ポイント♪ ヨンはドラマのヨンです
チェ・ヨン33歳とユ・ウンス29歳の、もう一つのシンイ 「社内LOVEストーリー」
ドラマ最終回のチェ・ヨンが、天門をくぐって現代にやってきた
辿り着いた先は、2008年のソウル
天門にのみこまれたイムジャを探し求め、現代で錯綜するチェ・ヨン
そしてついに二人は再会。しかし、その時のウンスの年齢は29歳
そこにいたのはチェ・ヨンを知らない、まだ若い頃のウンスだった
「社内LOVE序章1」
★社内LOVEシリーズはこちらから
*********
ヨンは目を大きく見張り、目の前の人を熱く見つめ続けていた
顔から視線を下げて行き、ウンスの長くすらりとした指先に、ふと視線を落とした
確かイムジャはそれをあの時、ちょおしんきと呼んでいただろうか…
ゆっくりとウンスの姿を眺めながら、下げた視線がある所でぴたりと止まる
視線を止めた先が気にかかった
管の先に丸い器具がついたそれを握る、イムジャの指先が微かに震えを帯びていた
イムジャは震えておる
震えておる…という事は、この方は今、かなり緊張をしているのだろう
それは俺と二人、この部屋におる事で?イムジャは平常心ではないのか…?
そう思うと何だか悪い気はしなかった
むしろ胸に歯がゆいほどの擽ったさを感じて、口の端に自然と笑みが浮かぶ
それはつまり俺はナムジャとして、この方に意識されていると言う事なのでは…
悪い気はしないどころか、胸がトクントクンと打ち立て気分が上がる
そんな突然自分の中に芽生えた胸のこそばゆさが、無性に気恥ずかしくて…
胸の中を甘く漂う感情に逆らわず、ゆらゆらと身を委ねていると
高麗でイムジャと過ごした、懐かしい思い出が浮かんできた
困惑し固まるウンスを眺めつつ、共に過ごした胸が高鳴ったあの日々を思い描いた
だがそれはもう、過去の事だ
懐かしい夢のような日々とは、今はもう手にする事の出来ぬ過ぎ去りし日々
今度は頬を下げるように寂しげに…薄らと微笑みを浮かべたのだった
ちょっと…そんなにじっと見ないでよ
あぁ、どうしよう。聴診器を握る指先が、震えているのが自分でも分かる
何よこの余裕のなさは
こんな事で動揺している自分が子供っぽく思え、ウンスは無性に気恥ずかしくなる
ヨン部長は大人の男の人だ
仕事も出来るし頭がいい。すごく怖いし、みんなに怖がられている
だけど怖いだけじゃない
冷たい態度の裏に、部長の本当の優しさが、隠れている気がするの…
そう思っているのは私だけじゃない。きっとそれは誰しもが思っている事
だからヨン部長は、会社のみんなから一目おかれ、すごく慕われていた
そして…認めたくないし、悔しいけど、女の人にだってすごくモテる…
女性にも冷たい態度を崩さないのに、何故かモテモテなのよ
私は何だか気に入らなかった
そう私にだって、意地悪な事ばっかり言うけど、何故か私はそれが嫌じゃない
部長は何かと言えば、あれは駄目、これは駄目って、いちゃもんばかり
でもね、でも…
そんな風に言うのは、もしかして、私の事が好きだからなの?
私は単純だから、小言を言われる度、何度もそんな事を考えちゃったの…
これは私の自惚れなのかな…
身を震わせながらそれを悟られないよう、凛とした態度を懸命に作ろうとしている
そんな、意地を張ったウンスが、心の底から可愛らしく思えて…
もっと困らせてやりたくなった
俺が近づけばどうするか?
ヨンは試してみたくなって、座るイスを床の上を滑らせ、ウンスに身を近づけた
ウンスは、ぎょっとした顔をし、瞬きを何度も繰り返した
くっと笑いが漏れそうになる
やはり、イムジャは動揺をしておるのだ
その答えにさらに気を良くし、ニヤけてしまいそうな顔を、崩さないよう必死になる
ちょっと、なっ、何よ…
そんなに急に予告もなしに、私に近づいてこないでよ
ウンスは大きな眸をさらに大きく見開き、ふんと鼻先を突き出すような態度を見せた
その仕草は虚勢を張っている時にする、ウンスの癖だった
イムジャの顔には「私は動揺しています」と…そう書かれているのが、俺には手に取るように分かってしまう
何故なら…それは、俺が探していた、イムジャ…あの方と同じ仕草なのだから
イムジャは何もかも、俺の思惑通りの反応をする。気分が良かった
そして、それに乗じて俺は、この方をもっとからかってやりたくなる
「まだですか?」
首を少し傾げて、態とがましく、素知らぬ素振りで診察を促した
どうしよう…そうだ!!
