヨンが、天門をくぐって現代にやってきた
辿り着いた先は、2008年のソウル
天門にのみこまれたイムジャを探し求め、現代で錯綜するチェ・ヨン
そしてついに二人は再会。しかし、その時のウンスの年齢は29歳
そこにいたのはチェ・ヨンを知らない、まだ若い頃のウンスだった
「社内LOVE序章1」
*********
「本当にアッタマ来る…」
ぶつぶつと文句を言いながら、ウンスはシンイホールディングスの総務室を探して廊下を歩いていた
あっ、あった。総務室ここね
「こんにちは~。ちょっと、すみません~誰かいらっしゃいますか~」
総務室の看板を見つけ、戸口の外から大きな声で中を覗き込んでみた
「はい、どうしましたか」
ウンスの声に気付いて、部屋の中から一人の若い女性が出てきた
「あっ。すみません、私ユ・ウンスって言います。昨日ここからドクターの採用試験に合格したって通知が…」
「ちょっとお待ちください」
そこまで言いかけると、その女性はウンスに心当たりがあったようで、用意してあった荷物を棚に取りに行った
待っている間に部屋の中を見渡す
「ふ~ん。やっぱり、ここって大手なのね。総務室だけで、いったいどれだけデスクがあるの?10、20、30…」
全部を数え切れないうちに、その女性がウンスの元へと戻って来た
あっ、こんな事をしている場合じゃない
あんな面接に、こんな理不尽な採用通知、抗議をしないと
息巻き出向いてきた目的を思い出す
「あの~ちょっとお話があるんですけど、昨日の採用通知の件ですが…」
目の前の女性は小首を傾げている
でも、そんなの関係ないわと話し続ける
「そりゃ、確かにちゃんと書類を見なかった私が悪いんですよ?でも、ちょっと…その強引すぎません?」
そこまで言っても「何の話でしょう?」その女性の顔にはそう書いてあるようだ
あぁ、この人じゃきっと駄目だ
あいつ?あの面接官の男を見つけないといけないのかしら?
「御免なさい。いいわ」
あなたじゃ埒が明かないわね
そう心の中で呟くと、だったら昨日の男を探そうかと考えついた
「ねぇ、じゃぁ、昨日の男。っ、じゃなかった。面接官の男性を呼んで下さる?」
「面接官ですか?あ~本部長ですね?」
あいつ本部長なの?
偉そうな態度していると思ったら、本当に偉いやつだったんだ
「本部長に、何か御用が?」
「御用って言うか、抗議って言うか、どちらにしても、その人に会いたいんだけど」
ウンスの勢いに呆気にとられる
その女性は「はぁ。そうですか」そういう顔をしていた
このまま、あんな面接をする会社でなんて働くつもりはない
そう考えていたら、なんだかすっごく文句を言いたくなってきた
「ねぇ。そもそも、どうなっているの?あれってセクハラ面接ですよね?」
あなたも総務だったら、会社の横暴に責任があるでしょ?
ウンスは何も知らなそうな素振りの、目の前の女性にも八つ当たりをしたくなる
それにこの人も被害者かもしれない
「セク…ハラ?ですか」
「そうよ。その本部長って人、どうかしているわ。普通じゃない」
そうウンスが息巻いた瞬間、女性が高らかな声で笑い出す
「本部長が?あり得ないですよ。寡黙なあの方がそんな事ある訳ないです」
夢でも見たんじゃないですか?
そうとでも言いたげに、呆れた視線をウンスに向けてきた
女性の反応に、ウンスは拍子抜けする
同意を得られると思ったのに
「本当ですってば。あの面接官、スリーサイズに身長、体重に…」
「はい。これ、ウンスssi の制服です。きっと、本部長は、あなたの制服のサイズを知りたかったんですよ」
面接内容を話し出した途端、総務の女性はそう言ってにっこりと笑うと、ぽんと荷物を付き渡してきた
その女性の行動に、ウンスは面食らって一瞬言葉を失った
「ウンスssi、本部長とお知り合いなのかと思ってました。ウンスssiを推薦したのだって本部長だし、面接も形だけのものだったでしょ?」
アイツと知り合い?私を推薦!?!?形だけの面接だった?
