『ビフォア・サンライズ』 | 葛城の迷宮

『ビフォア・サンライズ』

『ビフォア・サンライズ 恋人たちの距離(ディスタンス)』

監督:リチャード・リンクレイター
出演:イーサン・ホーク
    ジュリー・デルピー

1995年6月、ブダペストからパリへと向かうユーロトレイン。
列車の中でケンカしている中年夫婦。
その隣の席に座っていた女性は席を移る。
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「何を言い争っていたの?」
その様子を見ていた男性は、隣に座った女性に声をかけた。
「夫婦はお互いの声を聞きとれなくなるの
年と共に男は高い声を識別できなくなり、女はその反対なの」

「だから殺し合わずに年を重ねられるのか」



「何を読んでいるの?」
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彼女が持っていた本は、ジョルジュ・バタイユの”マダム・エドワルダ”
「あなたは?」

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彼が読んでいたのは、クラウス・キンスキー自伝

「食堂車へ行こうと思うけど、君もどう?」


食堂車に移って向かい合わせで座る二人。
彼女はブダベストの祖母を訪ねていたが、大学の講義が始まるのでパリへ帰る途中。
彼の方はマドリードの友人を訪ねて、そのままヨーロッパを一周。
明日の朝の飛行機に乗るため、ウィーンで降りる予定だった。
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ひいおばあさんが亡くなった日にホースで水撒きをしてたら、
虹のむこうにひいおばあさんが立っていたんだ。

飛行機に乗っていると爆発することを想像するから、移動はいつも列車でするの。
いつも死の恐怖を考えると、24時間休まることはないわ。

他愛もない会話を楽しむ二人。
やがて彼らを乗せた列車が速度を落とし始める。

「・・・・・・ウィーンよ」
とうとう男性が降りる予定の駅に到着した。


軽く別れを告げた男性だったが、荷物を持って駆け戻ってきた。
「バカみたいだけど言わないと一生後悔しそうだ。
このまま君と話していたい。
一緒に降りて街を探検しよう」

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偶然、列車の席で隣どうしになった男女が、旅の思い出に途中下車しただけ
まだお互いに名前も知らない
彼の飛行機のチケットは、明日の朝9時30分
二人の時間は今から明日の夜明けまで
街の中を夜通し歩く
ただそれだけのはずだった・・・


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バレンタインのチョコが、毎年減ってきている葛城です。
うーむ、渋いオジサンになりたいけれど、現状は中途半端もいいとこだな。
もっとお洒落になればいいのか、マッチョになればモテるのか。
やっぱり男はトークかなー。
人恋しさのあまり久しぶりにこの作品を観てみたら、やっぱり面白かった。


発表する作品のどれもが実験的でありながら、商業的にも評価の高いリチャード・リンクレーター監督。
偶然知り合った女性との街中を歩きながら話をした経験を基に、監督が原案をまとめ上げたこの映画。
さすが才能のあるヤツは、ナンパするだけでも作品として仕上げるんだな。
作品時間105分の間に、旅先で知り合った男女が恋に落ちる一夜を描いた物語。

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アメリカ人記者のジェシー役は、『ガタカ』のイーサン・ホーク。
思い切って声を掛けてはみたものの、肝心なことはなかなか聞けない。
彼女を誘ってはみたものの、その後の行動に下心と緊張が交互に見える。
知性的な彼女にちょっぴりコンプレックスがあるみたい。
あー、じれったいと思わずにはいられない話の選択も、ジェシーの性格が良くわかる。


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パリのソルボンヌ大学に在学中のセリーヌ。
演じるのは、『汚れた血』『トリコロール 白の愛』のジュリー・デルピー。
愛読書がバタイユってところで、”死とエロス”に憧れと恐怖を抱いていることがよくわかる。
隙が無いように見せかけて、ふわりと懐に飛び込んでくる大胆さ。
彼のことをすべて見透かしていて、承知のうえで楽しんでいるのか。
思わせぶりな仕草にクラクラ♡


