第10回です。ちょこちょこ誰かわかるようにはしてますが、本当に誰かわかってもらえてるかな、とちょっと心配にはなってます。しかし、楽しく作成してるので、自己満足で、もういいかーなんて思ったりもしてます。笑笑 では、またお願いします。




 私達はどう見えているんだろう。ここはいわゆるファミレス。駅から少し離れた場所にあって、川沿いで遊歩道のそばにある、比較的小さめなお店。日中は家族連れより、シニア層が多い。 そんな店内に、私と彼がいる。彼といっても、パッと見女の子に見える外見の持ち主。大きな瞳は長いまつ毛の傘にかぶって、下を向いている。まつ毛の長さが、整った顔をさらに際立たせる。メニューをめくる手は、男の人のそれだが、きれいでしなやかさを帯びているのがわかる。

「ねえ、決まった?僕ね、和定食かなー」
メニューを渡しながら彼は、私を真っ直ぐ見て言った。オーダーしてから、彼は頬杖をついて、こちらを見つめてくる。私は周りの目線が気になって、キョロキョロ、オドオドしている。
「ねえ。ねえってば。聞いてる?」
「あ!う、うん。聞いてるよ。」
「嘘だね。全然こっち見てくれないじゃない。つまんないよ。」
ぷうっと膨れた頬も可愛すぎる。

 美形な彼の一番の特徴、実は長い髪にある。さらさらの長い髪、肩を通過して腰近くまである。でも久々に会った彼は、昔の華奢な可愛い男の子じゃなく、きれいでカッコいい青年に変わっていた。

「だってさ、若いあなたと私じゃ、姉弟?あ、親子に見えるかも!ひー 嫌すぎる〜!」
頭を抱えて、更に下を向く。
「誘って悪かったよ。…そんな悩むなんて思わなかったし。久々の再会で、そこまでブヒブヒ言わないでよ。」
聞きずてならない言葉を聞いて、顔をスッとあげる。すると待ち構えていた彼の指が、私の鼻を押す。
「あれー?この店は、豚の入店許可出るんだー 良かったね。豚さん。」
満面の笑みでイケメンに言われても、嬉しくないものは嬉しくない。…けど、さっきより顔が近い。伸ばされた腕は、私の知ってる小学生男子とは違う、大人の、男性のものだった。
 何のリアクションも取らない私に、首をかしげて、心配な顔をする。ああ、でもあの頃の雰囲気も残っている。知らない人じゃなく、やっぱり彼だ。

「なんか言ってよーブヒブヒ?」
「はいはい」
その綺麗な手を振り払う。途端にバツの悪そうな顔をしてみせる。いわゆる子犬的な、アレ。しょげているような彼の長い髪が、お日様に当たって綺麗。綺麗な黒髪、毛先の方は光の加減によっては緑がかって見える。さっきイケメンて思ったけど、そんな軽い言葉じゃ表現できない…

 しばしの沈黙を破ったのは、店員さんの声だった。彼は今時の若者っぽくなく、和食派。
「あ、焼き魚だった。」
「ああ、お肉派だったもんね。でも焼き魚も美味しいよ。」
「小さい頃から、魚ほぐすの上手だもんね。あ、小鉢はふろふき大根じゃん。はい、あげる。」
「ありがとう。覚えててくれたの?」
「あ、いや、たまたま。たまたまよ。」
うれしそうに、はにかむ彼。か、可愛すぎる。感情爆発状態の私、気付かれないように黙々と食べる。