まったく耳覚えがない言葉が、次から次へと飛び込んできた
「はっ?何よそれ!」
「あら、やっぱりそれもご存知ないんですか?そうなんですか驚きました」
驚いたのはこっちだって言うの!
「何であいつが、私の事を推薦なんて」
平然とあいつと呼んでいる事に気付かないほど、ウンスは驚いていた
「制服をオーダーされる時だって、”あの方は文句が多い方だから”、きっちりとサイズを合わせてくれって、本部長ってば何度も念を押されてたので」
珍しく本部長が感情的だった
だから、本部長の想い人なんじゃないかって、総務の中で噂になってた
「は~??文句が多い方って、何なの?」
そりゃ、確かにちょっと細かい事も気になるタチだけど、何で見ず知らずのあの男に、そんな事を言われないといけないの?
「制服はオーダーメイドじゃないんですよってお伝えしたんです」
そういって総務の女性はくすりと笑う
冗談じゃない
本当にあの男、意味が分からない
じゃぁ、なに?
この制服はあいつが用意させたわけ?
「ウンスssi とにかくまずは着替えて来て下さい。女性社員用の更衣室はあちらです。今お連れしますね」
総務の女性はウンスをそう促した
さっきから狐につままれたような気分だ
「ねぇ。だから、私その本部長って人に会いたいんだけど」
「まだ、いらしてないので、とにかく先に着替えて来て下さい」
私用の制服も、もう準備されているし、女性のペースにも乗せられ、何だかおかしな話になってきている
私はこの会社に入るつもり何てないのに
ウンスはあれよあれよと言う間に、更衣室へと連れていかれてしまったのだった
大きなため息が更衣室中に響いた
本当に意味が分からない。
あいつ何なの?
あんな男まったく知らないのに、私を推薦?形だけの面接??
おまけにあのセクハラ面接が、私の制服のサイズを確認するためだったって言うの?
あぁ、重要な事を言い忘れた
そうよ、体型だけじゃなかったんだ
下着の色を聞かれた事を、総務のあの女の人に言えば良かったのに、言い忘れた
私ったら馬鹿だ。確かに体型だけで言ったら、制服のため。そういう言い逃れを出来ないわけじゃない…
だけど、下着の色は何色かなんて、言い訳があるわけがない
それともアイツ、私の下着を用意するためだっていうの?笑わせないでよ
セクハラよ、セクハラ
絶対セクハラ面接!!
それに、何?あの気持ち悪い男のどこが寡黙だっていうのよ
そりゃおしゃべりな感じはしなかったけど、単なる変態じゃないの
あ~本当にアッタマ来る
ウンスは文句を言いながら、手にした制服とにらみ合いを続けた
だが、職を失って困っているのも事実
それにこの会社は、普通なら中に入れすらしない、かなり名前の知れた超大手だ
あの後、採用通知を良く見ていたら、契約条件は今までの条件の1.5倍を考慮するって書かれていた
本当にどうしよう…
でも、悩んでいても仕方ない
とにかくあの男に会うのが一番だわ
「制服…着るか」
給料や会社の知名度に心が揺れる情けない自分がいなくもない
ウンスはじたばたするのを諦めて、とりあえず渡された制服を身に着ける覚悟をした
「あら、可愛い」
ピンクのチェックのベストが目につく
グレーでパイピングされていて、可愛らしいデザイン
ブラウスの上にそれを着るようだ
「OL服って言うのもちょっと憧れだったのよね。でも、白衣じゃないのかしら?」
私はドクターの採用だったはずよね?
そういえば、仕事内容については何にも書かれていなかった
その可愛らしい制服に、ブルーだった気分が少し明るさを取り戻す
「こういうのも悪くないわね」
薄らと微笑み制服を身に着け始めた
あら、やっぱりピッタリだわこの制服
あの男が私のスリーサイズに合う制服を選ばせたっていうの?
なんかやっぱり気持ち悪い
あいつの事は知らないのは確かだけど、顔はどこかで見たことがあるような?