登場人物は二人のみ。
大きな物語の展開もなく、二人がただ深夜のウィーンを歩くだけ。
ジェシーとセリーヌの雰囲気は、日本人にも親しみやすいルックス。
映画の中で出会ったり行き交ったりする人々は、現地の人?エキストラ?
手相占い師や詩人も、ヨーロッパで出会うとお洒落に見えてきた。
だんだん映画ということさえ忘れてくる。


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あなた方は星なの 忘れないで
はるか昔、星が大爆発してこの世界が生まれたの
すべては星くずでできている
だからあなた方も星くずなのよ


ロマンチックな街並みを夜通し歩いているうちに、堅かった気持ちも軽くなる。
どうせ明日の朝までなんだから、どんなことを話しても二度と会わない。

今までセクシーに思った人は誰?
神は存在すると思うけど、特定の宗教は信仰してないの。
セックスばかりしているサルの一種があるんだ。

取り留めのない会話をしているうちに、どんどん心を開いていく。

わたしとキスしたいと思ってるでしょ

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深夜のカフェでのちょっとしたやり取りから、お互いの気持ちを告白する。
電話のベルまでアメリカ人とフランス人。
バーテンダーの粋な計らい。
やっぱりヨーロッパの夜には、恋の魔法がかかってるんだな


・・・そして徐々に夜が明けてくる。


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『ビフォア・サンセット』


監督:リチャード・リンクレイター
出演:イーサン・ホーク
    ジュリー・デルピー


2004年、パリの書店”SHAKESPEARE AND COMPANY”午後5時30分。
ユーロトレインの中でセリーヌと出会った日から、すでに9年が経っていた。
作家となったジェシーは、彼女と過ごしたあの日の出来事を小説”This Time”として出版。
ヨーロッパでのキャンペーンツアーの最後として、書店でインストアイベントに来ていた。
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「この本は自叙伝ですか?」
「列車で会ったフランス人女性は実在しますか?」

「そのことは、大して重要ではありません。
ここはフランスなので、”イエス”ということに(笑)」


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ファンの質問に答えつつ、彼女との思い出に浸るジェシー。

「物語は曖昧な形で終わっています。二人はその後、どうなったのでしょう」
「その答えは読者がロマンチックかシニカルかで違います
ロマンチックな人は再会を信じてる
シニカルな人は信じていない
現実的な人は再会したと思いたいが、確信は持てない」



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ふと店の片隅に目をやると、静かに立っているセリーヌ。



「コーヒーでも、どう?」
サイン会もそこそこに、パリの街へと出かけていく。
久しぶりの再会にぎこちなかった二人も、すぐにあの時の気持ちを思い出す。

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あの後、二人はどうなったのか。
お互いの気持ちを確かめたいものの、昔と変わらず肝心なことを聞けないジェシー。
相変わらずマイペースで何でも気軽に話すセリーヌ。
しかし彼は、今夜の飛行機でアメリカに帰国しなければならない。

ジェシー、そんな話していていいのか?
君には時間が残されていないぞ。



二人に残された時間は、夕暮れまでの1時間あまり・・・

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脚本を書いたのは、リンクレイター監督とイーサン、ジュリーの三人。
撮影期間15日。
ただの役を超えて、彼らの人生の一部だな。

もともと一作目は、1995年(日本は1996年だったかな?)に、
『恋人たちの距離』というタイトルで公開された映画だった。


その9年後の2004年に、『ビフォア・サンセット』が公開。
それに合わせて、『ビフォア・サンライズ 恋人たちの距離』にタイトル変更。
物語の設定も9年後で、二人ともあれから9年人生を歩んでる。
みんな続きが気になって仕方なかったんだな~。
何よりすごいのが、DVDの時間と物語の時間がリアルタイムなので、
残り再生時間が二人の会っていられる時間という徹底ぶり。

時計見ながら映画観てドキドキなんて、もう後にも先にもないだろうな。







『ビフォア・ミッドナイト』


監督:リチャード・リンクレイター
出演:イーサン・ホーク
    ジュリー・デルピー


2013年。
パリでの再会から9年。
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とっても楽しみ♡

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