お話
王は無性に可笑しくなって、突然声をあげると、高らかに笑い出した
チェ・ヨンはそれを見て思う
お気づきになったようだ
王は確信した
この男は、余を欺いているのだと、包み隠しもせずに、そう伝えておるのだ
普通ならば激昂されても止む無いところだが、この二人の場合、関係はもっと深いところにあった
王はおかしくて仕方なかった
むしろ懐かしい友との駆け引きに、己の血が沸き立つようにさえ思える
「それでどうした」
望むところだ続きを窺おう、と王が腹を据えると、チェ・ヨンは再び語りはじめた
天の門から参ったとする、その女人の名は…ユ・ウンスと申します
王は遠い記憶を辿りそして見つけ当てる
ユ・ウンス…
忘れはしまい、医仙あの女人の名は、ユ・ウンス…そう、ユ・ウンスであった
医仙と呼ぶことが常だったが、王はウンスの名前を忘れずにいた
本人たっての願いにより、二等兵に配属した折に、口にした記憶もある
チェヨンは続けた
「そのひとは、ただの女人です
身一つで、この私の元へ参ったのだと、その女人は申すのです」
イムジャあの方はすべてを捨て、身一つで俺の元へと戻ってきてくれた
なにも持たず、ただその身ひとつで
イムジャが生まれてこの方、培ってきた大切な物を、俺のために手放された
「そうか、で?」
一瞬、黙ったチェ・ヨンを王が促すと、一度下に落とした視線を正面に戻した
「女人が申すところによると、天人であった医仙は天での生をまっとうし、その生涯を終えたのだとか
そして天寿をまっとうした、あの方の魂は浄化され消えゆくはずでした
魂が消える直前まで、あの方は変わらず私を想い続けてくれた
天に私達の想いが通じたのでしょうか、哀れに思った天は私達を赦したようです
(未来永劫、変わりはしまい)
医仙の魂は新たな生を授かりました
天はあの方を、何も持たない下界の女人として、生まれ変わらせた
そして私の元へ送ったようです」
王は返す言葉を持ちあわせてなかった
ウンスがこの世の人ではない事は、此の地に来た経緯をすべて、目の当りにしている王は否定出来ない
余は知っておる、医仙はまことの天人
天人だという前提ならば、生まれ変わったと言われようが、下界の人間が知る由もない
天の理(ことわり)に対し、どうして下界の人間が、異議を唱える事ができる?
太刀打ちでるはずがあるまい
何を言われようが、そもそも打ち返す武器を、余は持ち合わせておらぬのだ
もし否定出来る者がおるとするならば、その者もまた、下界の人間ではない
天人でしか有り得ぬのだから
そもそもチェ・ヨンこの男は、余を謀っておるのだと、そう笑って見せている
ならば、どの話が真で偽なのか、それを考える事自体が、愚かだと言えるだろう
そもそも、答えなど無い問いなのだから、何をしても証明などできやしまい
王は心の中で、苦笑いを浮かべる
まったくこの男は・・・と思いながら半ば呆れ気味に、首を左右にゆっくりと振った
みすみす謀っていると伝えられているのに、打ち返す手段がないのだから
これは、呆れというより、お手上げだと、王は小さく肩を震わせて笑った
「そうか」
王は、残ったちっぽけな対抗心から、感情に左右されてると気取られぬよう、なるべく穏やかな口調を保った
チェ・ヨンは一度姿勢を正した、そして、かしこまって礼を取る
「臣チェ・ヨン、いくつか、チョナに、お願いしたき儀がございます」
「聞こう」
「まず始めに私は、この女人を妻として迎え入れたく、チョナにそのご許可を頂きたく存じます」
ユ・ウンス、その女人を妻に
何をいまさら、改まって言う、そんなのは既に、分かりきった事だ
王にとってこれほど喜ばしい話はなく、王妃が喜ぶ姿も目に浮かんでくるほどだ
「問題ない。そうするがいい」
他ならぬ大切な友の慶事だ、考える、少しの間もなく王は答えを返した
だがしかし、チェ・ヨンが返してきた次の言葉に、王は驚き息を飲んだ
「ですがチョナ。女人は天から賜った尊き身と言えど、此の地においては、何も持たぬただの女人です」
それに私は、天人であった医仙と婚姻を誓い、契りを交わしております」
なにを、言っておる…?
当たり前だ、二人は同じ存在なのだから
そして、チェ・ヨンは、目を大きく張った王に向かって、こう言ったのだった
「そこで、此度私の元に参った女人を、第二の夫人として、迎え入れたく存じます」
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おはようございます
もう分かりましたよね
第一夫人は、尊い天人である医仙ウンス、そして、第二夫人は、ただのひとユ・ウンスです
医仙は天人(少なくとも異次元のひと)である事は、誰よりも王が良くわかっていますから
天人の輪廻転生を否定できる人は、高麗中どこを探しても見つかりませんよね
万人には立証できないヨンの嘘です
ですが、騙しているのだと敢て伝えたのは、王への敬意であり、ヨンの忠義でした
民衆とどう絡むのかも書いていきますね
もうしばらくお付き合いくださいまし