あんなイケメン、一度見たら絶対に忘れないと思うんだけどな…
頭の中で思い返してみるも、ウンスは思い出すことが出来なかった
そうこうしながら、制服の上を着替え終わって、次はスカートを履こうと黒いボトムスを手に取った
「えっ?」
ウンスは思わず小さくそう呟いた
「やだ、何これ。何でパンツなの?」
折りたたまれていたボトムスを開いてみたら、予想に反し黒いパンツだった
何これ?スカートじゃないの?
それもラインがおばさんみたいじゃない
手にしたボトムスは、パンツはパンツでも、すらっとしたデザインではなかった
むしろ体の体系を隠す事を意識したような、幅広のデザインだった
「やだ~こんなの変じゃない。さっきの総務の人スカートだったわよね?」
ウンスは訝しげに、今度はそのボトムスと睨めっこをする
「こんなダサいデザインなんて嫌よ」
不満を告げながら顔を曇らせる
「あっ、そうだ、いい事思いついた。今日はいてきたスカートと合わせちゃお」
名案を思いついたウンス
勝手にスカート変えたら怒られるかな?
どうせこんな会社、どんな風に思われても関係ないものね
ウンスは借りた制服と、自分のスカートを合わせて、着替えをしたのだった
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チェ・ヨン33歳とユ・ウンス29歳の、もう一つのシンイ 「社内LOVEストーリー」
ドラマ最終回のチェ・ヨンが、天門をくぐって現代にやってきた
辿り着いた先は、2008年のソウル
天門にのみこまれたイムジャを探し求め、現代で錯綜するチェ・ヨン
そしてついに二人は再会。しかし、その時のウンスの年齢は29歳
そこにいたのはチェ・ヨンを知らない、まだ若い頃のウンスだった
「社内LOVE序章1」
*********
「えっ嘘?本当の話?それってまさに、セクハラ面接じゃん」
「そうなのよ、あり得ないでしょ」
ウンスはまくしたてるように、親友のユラに携帯越しに唾を飛ばす
「内定は欲しくないのか?って、いかにも良くありそうな台詞だね」
「そうでしょ?内定が欲しければ、そいつの質問に答えろって」
「で、身長に、体重、おまけに下着の色と、スリーサイズ?」
「本当にあり得ない。あ~思い出しただけでもムカつくわ」
その時の事を思い返すと、腸が煮えくり返りそうな思いだった
「そのピョンテ教官ってやっぱり、あれ?エロおやじって感じ?」
「ちょっと、ユラ違うわよ。”教官”じゃないってば、”面接官”」
「あ~そうそう、その面接官よ」
「それが…違うのよ」
「え?違う?」
「見たこともないような、イケメンなの」
「うっそ!イケメン?」
「うん。面接室に入った時、びっくりして固まっちゃったくらい」
私は部屋に入ったその時、前の会議テーブルに座っていたあの男に目が奪われた
あまりにかっこよかったから?
そう、はじめは、あら、素敵な人だ。そう思って視線を向けたように思う
だけどその後も、何故だかずっと目が逸らせなかった
何でだろう?