「今日はいい天気だね。風も控えめだし、気持ちのいい感じ、だね。」
「うん、ここら辺はよく散歩するの。散歩の犬とか、かわいいんだよ。」
店を出た私達は川沿いの遊歩道を歩いた。
「なんか並んで歩くの久々だね。前はこぉーんな小さかったのに、今は…」
彼の方に向き直って、手で背を比べようとすると、彼が急に手首を掴んできた。
「ねえ。 ねえ、なんで? なんで、昔の話ばかりするの?今の僕は見えてないの?確かに10年ぶりの再会だけど、僕はもう隣に住んでる小さな男の子じゃないんだよ。」
急な状況の変化に追いつかない私は。何か話そうと口を開くけれど、思いと実際にあらわれた言葉はあまりにも違っていた。
「い…痛い。」
ハッと気付き、手を離す彼。動揺している。私も一緒だ。体制を立て直そうとしたその時、小さな段差につまづいた。
「痛ー!」
いい年して、足をくじいた。なんか、今日は調子が悪い…悪いというか、変。 彼が無言で近づいてくる。ああ、怒らせちゃったかな。
「ご…ごめ」
ん、を言う前に私の身体はふわりと浮いた。浮いたかと思えば、彼の顔が驚くほど近くにあった。
「ちょ!ちょっとやだ。おろして!重たいよ。ごめん。いや、本当に。」
「落ち着いて。本当に落ちちゃうよ?」
こつんと額と額がくっついた音がした。落ち着けるわけない。耳元で話さないで!
「って、僕も落ち着けてないけど。」
よく見ると少し顔が赤い。それを見て、また私も赤面する。この細い腕のどこに私を抱えられる力があるの?

「僕ん家、そこ。」
顎で指すそこは、小さなマンションだった。大学入学で一人暮らしを始めた彼は、私の家のそばに住み始めたのだ。そして今日は久々の再会だった。思わぬことになってるけど。

彼の家に上がって、椅子に座らせてもらう。彼は私の前にひざまずき、くじいた足の手当てをしてくれた。へらっと笑って、年甲斐もない、と言う私に
「いや、ごめん。僕が悪かったね。 こっちもごめん。」
手首の手当てをしながら
「ごめんね。なんか、はしゃいじゃった!あはは」
沈黙に耐えきれず、またもやへらっと笑って話す。
「謝らないでよ。僕の方こそ、はしゃいで、ケガさせて…こんな思いさせたかったわけじゃないのに。見た目がこんなだから、子ども扱いが嫌なんだ。」
「そっか。そうだよね。わからず、ごめんね。」
手当てが終わると両手で手を取り、真っ直ぐに私の方を見てくる。
「あのね。今日僕が会う約束したのは、話を聞いて欲しかったからなんだ。 あなたから見れば僕は隣に住んでる小学生の男の子だったと思う。でも、それは10年前の話。今の僕のこと、少し意識してくれない?」
綺麗な目で見つめられると、困ってしまう。彼の目線に耐えきれず、目線をはずす。今度は手首が動いた。
「…ねえ。ねえ?こっち見て?」
私の手は彼の頬についていた。手のひらは彼の唇に触れていた。彼が話すたび、息をするたび、彼の息を、熱を感じる。
「お願いだから、俺のこと、男として見て。…もう、大人なんだよ?気付いて。」
言い終わると同時に手のひらにキスをされる。頭の中はパニック状態。どうしたらいいんだろう。6歳下の可愛い幼馴染が、大人っぽくなって、しかも男として意識しろって言ったり…お姫様抱っこされたり。と…とにかく、今はこの場を切り抜けなきゃ!
「わかった!わかったー!少し、考えるー!」
「本当?ありがとう。」
やっと手が自由になった。立ち上がった彼は、もういつもの彼だった。ほっとする私。
「じゃあ、これからよろしくね。」
ニコッと私を見下ろす彼。

「さて、お茶でもいれようか。コーヒー?紅茶?何がいい?」
「あ、じゃあコーヒーで…」
キッチンに立つ彼に話しかけるけど、気のせいかな…にやぁ〜っと笑っていた気がする。 何はともあれ、年下の幼馴染がちょっと気になる男の子にジョブチェンジしたってことみたい。色々あってなんだかわからないけど、この手のひらの感覚は…本当みたい。明日からどうなるんだろ、私…楽しみなような、こわいような。
 今回も書いてみました。妄想大事…

ガチャガチャッと玄関から音がする。
「ただいま。」
「おかえりなさい。お疲れ様〜」
ジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩める。ベタだけど、ネクタイを緩めるって何度見てもかっこいい。スーツ姿もかっこいい。つまりかっこいいの塊のご帰宅。緩んだ口元に気付かれないようにキッチンで作業中のフリをする。
「手洗ってきてね〜」
「うむ。やってるぞ。1 2 3…」

