葛城の迷宮 -38ページ目

『フィッシャー・キング』

監督:テリー・ギリアム
出演:ジェフ・ブリッジス
    ロビン・ウィリアムズ
    マーセデス・ルール
    アマンダ・プラマー
    マイケル・ジェッター

世間のことを挑発するかのような過激なトークで人気を博している、ラジオDJジャック・ルーカス(ジェフ・ブリッジス)。
恋の悩みを打ち明けたリスナーに対して、「ヤッピーたちなんか殺してしまえ!」と答える。
そのジャックの言葉を真に受けて、リスナーの男はレストランでショットガンを乱射。
7人もの犠牲者を出して自らも命を絶つ。
ジャックの発言が発端で起こされたこの事件は大々的に報道され、彼は人気の頂点から失意のどん底に落ちてしまう。

3年後、落ちぶれてアルコール中毒になったジャックは、恋人アン(マーセデス・ルール)の経営する下町のビデオショップで、ヒモのような生活を送っていた。
ある日、泥酔したジャックは暴漢たちに襲われ、危うい所をホームレスの男に救われる。

バリー(ロビン・ウィリアムズ)と名乗る奇妙なホームレスが自分の寝ぐらだと言って連れてきてくれたのは、あるビルのボイラー室。
その壁には中世の城と騎士、馬を駆る悪魔の化身“赤い騎士”が描かれていた。
彼は“聖杯”を探しており、ニューヨークで厳重な警備をされた大富豪の邸宅にそれはあると言う。
そしてジャックこそが、その“聖杯”探しの力になる人物なのだと、興奮して話した。

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頭のイカれたホームレスには付き合っていられない、とその場を逃げ出したジャック。
ある日ビルの管理人から、昔バリーが大学教授だったという話を聞いて耳を疑う。
そして、彼がレストランで食事をしている最中、突然乱入してきた男に目の前で妻を射殺されたことを聞かされる。

バリーは、ジャックが引き起こしたあの事件の犠牲者の一人だったのだ。
忌わしい過去と罪の意識に苛まれるジャック。
事件以来すっかり精神に支障をきたしたバリーのために、何かしてやることで罪を償えるのではないかと考え始める。

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バリーに付き合っていると、彼はニューヨークのグランドセントラル駅に行こうと言い出す。
しばらく様子を見ていると、一人の女性が現れる。
人一倍そそっかしく間の抜けた彼女の名はリディア(アマンダ・プラマー)。
バリーは彼女に恋をしていたのだ。
ジャックはアンに協力してもらい、バリーとリディアの仲を取り持つことで、自分の罪を償おうと考えるのだが・・・

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テリー・ギリアム監督の作品が大好きだ。
ポップでレトロな美術と豪華な出演者、とてつもなく深い世界観、そして毎回一般ウケする空気を読めず、ケレン味たっぷりの演出でマニア向けになってしまう。

関わる作品がことごとく不運に見舞われる彼、もはや笑える範囲を超えている。
『未来世紀ブラジル』米国で勝手に改悪されたヴァージョンが公開され、訴訟問題に。
『バロン』プロデューサーの予算の管理が杜撰で、製作費が膨大に。作品もコケる。
『ドン・キホーテ』ジョニー・デップも出演するはずだったこの作品、主演俳優の怪我、
  ロケ地で大洪水が起きてセットが被災、NATOの空軍基地からの騒音、これらが撮影1週間で起こって頓挫。
 (あまりに不幸すぎて、メイキング映像をドキュメンタリー『ロスト・イン・ラマンチャ』として公開)
『Dr.パルナサスの鏡』半分近くまで撮影したが、主演のヒース・レジャーが死亡。

それでもメゲない彼には、とてもポジティヴなDNAが組み込まれているのかな。

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彼は大抵自ら脚本を書くのだが、この作品で初めて他人の執筆した脚本を映像化。
そのおかげか、ギリアム作品としては驚くほど観やすくなっている。
(それでも演出や美術、キャラクターの造形など、ギリアムのコダワリが随所に見られる)
悲劇さえも美しく魅せる、”赤い騎士”が現れる場面。
まるでウィリアム・ブレイクの絵画から抜け出たような、騎士の造形が素晴らしい。

”フィッシャー・キング”とは、”聖杯伝説”の一種で、アーサー王物語の登場する”漁夫王”のこと。

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ロビン・ウィリアムズは一時期、”イイ人役ならこの俳優”ってくらいに良く出てた。
その反動かどうかわからないけど、最近めっきり見なくなった。
この作品で演じるバリーは、イイ人ではなく”イカれた人”
ところどころに大学教授だった過去を垣間見せるシーンがあったり、すごく下品になったり、実はとってもピュアだったり。
可笑しさと悲しさが複雑に絡み合ってる役を、ハイテンションで演じきる!
『グッド・モーニング・ベトナム』『いまを生きる』で評価されてきた彼の演技の頂点が、この『フィッシャー・キング』だと思う。
オスカー受賞の『グッド・ウィル・ハンティング』のときは、すでにピークは降っていた。

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今回”イイ人”役なのが、ジャックを演じるジェフ・ブリッジス。
だらしない役から渋い役まで、何でもこなす超実力派俳優。
世捨て人のようにだらしなく生きているジャックは、過去の自分を吹っ切るためのきっかけとして、バリーを助けようと考える。
そんな彼が、心の底からバリーへの友情が芽生えていることに気付くとき、小さな奇跡が起きる。
ジェフ・ブリッジスという人は、何でもこなせる独特の雰囲気を持つ俳優で、作品や役柄に恵まれているのに評価だけが低かった。
やっと最近、『クレイジー・ハート』でオスカーを受賞したけど、ずっと最前線で活躍しているスゴイ俳優だと思う。
みんな、彼の演技が自然すぎて、そんなこと忘れてるでしょ?

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アン役のマーセデス・ルールは、派手なメイクと衣装で色っぽい雰囲気なのに、母性の塊のような存在。
ダメ男ジャックがいつか目を覚ますことを願いつつ、辛抱強く待っている。
彼女は映画出演が少ないけれど、この演技が評価されてアカデミー助演女優賞を受賞。

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リディア役のアマンダ・プラマー。
少女のような華奢で色気もなく、その上とてつもなくドン臭い!
彼女が歩けば人にぶつかり、彼女が触れれば物が崩れる。
4人で中華料理を食べに行く場面は、友人に女子を紹介してニヤニヤしてたことを思い出す。
しかしその正体は、『パルプ・フィクション』の冒頭で、ティム・ロスと二人でコーヒーショップを襲う
強盗ハニー・バニー

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そして出演時間は短いのに強烈な印象を残すのが、バリーの友人でホームレスのキャバレー歌手役マイケル・ジェッター。
『グリーン・マイル』でも死刑囚役で出演していたが、容姿と声のギャップがスゴイ!
ギリアム作品には、ヘンテコなキャラクターが必ずと言っていいほど出てくる。
”安田大サーカス”のクロちゃんを初めて見た時、日本にもこんな人がいるんだと思った。

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個人的にとても思い入れのある作品。
ぼくのベスト10って、気分や印象でいろいろ変わるけど、この作品は今のところ一度も落ちたことがない。
でも、思い入れが強すぎて、感想がうまく書けないや・・・

毒気たっぷりの演出と、強烈なキャラクターが織りなす現代のおとぎ話。

大きな悲劇と小さな奇跡の物語が、寒い季節に心を暖かくしてくれます。




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