彼女のながす涙は美しくも哀れだった。
かたくなまでの決意と、それに反する力のなさに。
それは恐怖によるものなのか、または個人のもつ資質ゆえなのかはわからない。だが結果として弟も自分自身をも護れなかったのだ。
「あんたは今のままでいけると思ってんのか?」
唐突に俺が投げかけた質問に頭を振る。
「で、お前はどうしたいんや?」
今度のは弟に向けて吐き出した。
俺と視線をあわすまいと顔を伏せたままだ。
まあええ、俺には関わりのない話や。ダンマリを決め込む姉弟にこのまま付き合うほど他人には親切じゃないしな。
「関係の無い俺たちは帰ってええんやんな?」
焦れた俺が西脇さんに吐き捨てるように告げた。それを遮るように和志が大声で俺を止めた。
「そんなん言うなんて俺のまーちゃんちゃうわ!!」
「いっつも俺のこと助けてくれるやんか!」
あまりのアホなセリフに拍子抜けや・・・。
ほんまめでたい頭してるわ。俺ごと巻き込むつもりなんか?
しかも・・・
「俺にどないして欲しいんや、和志?」
きっとなんにも考えてない和志の顔を、俺は諦め顔で振り向いた。
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