リビングに戻ってソファに座る。
「手洗いで数字数えるのえらいねーちゃんとやってるの。」
「まぁな。大事な場所に変なもの入れたくないからな。」
背中越しの会話でも、彼の優しさが伝わって嬉しい。
「そういえば、ハッピーバースデーの歌を2回歌うと丁度いい時間みたいだよ。」
「…」
「ん?」
返事がない?しょうもない話だから返事は不要と判断した?いや、彼はいつも返事をくれる。ソファの前にまわってみると、寝てる。ソファでうたた寝なんて、珍しいなぁ。相当疲れてるんだ。

 なかなか無い状況にとりあえずソファに座ってみることにした。起こさないようにそっと。寝てる顔…かわいい。いつもの熱い眼差しも、熱い言動も大好きだけど、この感じもいいなぁ。私だけの特権だぁ。あ、まつ毛もやっぱり長いんだ。あんまりよく見たことないから、この際じっくり見ちゃおう。 起こさないように、そっと更に近づく。っと、彼の体重で沈んだソファに身体を取られて、彼にもたれかかる体勢に。あー起こしちゃうーと思ったら、彼の腕が私を支えてた。
「何してるんだー?ふわぁ〜」
あくびをしながら、ソファに戻される。
「いや、別に?ソファに座ってただけだよ。」
「へーあんなに人の顔、のぞきこむのが普通のことなのか?もうちょっとで顔がくっつきそうだったじゃないか。」
ニヤッと笑う表情と、バレたという表情が向かい合った。
「起きてたなら言ってよう。恥ずかしいなぁ、もう」
「いやいや、恥ずかしいのはこちらだから、モウ。モウ。」
からかわれてるけど、言い返すこともできず、口をつむぐ。でも何か言いたくて、もごもごと口を動かすだけの私。
「はいはい。おいで。」
彼が両手を開く。私は飛び込む。外の香りがする。彼の仕事頑張ってきた香り、嫌いじゃないな。なんだか、ドキドキする。
「あ、ごめん。臭いか。今日よく動いたからなぁ。」
パッと離される。
「着替えてくる。」
立ち上がって、あくびをひとつ。私も立って、
「おかわりっ!」
両手を広げる。ワイシャツが頭に乗ってきた。
「あーとーでっ」
部屋に着替えに向かって行った。とりあえず洗濯籠にワイシャツをボンッと投げ入れ、ふてくされながら、夕飯の支度を続ける。

「いただきます!やぁ、うまそうだ!今日はさつまいもご飯か!焼き魚に、お新香も。うまそうだ!…ム?2回言ってしまった!ワハハ!」
「今日は鯛の塩焼きでーす。お魚屋さんでおすすめだったんだよ。」
「ぬ!? さつまいもご飯に、鯛の塩焼き?お祝いごとか?何かあったか?」
焦った顔でカレンダーを見る。
「何もなくったって、幸せご飯なんだよー」
ほっとしてからの笑顔。喜んでくれたなら、私も嬉しい。

