相変わらず騒々しい男だ。奴と会話する度に《何故こんな男と縁を切れずに続いているのか》が不思議でたまらない。
やり場のない指先がしらずカウンターの上でコツコツと小さな音を奏でてしまう。
その指先に硬質な質感が当たる。
「お待たせしました」
耳に心地良い優しさを滲ませる声音の主へと笑顔を返す。
「白倉君がいるからこの店は潰れないでやってけてるんだな」
そう言う俺の言葉に少しだけ困った顔で首を振って静かに笑った。
「マスターが素敵な方だからですよ」
そんな陳腐な台詞も嫌味無く素直な言葉として響かせるのは、紛れもなく白倉君だからこそだ。
「何年目だっけ?」
馴れた手付きでグラスを磨いていた顔を上げ、チラリと和志を視た。
「この店で働かせて頂いた期間でしたら3年と少しですが、マスターと知り合って…と言う意味でしたら5年程にはなるかと」
そう答え終えるとまた静かにグラスを磨き始めてしまった。
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