ウンスはある名案を思いついた
考えてみたら、簡単な問診をするだけで、別にいいじゃないの
突然勝手に決められたような、健康診断だもの。こんなの職務の内じゃない
聴診器を持っているからって、何もそれをしなくちゃいけない訳じゃないし…
やだこれって、ナイスアイディアだわ♪
そうだ、そうしよう!!
思いついたアイディア、もがき溺れていた矢先、助け舟を見つけた気分だ
だって恥ずかしすぎるわよ
こんな二人きりの個室で、部長の胸元なんて見たら絶対私、赤面しちゃう…
冷静にこなせる自信がない
そしたら、間違いなく部長に変な風に思われてしまうわよ…
ウンスはこの密室で、ヨンの胸元を見る事を、どうしても避けたかった
部長の裸を前にして、平気な顔を出来る自信が持てなかったのだ
だが、ヨンの言葉が無残にそれを阻止した
「イムジャ、その手に持つ器具は、診察の最初にすべきものだろう?」
イムジャが俺に、教えてくれた事があった
高麗にある物で似せて作ったそれの事を…
ヨンの中に懐かしい思い出が、再び次から次へと思い起こされきた
ついには一度溢れだした恋慕の感情を…止める事が出来なくなっていった
俺はイムジャがそれで彼奴らの診察をしようとするのを、全力で阻止したものだった
あの時のウダルチの彼奴らの腑抜けた情けない顔が、今では懐かしくさえ思えた
皆は元気にしておるだろうか
王をしっかりとお守りしておるだろうか
彼奴らの事だ。失策をとり…身を危険にさらしては居らぬだろうか…
そして、イムジャ…あの時もあなたは…
あの時から俺は、「この方を俺だけの方に…」そんな事ばかり考えていたのだった
何処までもイムジャを求めて続けている、自分の気持ちが可笑しくて笑えてくる
昔も今も、俺の気持ちは変わらぬのに…
今目の前にいるこの方は、あの時の俺と共に過ごしたイムジャはとは違う
俺を好いておると言って下さった、あの時のイムジャではないのだ
駄目だ、ならぬ。まただ…
俺は結局、何かを考えだすと、いつもこの結論に至ってしまう
何故だ。何故なんだ。なに故、俺は天界の此処にたった一人でいるのだろうか
そして、俺が目の前のこの方に、再びこの時代において出会ったのは何故なのか
イムジャに惹かれゆく止めようのない此の想いは、何一つ変わらない
変わる事など出来ぬ
だから今目にしているのが、俺の事を知らぬ別のイムジャだとしても…
俺は…止められぬ…
止める事など出来ぬのだ
目の前のイムジャが、あの時のイムジャではないと分かっていても…
だが、あの方は今どうしておる?
それを知らずして、俺はこの想いに素直になる事は、許されぬのではないか?
あぁ…結局は、堂々巡りだ
何もかもが憶測でしかなく、きっと答えなんて有りもしない
胸がギュッと締め付けられ、口の中が酸っぱく感じ、むかむかと吐き気がした
喉まで出かかった悪気
それは途轍もなく気分が悪くて、堪えきれず嗚咽しそうになった
気を整えようと、ウンスに気づかれないよう、細く呼吸をし腹に意識をやる
ウンスに惹かれれば惹かれるほど、この不快な症状が悪化していた
俺は先ほどこの部屋にイムジャを閉じ込め、俺の診察をせよと言った
実は俺はある事を思っていた
イムジャに俺を見て欲しかった、目をそらす事なく見て欲しかった
そうする事で、もしかして、この苦しみから逃れられるのではないか
俺はこの天界で、そんな藁をもつかむ思いで、一秒一秒を過ごしている
心の中の張り裂けそうな想いが、俺を見てくれと叫んでいた
ヨンは吐き気を堪えるため、口の中に充満した唾液を喉の奥に押し込んだ
そして、ネクタイの結びをくいとずらすと、何度か左右に振ってそれを緩め出した
ちょちょちょ…ちょっと…
部長…なっな、なにをし出すのよ
あり得ないんですけど!!