 食べていると、不意に彼が溜息をつく。おいしくなかったかな。不安が顔に出たみたいだった。
「ああ、ごめん。食事中に溜息ついて。仕事のこと考えてた。最近新人の教育係になって。自分の仕事はもちろんあるし。」
「そっか、年齢的にも教育係って早いんじゃない?面倒見いいからねぇ。 私も最近、若手とチーム組むけど、なんだかうまくいかなくてさ。ちょっとイライラしちゃうんだ。仕事、嫌になっちゃうよ。」
彼の眉がピクッと動く。
「イライラ? イライラはあまりよくないな。たしかに人同士の関わり合いだから、どうしたって意見の相違はある。君は先輩として、相手のことを考えて、意見を聞き、動かねばならないのではないか?」
真っ当な彼の言葉にムッとしつつ
「わかるけど、チームだから、それぞれの意見を大事にして、練って進みたいの。それには私の意見も出したいし、人の意見ももちろん聞いてるよ。それでもうまくいかないことは多いの。それで、どうしたらいいか、わからなくなっちゃって、頭がモヤモヤしてる。ずっと。 ご飯中に話しちゃうくらい…」
「そうか。すまん。俺こそ意見してしまった。君がよく頑張っているのは、仕事に行く前帰ってきた後の表情でよくわかってるつもりだ。 でも君はすごい!俺はこんなに美味しく、人を幸せにする食事は作れないからな!」
 彼は私が悩んでいたり、疲れていたり、その結果愚痴をこぼしたり…そんなとき、さとすようにしっかりと話してくれる。ただ甘やかすだけでなく。
「そんなことないよ。普通にご飯作っただけだよ。」
 急にほめてもらえて、下を向きながら話す。彼が頭をなでてくれる。
「普通、とはとても難しく大変なことだよ。食卓について、温かいご飯、汁物、焼き魚…全てが揃っていて、しかもうまいなんて、君にとっては普通かもしれないが、俺にはすごいことだよ。仕事もあるのに。ありがとう。いつも。」
 さとす言葉だけじゃなく、欲しい言葉を言ってくれる。魚屋さんに寄って良かったと心から思う。私よくやった。
「しかし、本当にうまいな!わっはっは!このさつまいもご飯の、ほんわかとした香り、たまらないな!わっしょい!」

 嫌なことがあったり、辛いことがあっても、彼と同じ空間にいられるだけで、心があらたまって、あたたかくなる。心が洗われるって、意味違うかもしれないけど、そう感じる。2人で食後のお茶と、頂き物のおはぎを半分こしながら、彼の顔を見ながら、強く感じる。

 まじまじと見つめ過ぎたようで、バチっと目が合った。立ち上がって洗い物をしようとする私の腕を掴んで、
「片付けは後で俺がやるから、一緒にソファにおいで。」
「それって、さっきの“おかわり”?」
 少し考えて、
「さあね。どう思う?」
 こちらを見つめながら、少しだけ微笑みながら、彼は聞いてくる。
「そう思う。…けど、足りないから、もうちょっとください。」
手を繋いでソファに座っていたのに、抱えられて、いつのまにか膝の上に。
「はい、”おかわり“の上の、最上級の大盛りでーす!」
彼が後ろから抱きしめてきた。ドキドキする…顔が赤くなるのわかる…
「どうですかー?お腹いっぱいですかー?」
「は…はい、満腹です。」
言い終わらない内に更に、ぎゅーっとされた。
「俺は…もう少し足りないかな。もうちょっといい?」
黙って頷く。頬と頬が触れ合い、見つめ合い、キスをして…また目が合って、お互い微笑み合える。ずっとこんな2人でいたいな。記念日のご飯もいいけど、普通の幸せな日。続くといいなぁ。
テンション上がって、また書き書きしました。よろしくお願いします。


いつも私が座ってる助手席には珍しく彼が座って、寝息を立てている。いつもお仕事大変なのに、休日は私に付き合ってくれて…しかも今日はイレギュラーな用事までこなしてくれたもんね。本当お疲れ様。それは数時間前のこと。

 今日は久々にお互いの休日が合って、お出かけ。とりあえず近場のショッピングモールに買い物に行くことに。待ち合わせして、車に乗るだけで心が浮き立つ。スマホの中の彼じゃない、本物の彼。なんだか、すごくドキドキしてる。しすぎて、変じゃないかな。バレなきゃいいな。
 ショッピングモールの駐車場に着いたとき、私のスマホが着信を知らせる。
「っひゃあ!!!」
ビックリして、変な声が出た。
「電話か。気にせず出なさい。」
うなずいて電話に出る。
「え?おばあちゃん?」
祖母からのSOSで、実家に来て欲しいということだった。
「なんと、おばあさんがケガをされたと?行かねばなるまい!買い物など、またいつでも来られる。行こう!」
今入ったばかりの駐車場をあっという間に出る。買い物じゃなく、デートなんだけどなぁ。っていうか、すぐ行動してくれるの嬉しいなぁ。

