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おはようございます
当分、指南には辿り着かなそうで、開き直ってもうしばらく回想を続けます(笑)
皆さん、ミアネヨ
お話
心地よい酔いを感じながら、ぼんやりと兵舎の天井を見上げていると
「体中を撫でられては気も失えません」
自分が言ったあの時の言葉が思い浮かぶ
イムジャの刃(やいば)がこの身を貫く
痛みに気を差し向ける事すらままならぬ程、混沌とした意識の中を、一刻、また一刻と命の灯が先細るのを感じ…
全身の気が、次第に落ち細っていった
俺は生と死を行ったり来たりしながら、置かれた運搬具の揺れに身を任せた
ただ一つ、確実に分かる事があった
俺の上を忙しなく這い回るなにか
それは誰かが俺に触れる感触だ
「あの方は今も昔も変わらない」
昔を懐かしみチェヨンが言うと
「本当に変わらぬ御方ですね」
この二人を誰よりも傍で見守り続けてきた、チュンソクがそれに首を頷かせ答えた
あの時俺は、しがないこの世に別れを告げ、やっと懐かしい皆の元へと…
生き長らえてるだけの生を終いにし、もう逝くことが出来ると、そう思ったのに…
「あの時の事を覚えておるか?」
「あの時…とは?」
「イムジャの剣を受け、生死を彷徨ったあの時だ。俺はもう逝ってしまいたかった」
「あの時ですね…忘れはしません」
チュンソクは思わず姿勢を正し呟いた
未練と言えば武士の名にかけて誓ったイムジャとの約束を果たせなかった事だけだ
それ以外未練どころか煩わしい事ばかり
チェヨンが当時の思いを初めて明かすと
「させてはもらえませんでしたね。でも、だからこそ今の幸せがあるのでは?」
死を選ぼうとされていた御心は、言わずとも全て分かっておりました
そう思いつつも敢えて言わずに、ただチュンソクはおどけた顔をしてみせた
その表情で十分通じあう歳月を過ごしてる
チェヨンは柔らかに微笑む
「まぁな。置いてけと言っても聞く方ではないが。それも自分で刺しておいて、とんでもない女だ」
あの時のウンスの剣幕を思い出し、くっくと込み上がる笑いに肩を震わせた
本当にと、共に笑い二人の男の声が響いた
そうだ!突然笑いを止め、何か思い付いたとチュンソクは声をあげた
あまり覚えておられないでしょう?刺した後のウンスの武勇伝を語りだした
「あの時もあの方は…その女だてらに毅然とされて、邪魔をするチョ・イルシンをあしらっておいででした」
「あいつか。イムジャもイムジャだ。自分を曲げぬだろ?気が強いのは変わらぬ」
「医仙殿の強い決意に、ウダルチの皆もあの男に対抗して…お守りしようと」
チョ・イルシンは曲がりなりにも重臣
俺らだけであれば王の重臣相手に、あそこまでの決意は持てなかっただろう
「でも、今となっちゃ、あいつのおかげで、この今があるのだから」
なんだか可笑しいと思わぬか?
あいつが王を焚き付けねばイムジャを此の地に無理矢理留めることはなかった
不条理な王命が俺達の架け橋となった
そう言いチェヨンは頬を高くした
「あの男に、感謝せねばならぬくらいだ。墓前にでも華でも手向けようか?」
チェヨンが悪戯に言うと
「良き日を前に縁起が悪い御冗談を…万が一にも祟られたらどうするのです?」
チュンソクはぷるっと肩を震わせた後、不敵な笑みを作り上げ覗き込んだ
「もしや死んだ方が良かったですか?あの男が待っておるやもしれませんが?」
俺にこんな日が来ると思いもよらなかった
「勘弁してくれ」
三途の川に向かおうとする俺を煩わしい何かが、けたたましい声をあげ引き止めた
もう苦痛な何もかもを放り出してしまい、楽になってしまいたい許して欲しいと…
俺自身が心の底からそう願ったのに
その厄介者が邪魔をしようとする
安らかな眠りを邪魔される困惑の中で、俺は限界に達した痛みに意識を手放した
「生きてて本当に良かった」
チュンソクの問いには答えず深く目を瞑り、心の底から今、生ある事に感謝をした
イムジャに、ウダルチに、そして天に
その後はちょっとした戦いだった
俺の病状を診ようと、迫ってくる手から逃れようと逃げ回った
まるで俺をこの世に引き戻したその憎らしい手が、煩わしく思うかのように…
それから逃げ回っているみたいだ
「イムジャはいつも一生懸命で」
「そういえば隊長は何処だと、いつも兵舎の中を追い掛け回しておりましたね」
「本当に煩わしく…」
「それにしては嬉しそうでしたが?」
「そんな風に見えたか?」
「皆は分かっておったようです。分からないで居られたのは当の本人だけでは?」
「なんだと?」
調子に乗り軽口を叩きだしたチュンソクを呆れた顔で一瞥した後、自分の想いを知らぬのは自分だけだったかと笑う
何度あの方の手を振り払った事か
今であれば、あの時のイムジャの行動が、単なる診察のためだったのだと分かるが
当時の俺はそんな事わかりやしない
「しかし、かように触れ回る女人はおりませんね。俺たちも度胆を抜かれました」
「そうだろう?昔っからだ。あの方は無意識だから本当にたちが悪い」
振り払っても、振り払っても、イムジャの手が俺へと差し迫ってくる
女が男にとにかく触れようと立ち回る、天界からきたイムジャに大層困惑した
しかし想いとは分からないものだ
直接接すれば鬱陶しい事間違いない、と分かっていたのに何故か俺は…
どう考えても煩わしいはずのイムジャの事が、兎に角気にかかって仕方なかった
「御御足を徐にお出しになって、ウダルチの皆の前に現れた事を?」
「何だ覚えておるのか?」
「えぇ。それはもう鮮明に…今でも夢に出てくるほどで」
チュンソクは目をくるりと大きくさせると、チェヨンをからかうように言った
「はっ、何だと?」
「真っ白で…柔らかそうな…」
途端に真顔になり始めたチェヨンが面白く、追い打ちをかけてみた
「あ~?忘れろ!忘れろって!!」
チェヨンは顔を強張らせ、唾が飛ぶんじゃないかと思うほど強く捲し立てた
さらにジロリと睨み付けられ、調子に乗り過ぎたと怯んだ時には手遅れだった
「じょっ、冗談です!!」
もう遅いと、憎らしいチュンソクの頬をギュゥッと、つねりあげた
「どうだ、まだ覚えておるか?」
「イタタタ…ごむらいなぁ」
「これではどうだ?忘れたか?」
「ひゅっっかりと…わふれました…」
「もしやイルシンに会いたいのか?」
「ろんでもらい~おゆるひお~」
「二度と?」
「おもいらしもしません…」
頬が絞られて痛くて涙目になる
チェヨンが振り切るように手を放すと、チュンソクはイテテテと頬をさすった
そんな事もあったな…チェヨンの胸の中に懐かしい思い出の情景が浮かぶ
天界から突然目の前に現れたイムジャに、自分自身がその想いを計り兼ねてた
だがその感覚に向き合うなど面倒だと…
面倒が何より嫌いな俺は、自分の中に生まれるモヤモヤが不快にすら思った
なのに不快なはずの心に、それを越える好奇心が芽生えたのを感じて戸惑ったのだ
その厄介者を愛しく思い、妻として迎えようとしておるわけだから、人の心ほど不確かなものはないだろうと思う
一寸先は闇ではなく、
一歩踏み出せば春の薫りがしてきた
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