あぁ、そうだ、きっとあの目よね…
見ず知らずの初対面の人に、あんな目で見られる事があるだろうか
それは、あまりに強い視線だった
睨まれているのか、なんなのか…
蛇に睨まれた蛙?顔を動かせなかった
あの時の私は、まさにそんな感じだった
「ウンス。で、あんた結局どうするの?」
「どうするも何も、冗談じゃない。歌まで歌わされたのよ?」
「歌?」
「そう、そいつが、私に得意な歌を、歌えって言うから…」
「アハハ、ウンス何を歌ったの?あなた、歌は下手じゃない」
「ちょっと、ユラ何よ。失礼な。私は下手じゃなくて、個性的なの」
歌を歌った時もそうだった
あの男は突然、部屋中に響き渡るような大声で、馬鹿笑いをし出した
でも、なんかすごい違和感があった
何でだろうってずっと気になっていた
そうだ。思い返してみれば、あいつ目が笑ってなかった
むしろ泣いているような、悲しそうな…
そんな目をしていた
だからすっきりしなかったのよ
「あっ」
「えっ、どうしたの?」
「そうよ。あいつ」
「えっ、何なに?」
「今分かった。私、セクハラ質問の時から、ずっと違和感があったの」
「違和感?」
「うん。普通さ、セクハラ的な質問をするような嗜好の人って、相手が嫌がったりするのを楽しんでいるわけでしょ?」
「まぁ、そうだよね」
「でも、あいつ何かそういう感じじゃなかったのよね」
だてに医者をやっていない
心理学的な心得も多少だけど、まったくないわけじゃない
きっとこれは勘違いじゃないような、そんな気がしてならない
「そういう感じじゃない?」
「うん。何ていうのかな、真剣っていうか、敵意?う~ん、なんか違うな…うまく言えないけど、セクハラをしたいって言う感じじゃないのよね」
自分でも、何でそう思ったのか分からないくらいだ。この違和感をうまくユラに説明をする事が出来ない
普通の面接じゃなかったのは確かだし、思い返しただけで腹立たしくて、怒りもこみ上げてくる
だけどあの男の顔が、どうも引っかかる
何故か心に沁みついて離れなかった
そして、最後にされたあの質問。私に、好きな男はいるのかって、泣きそうな顔してあの男は聞いてきた
憂いを帯びたような顔しちゃって、宙を激しく舞った、あいつの目が気にかかる
まぁ、いいわ
考えても仕方ない
でも、どうせ二度と会う事も無い男だし
「とにかく、本当に願い下げ。仕事なくなっちゃったし、しばらくは失業手当でも貰って、のんびり過ごそうかなぁ~」
「えっ、じゃぁさ、済州島でも旅行に行かない?蛸の踊り食い食べよう」
「あ~ごめん。最悪な事に、ボーナスもらう前に首になっちゃったのよね」
その時、電話の奥から小さな音が聞こえる
「ユラ、ごめん、キャッチ入っちゃった。旅行の件はまた考えて連絡するね」
「分かった、週末遊びいくよ」
ウンスは友人の電話を切ると、掛かってきたキャッチを受けた
「ユ・ウンスssiですか?私、サンマル銀行のハクです」
「あっ、ハクさん。お久しぶり」
その電話は取引銀行の担当者からだった
「今送金しましたので確認してください」
「えっ。何の事?送金?」
「えぇ。シンイホールディングスからの、契約金3000万ウォンが、本日付けで送金されているはずです」
「はい?何それ!!」
「えっ、ウンスssi ご存知ないのです?昨日、採用通知渡してあると、先方の担当者より、そう伺っておりますが?」
契約書?何それ!!
あっ、もしかして帰りに、駆け寄ってきた若い男に手渡された封筒?
うそ、もう二度とここに来ることなんてないって思ってたから、開封もしなかった
「ちょっとまたかけます」
ウンスはその電話を切ると、昨日帰りに手渡された封筒を慌てて探し始めた
「あれ、どこだっけ。あっ、鞄の中に入れっぱなしだ」
何かよからぬ不安がよぎり、急いで鞄を手に取ると、中から茶封筒を探し出す
こんな適当な封筒だもの
まさか、そんな重要な書類が入っているとは思いもしなかった
そして、封筒から取り出した1枚の書類に、ウンスは我が目を疑う
「嘘…」
思わずそう呟く
その中に入っていたのは…
まぎれもない”採用通知”だった
「あり得ない…」
書類を持つ手が微かに震える
普通、採用通知って、選考した上で後日正式に渡されるものでしょ?
冗談じゃないわ
そう思いながら目を通していくと、ウンスの視線がある文章のところで固まる
その下部には次の文字が書かれていた
・この採用結果を辞退したい場合には、本日夜19時までに送信日時の残る、E-mail等にて連絡すること
・また、契約金送金後の辞退は、違約金として3倍の額を支払いをして頂きます
「何よこれ、やだ、嘘でしょ…嘘だって、誰か言って!!!!!」
マンションの部屋の中に、ウンスの大きな悲鳴が響き渡ったのだった
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