目の前でネクタイを緩め始めた部長の姿に、心臓がこれでもかと激しく鼓動する
「ね…その…何をしているん…です?」
ウンスはどもりながら、声を震わせそう問いかけるのがやっとだった
「ちょおしんきを、当てるのだろう?」
何を馬鹿な事を問いかけてくるのだ
まるで、そう言わんばかりの真顔で、部長は問い返した
「えっ」
素っ頓狂な声があがる
「だから、準備をしておるまでです」
「そっ…そっ…そりゃ、有り難いわ」
混乱した頭が、思ってもいない、おかしな台詞を読み上げてしまった
感情なんてこもっちゃいやしない、振ってわいたような台詞を棒読みで読み上げたようなもの
ぎゃぁ、私ったら、有り難いわって、何を変な事を言っているのよ…
そ、そこ…開かれちゃうの?
そ…そのシャツが?
ここで、ババーーンと??
で、部長の胸元が、どーんと…
げっ、限界だわ…
駄目だもう私、耐えられない
部長の厚い胸板に、小さな左右の頂きが、脳裏に浮かんできて
ウンスは真っ赤になり、慌てて頭の中の妄想を、首をぷるると振ってかき消した
私は一体全体、どんな顔をして、それを見ればいいのよ…そんなの無理…
もう完全に自分がドクターで、目の前の人は患者である事など忘れてしまった
覚えていたとしても、おそらくそれは何の助けにもならないだろう
ヨンを直視する事ができずに、ふらふらと宙を漂わせたウンスの視線
ウンスは涙目になった
上気したウンスの頬へ降り注ぐ豪雨のように、困惑の嵐が次から次へと打ちかかってくるようだった
シュルルと、ネクタイがほどかれた音に驚いて、はっと上向いた
ぎゃぁ!!
なに?なんで、ネクタイをほどいたわけ?
これではまるで初めての人を迎える、恋人同士のような感覚と同じじゃないの
ユ・ウンスしっかりしてよ
あなたはドクターでしょ?ドクターの自信と誇りはどこにやったの?
あぁ…すっかりぶっ飛んで行った
私のドクターとしての自信
お願いだから今すぐカムバーック!
混乱しきった頭は、もうろくな考えを生み出す事が出来やしなかった
そうこうしていると…
ワイシャツの襟元近くのボタンが、プチンとまずは一つ外される
もう駄目、駄目だ。本気で脱ぐ気だわ
もう、どうにもならない…
空気がピリリと張りつめていて、1秒1秒が何と長く感じる事か…
ウンスの気持ちなどお構いなしに、ヨンはボタンを外していった
部屋のしーんとした静けさが、かえって耳につくように感じた
数個しかないボタンは、あっという間に解かれていく
そして部長のワイシャツの最後のボタンが、たった今外されてしまった
「イムジャ…顔をあげて?」
やだ、見れない…
ウンスは逃げ隠れするように、首をぎゅっと曲げて、頭を下にしっかり落としていた
「イムジャ」
再度ヨン部長が、顔をあげろと促した
無理、無理よ…
それでも、ウンスは顔をあげなかった
下向けた顔が火照って熱い
ヨンも過度に緊張をしたウンスの態度に、少し困惑を覚えていた
くすくすと笑い声が聞こえたような気がしたが、ヨンは笑ってなどいなかった
いつまでたっても顔をあげないウンス
ヨンは椅子同士が触れ合うほどまで座った椅子を滑らせると、手を差し伸べ挟み込むようウンスの両頬に手を添えた
頬に部長の手のぬくもりを感じた
ピクンと体が動く
まさか…まさかそんな事を、部長がするなんて思ってもいなかった
思わずそこから逃げ出そうと、顔を部長の手の間から後ろへと引き抜こうとし、身を捩じらせようとした
しっかりと押さえられた、部長の両手からは抜け出す事が出来なかった
下を向こうとすると、力を籠められて顔を持ち上げられてしまう
そのままゆっくりと顔を上げさせられた
ヨンの視線とウンスの視線が交差する
受け止めきれないほどの、余りに強い視線にたじろぎ、ウンスは目を強く瞑った
「イムジャ、目を開いてくれ…」
「……」
反してウンスはもっと強く目を瞑った
「イムジャ…頼む…頼むから…目を」
懇願を含んだ部長の声色に驚いて、覚悟を決めてそっと瞳を開いていった
「えっ…」
ウンスは小さく声をあげた
「うそ…」
そう呟いて、口許に手をハッと当て、大きく開いた口を覆い隠した
あまりに痛々しかった…
ヨンの体には無数の傷跡があった
ごく小さな傷痕も入れれば、それは数え切れないほどだった…
現実に見たこともないような余りの衝撃に、それ以上の言葉が出なかった…
そして、腹の所にある大きな傷に、視線がとらわれた
その傷はヨンの秘密に包まれた過去を物語っているようだった
きっとそれは…私には想像もつかないような、凄惨な過去だ…
ウンスは口に当てた手を、指先で空気を撫でるように、そこに近づけていった
何故だか、自然とそうしていたのだった
なんでこんなに傷だらけなの?