 実家は車で数十分かかる場所にある。
「なんか、ごめんね。」
「大丈夫だ。おばあさん心配だな。すぐに向かおう。」
「ありがとう。」
 
「早かったねぇ。」
足を引きずりながら祖母が出てきた。足をくじいたそう。母は仕事で電話が繋がらなかったので、私に連絡が来たみたい。
「少し手を貸してくれないかい? あら、こちらは?」
「初めまして!お孫さんとお付き合いさせて頂いてるものです。ご挨拶遅れて申し訳ありません。」
「まぁ、こちらこそ孫がお世話になってます。」
「力不足かとは思いますが、男手も必要かと思い、勝手ながらうかがいました。連絡もせず、申し訳ありません!」
おばあちゃんは目を丸くした後、柔らかい表情になって
「ありがとうございます。甘えさせていただきます。」

 そこからはおばあちゃんの指示で、かがまずに済むように部屋の模様替えをし、切れた壁掛け時計の電池替え等等、果ては草むしりまで。私よりおばあちゃんと話をする時間が長いほど。私自身もそれをチョット寂しくも見る…余裕もなく、バタバタと過ごした。

 時が過ぎ、夕方に差し掛かった頃、最後のお手伝いが終わった。せっかくのデートだったから可愛い格好してたつもりだったけど、髪も化粧もぼろぼろになってた。でも彼も、くたっとしたみたい。おばあちゃんの家からの帰り道、スーパー銭湯に寄った。

 屋上の足湯で待ち合わせした。やっぱり私の方が長湯だったみたいで、彼が待っていてくれた。
「今日2回目の待ち合わせだな。ここに座るといい。」
ポンポンと彼の隣の席を叩く。湯上がりで熱かったけど、夜風に当たって気持ちいい。彼に寄っかかって、再度お礼を言う。彼は微笑み、
「大丈夫だ。」
いつもの口癖。明日も仕事なのに、悪かったな、と思ったら涙が出てきた。
「大丈夫だ。」
何度も言ってくれる。
「大丈夫だ。」
言われる度、泣けてしまう。嬉しい、ありがとう。
私が泣き止むと、彼がこちらを向き直り話し始めた。
「今日おばあさんと話していたとき、ふいに、こうおっしゃった。『うちの孫ともう少し一緒にいていただけますか?』俺は、はい、もちろん。少しではなく、ずっとのつもりです、と答えた。おばあさんは『ありがとうございます。本当に。本当に。あの子はおっちょこちょいだけど、気は優しいし、細かいことにもよく気がつく、私から見たら自慢の孫です。どうか、よろしくお願いします。』と、深く深く頭を下げられた。俺も更に深く頭を下げた。」

 泣きじゃくる私の頭をポンポンとしながら
「もう少しだけ話を聞いてほしい。」
優しく、そしてまっすぐこちらを見つめてくれる。
彼は居住まいを正して続ける。
「おばあさんに話したのは本当の気持ちだ。」
私の左手を取って、自分に引き寄せる。
「薬指の予約をさせてほしい。俺以外、ここに誰も触らせないでくれ。」
そう話しながら、薬指に口付けをした。私は、この涙が何の涙だかわからないほど泣いてしまった。泣いて泣いて、肩で息をするほど、涙が出てきた。
「はい。」と言えたかどうか、わからないけど、言えたと思う。こんなに優しい人は他にいない。

 夜空を見上げながら
「今日、1番緊張したなー!はあ」
続けてこう言った。
「俺はね、今日更に強くなったんだ。わかるか?人は守るものが増えると強くなるんだ。俺は守るべきものが増えた。君を、君の家族を守るのが、俺の責務だ。こんなに幸せなことは、責務とは言わないか。」
照れ笑いする彼と泣き笑いの私。2人で手を繋いで、夜空を見上げた。今まで生きてきた中で1番綺麗な夜空。きっと、ずっとずーっと忘れない幸せなとき。お互い目が合って微笑んで、幸せはこれからも続いていく。この夜空の輝きのように。