演じる能力を磨く、芦田愛菜さん式読書法! | でびノート☆彡

でびノート☆彡

映画監督/演技講師 小林でび の「演技」に関するブログです。

 

女優の芦田愛菜さんが無類の読書家で、「活字中毒」を自称していることをご存知でしょうか?

 

ボクは芦田さんのファンなので、インタビューとかを見かけると必ず熟読するのですがw・・・

芦田さんが読書家である理由は、知りたい!という「知識欲」ではなく、本を書いた著者の体験を追体験したい!もしくは登場人物の体験を自分も疑似体験したい!といった「体験欲」なのだそうで。

 

つまり彼女は本の中の他人の体験を、「頭で」情報として取り込むのではなく、「心と身体で」自分ゴトとして疑似体験する・・・という本の読み方をしているのです。

 

ところがこの「他人の体験を自分ゴトとして疑似体験する」って、まさにコレ「他人を演じる」という俳優の仕事の本質そのものだと思うのです。

 

 


芦田さんはインタビューで読書の魅力について聞かれて、こう答えています。

 

「本を広げれば自分のいる世界とは違う世界が広がっていて、その本の世界で生きる登場人物たちが色々考えたり、感じたり、行動したり・・・その体験を読者の私も疑似体験できるところが読書の魅力だと思います」

 

また別のインタビューではこう答えています。

 

「すごく読書が好きで、常に本は読んでいて、そういうのが積み重なって私の土台になっている気はします。本の中では疑似体験というか、自分が主人公になりきって色々できるじゃないですか。だから本の世界を頭の中で思い浮かべながら「もし私だったら…」といろんな妄想するのは好きですね(笑)」

 

本の中では自分が主人公になって色々できる・・・って完全にヴァーチャルな体験として読書を楽しんでいますよねw。しかも毎日・・・これって「他人の人生をヴァーチャルにみずみずしく体験する」という俳優としての訓練を子役時代から毎日繰り返してきたようなものなんじゃないかと思うのですw

 

 

主観的に演じるか、記号的に演じるか。

 

脚本上のシーンや役の人物の心の動きを頭で理解するのは簡単ですが、実際にそれを全身でみずみずしく表現するのは至難の技です。どうしても説明的・記号的になってしまいがちです。

 

俳優の演技がついつい説明的になってしまうのは、その俳優が演じてる役の人物を外から見ているからです。その役の人物の性質を外から見える形でわかりやすく表現しようとすると、どうしても説明的・記号的な表現になってしまう。

 

これを避けるには「頭で」役の人物の特徴を理解するのをやめて、「心と身体で」役の人物の感覚を把握することが必要です。

それはつまり役の人物の生活を疑似体験することで、そこには説明も記号も入って来ようがなくなるわけです。

 

芦田愛菜さんの芝居っていつも主観的に演じられているんです。

それは子役時代からずっとそうで・・・子役って現場で「わんぱく」とか「秀才」とか記号的な芝居を求められることが多く、で、そういう演技をする子役さんが多いのですが・・・芦田さんは『マルモのおきて(2011)』の子役時代から記号的に芝居を演じることはほとんどなく、まるで愛菜ちゃん自身がその体験を本当にしているかのように芝居をしていたんですね。ここが芦田愛菜さんが他の子役たちから頭ひとつ抜けたところだったんです。

 

 

そして今。たとえばワイモバイルみたいな楽しいCMでも、やはり芦田さんの動作や表情にはバカボンの特徴を説明するような記号が入っていない・・・外面的にバカボンに見えるよう演じているわけではないんですね。
それでいてちゃんとバカボンに見えのは、芦田さんが主観的に「バカボンとしての時間」をちゃんと体験しているからでしょう。

 

それに対してバカボンのパパを演じている出川哲朗さんやその他のキャストの皆さんは、それぞれの漫画「天才バカボン」のキャラの特徴を表す象徴的な動作や表情を「外面的に」演じています。だからちょっと無理があるんですよねw。彼らの表情はキャラっぽいキメ顔でフリーズしてしまっているし、動作は「シェー」とか「レレレのレー」とか決め動作をループしているのです。

 

が・・・芦田さん演じるバカボンの表情は一瞬もフリーズせず、一つの感情にとどまることなくイキイキと揺れ動き続けています。動作も漫画のバカボンっぽい記号的な動作を繰り返すのではなく、その時その時の状況状況に合わせてイキイキと反応して・・・ずば抜けて魅力的です。
 

 

そんなわけで自称「活字中毒」でヘビー級の読書家である芦田愛菜さんは、その主観的な読書体験を毎日毎日繰り返す中で、俳優として大切な「他人の人生をヴァーチャルに体験する」という芝居のスキルも同時に磨かれてきたのでしょう。

芦田さんの芝居のあのみずみずしくディテール溢れる表情の変化や、全身で状況に反応する生々しさは、ようするに読書体験の延長線上にあるのかもしれません。

 

俳優のみなさん!

頭で考えて演じるのをやめてみましょう。そして脚本上の人物になってシーンを「体験」してみましょう。

 

そうすれば芦田さんのように心も身体もみずみずしく反応して、超魅力的な芝居が生まれるかもしれないですよ。

 

小林でび <でびノート☆彡>

 

↓関連記事↓