そう疑問に思うよりも先に、その傷がウンスの指先を誘い寄せた
ヨンは相変わらず強い視線を崩さずに、唇を震わせながら傷口に触れようとするウンスを避けようとはしなかった
ヨンの腹の傷の上まで辿り着いた、ウンスの指が戸惑いがちに、傷に触れようとした
そこで動きをぴたりと止め、窺う様にヨン部長へ視線を向けると
無言のまま、まったく抵抗しようともしない部長の表情に、それに触れてもよいのだとウンスは悟った
傷口にウンスの指先が触れた
腹の肌から、細くしなやかな、ウンスの肌の感触が伝わってきた
傷の端に這わされた手が、傷口を撫であげるように、つーと上に添わされた
俺は…この傷をイムジャに見て欲しかった
もう俺には此れしか持ち合わせておらぬ…
この傷があの時のイムジャと今の俺をつなぐ、たった一つだけの…
たった一つだけの証なのだ
目の前にいるウンスがこの傷を見たら、奇跡が起こるんではないかと俺は期待した
馬鹿げておるだろう?
この俺がだ…
この俺が、軌跡などと言う不確かな物にすら、縋ってしまうほど俺は何も見えない
彼奴らに散々、無用の期待はするなと、偉そうに言っていた俺がだ
あてもなく彷徨い続けている俺の魂を、助け出して欲しかった
闇雲に闇の中を、何を探すべきかも分からぬまま、もがいているこの現実から
そして、その闇の中に見つけた…必死などほどに目を背けている光へと、一歩進んでいいと言って欲しかった
目の前にいる天界のウンス
やっと見つけた一点の光だった
だが、その光から目をそむけながら、俺は別の光を探し求めるべきなのだろうか
俺は目の前の方と、どうやってこれから向き合っていけばいいのだろうか…
ウンスの指先が何度かヨンの腹の傷の上を往復したあと固く握りしめられた
静けさが広がる部屋の中に、ガタンと大きな音が響いたかと思うと…
ウンスが突然席から立ちあがった
驚いて見上げると、眸の端に薄らと涙を浮かべたイムジャの目に気づく
その顔を見てしまった途端、俺は胸が熱くなり、何も考える事など出来なくなった
そしてウンスの涙で濡れた眸が、何かを語りかけるよう、俺の上に降り注いできた
俺は目をそらす事なく、しっかりとイムジャのそれを受け止めた
ウンスと視線を絡ませているだけで、あれ程重く長く感じた一秒一秒の時が…
こんなにも胸が熱く感じるのかと…
このままずっとこうしていたいような、そんな思いさえ芽生えてくる
私は、部長の視線から、目を反らすことができなかった
背けたくなかったの
受け止めたいって…そうしてあげたいって思ったから…私はそらさずに部長の視線を受け止め続けた
暫く二人はそうして見つめ合っていた
すると突然、俺の鼻の先をふわりとウンスの香りが漂った…
と思った時には、俺の体が柔らかな、ウンスの胸元に引き寄せられていた
ヨンの瞼が大きく限界まで見開かれ、黒い瞳がゆらゆらと漂った
ウンスの小さな体と伸ばした両腕で、ヨンの体が包み込まれた
とんっ、とんっ、とんっ…
そして泣いた子をあやすように、ウンスの手の平がリズムを奏でながら、優しくヨンの背に触れていく
ウンスは何も言えず、ヨンを腕で抱き寄せたたまま、そうする事しか出来なかった
暖かな陽の光で包み込むように、寒さで震えていたヨンを暖めた
ヨンは体の底から込み上げる想いを胸に、目をぎゅっと瞑ったのだった
*健康診断完結です。私の目標はちゃんと完結する事(笑)
ブログランキングに参加中。ポチのご協力を何卒宜しくお願いいたします。↓↓↓

にほんブログ村