『ラストキング・オブ・スコットランド』 | 葛城の迷宮

『ラストキング・オブ・スコットランド』

監督:ケヴィン・マクドナルド
出演:フォレスト・ウィテカー
    ジェームズ・マカヴォイ
    ジリアン・アンダーソン

1971年のスコットランド。
医大を卒業したニコラス・ギャリガン(ジェームズ・マカヴォイ)は、軽い気持ちでアフリカのウガンダにある小さな村の診療所で働く道を選んだ。
ウガンダでは、前大統領が軍隊によるクーデターで追放に追い込まれ、参謀総長であったイディ・アミン将軍(フォレスト・ウィテカー)が、国民のヒーローとなり新しい大統領の地位に就いたところであった。
まだ発展途上のこの国は、未だ医師の診療より呪い師を選ぶ民衆がほとんどで、ニコラスは若さを持て余して退屈を感じていた。

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ある日、大統領が訪ねてくるということで、村はお祭り騒ぎとなり、ニコラスも群衆に紛れてその様子を見に行く。
その帰り道、交通事故で軽傷を負った大統領の手当てをしたことから、アミンと親密な関係となる。

後日、尋ねてきた黒塗りの車に乗るように指示され、大統領府まで連れて行かれたニコラス。
アミン大統領は執務室に彼を招き入れて、「私の主治医になってほしい」と頼む。
突然の申し出に戸惑うものの、悪い気はしないままニコラスは引き受けてしまう。

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ある日、病院で診察をしていると、砲弾の音と銃声が聞こえた。
その後、大統領の側近から、至急一緒に来てほしいと頼まれる。
大統領の第3夫人ケイの息子が、砲弾の音に驚いて癲癇の発作を起こしたのだ。
ニコラスは適切な治療を行い、夫人から感謝される。
その後、大統領の家族とは隔離されて暮らすケイと親しくなり彼女と肉体関係を持ってしまう。

大統領から絶大な信頼を得たニコラスは、次第に医療以外の相談もされるようになる。
側近中の側近でウガンダでの立場も高くなり慢心状態になっていたある日、イギリスの高等弁務官からウガンダとアミン大統領の現状を知らされる。

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その内容とは、
大統領の政策の失敗により、ウガンダの経済状態が急激に悪化している。
前大統領支持勢力の粛清・大量虐殺を行っており、すでにその隠蔽工作もしていない。
自身の暗殺を恐れるあまりに猜疑心の塊となっており、側近の人間さえ処刑を行っている

ということだった。

自身の軽率な行動により、もはや自分で身動きがとれない立場にあることをあらためて知ったニコラスは、大統領に故郷のスコットランドへ帰らせてほしいと頼み込む。
それに対して帰ってきた答えは、
「もうすでにおまえの故郷はここだ。この国を見捨てて故郷へ帰ることは許さない」
と脅される。

肩を落として帰ると、部屋が荒らされており、パスポートが使えなくされていた。
アミンの恐ろしさに戦慄を覚えたニコラスは、大統領夫人のケイに相談するが、彼女にも魔の手が迫っていた・・・

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最近どうもマニアックな方向へ向かっている気がするなぁ。
伝記映画というのは偉人モノが多いけど、この作品は残虐非道な独裁者が主人公。

昔、『食人大統領アミン』というゲテモノ風映画のCMが記憶に残っているひとも多いんじゃないだろうか。
(実際にはそこそこマジメに作られた、イマイチな出来のイディ・アミンの伝記映画だったらしい)

物語の語り部である主人公のニコラスは、医師としての資格と知識があるだけで、正義感や良識のない軽薄な若者。
偽善的な正義感を持ってウガンダの地にやってきたが、退屈で仕方ない。
先輩医師の妻にチョッカイを出したり、権力者に気に入られたからって調子に乗ってその太鼓持ちになったりして、地に足が全然着いていない。
『X-MEN:ファースト・ジュネレーション』でプロフェッサーX役を演じたジェームズ・マカヴォイが、その場の楽しさや一時に快楽を求めてフラフラしているうちに、やがて抜き差しできない状況まで追い込まれるニコラスを上手く演じている。
観ている方も、「それ見たことか」と、同情の余地もないので感情移入なんか全然できない。


対照的に独裁者イディ・アミン大統領は、190㎝を超える体格を持ち、ユーモアのセンスも抜群。
教養も深く説得力のある演説を行う。
人懐こい笑顔で人々を魅了するが、自分に従わない人間や不快な人間には、感情を抑えることができない。
アミン大統領を演じたフォレスト・ウィテカーは一世一代の大熱演!!
『クライング・ゲーム』で、笑福亭鶴瓶に似てる!と書いたけど、今回はアフリカ出身の役なのでいつもよりちょっと黒め。
何より、撮影時あまりにアミン大統領にソックリなので、周りの人たちが奇異の目で見て怯えたらしい。
彼の在任時、よっぽど怖い目に合ったんだな。
それでも、映画を観ているうちは、アミンがとてもチャーミングな人物に見える。
民衆の人気が一際高いのも思わず納得。
無理やり周りを仲間に引き入れるジャイアンみたいなもんだな、このヒト。
フォレスト・ウィテカーは、この作品でアカデミー主演男優賞受賞。

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伝記映画は、丁寧できめ細やかな演出が求められるけど、この作品はちゃんとそれに答えてくれる。
しかし、しかし、アミンが本性を表すときの暴力的な表現がえげつない!

『ゾンビ』シリーズや、『SAW』シリーズなんかの残酷描写で、グロ耐性ができていたつもりなんだけど、もうホンマに目を背けた!!

ドラマ主体の映画に、突然出てくるとてつもない暴力!!

目を閉じても、まぶたの裏に浮かび上がる、あのシーン!!


ガクガクブルブル・・・(((( ;°Д°))))

ちなみに、ニコラス医師は架空の人物だそうです。
そりゃそうだな、こんなヤツほんまにいたら、国際的に袋ダタキだな。

丁寧な作りの伝記映画が好きで、なおかつグロテスク描写に耐性があるならオススメ!!
って、そんな需要あるのか!?


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