DVDで邦画のバイオレンス映画を観たんです。
若い監督の作品で、脚本がホントに素晴らしく書けていた! 人間の描写が2010年代型のリアルなんですよ。状況の変化や相対する人間が誰かによって、登場人物たちの人間性がコロコロ変わるんです(笑)。最高だなあ。
だって我々が今住んでる世界ってそうじゃないですか。人物の内面的には何らかの一貫性があるのかもしれないけど、外から見る限りではこっちで偉そうにしていた人がこっちではペコペコしてる。家では子供の頭を撫でてる優しそうなお父さんが職場では部下を地獄のように締め上げていたり、でもじつは自分に自信が無くて夜眠れてなかったり・・・撮影したらそこには全く一貫性のない行動が映っているはずですよ。
そういう対人関係の過剰なストレスの中で生きてるのが我々2010年代のリアルな現代人なわけで。つまりそういう脚本が2010年代型のリアルな脚本のあり方だと思うし、そういう風に演じることがひとつのリアルな演技法だと思うんですよ。
ところがこの映画、今回残念だったのは一部のメインキャストがそう演じてくれてなかったことですね。
この脚本上の人物たちはどんなに強いヤツも不安を抱えていて、だから周囲の人間が自分をどう評価してるか常に気にしているはずなんですね。だから常に周囲を強烈に観察しまくっていて「いける!」というタイミングでグイッと行く。で雰囲気見て「お?コレさらにいけんじゃないの?」と思ったら即座にさらにグイグイッと行く(笑)。
こういう類のパワーゲームが演技の基本ラインだと思うんだけど、この俳優は目線が泳いじゃって周囲を全然観察できてないんですよ。だから行動も台詞もイマイチ効かない。あの脚本ならもっと笑えるはずだったし、もっと恐ろしくなるはずだったのになあ・・・。
ではこの俳優は「周囲の観察」をせずにいったい何を演じていたのか? 一人芝居です。ずっと「自分のキャラを悪そうに見せる外面的工夫」と「自分のキャラの内面的気持ち」を演じていたんですよ。
いや・・・でもこれって80〜90年代の演技アプローチとしては正解で、80〜90年代の脚本にはマッチしたかもしれない・・・ただ今回の作品とマッチしてなかったんです。
つまり「脚本を読み込んで、作品の求める演技法で演じましょう」ということです。
80~90年代の方式で書かれた脚本と、テン年代の方式で書かれた脚本は、人物の描かれ方が全然違ってるんですよ、たくさん映画見るとそれは歴然です。
そして、どんな脚本上のどんな人物でも演じられるオールマイティな演技法なんかたぶん無いんです。だから作品ごとに試行錯誤が必要になるんです。
ポール・バーホーベン監督の『エル ELLE(2016)』は、このテン年代の演技方式で見事に演じられた映画のうちの一つなのですが、主演のイザベル・ユペールは「この女性がどのように演じるべきかは女性である私が一番分かっているから」と言って撮影中、自分の演技に関してはバーホーベン監督にも口を出させなかったらしいです(笑)。そんなのもアリです。だって結果、あのように超リアルで魅力的な現代女性がスクリーン上に出現したんだから。
イザベル・ユペールが最高の演技をして、バーホーベン監督はそれを見事な手腕で撮影した。これぞコンビネーションです。
そう、監督が偉いとか俳優が偉いとかじゃなくて、映画が一番大切なんです。映画のために監督も俳優も等しく奉仕すべきなんですよ。
なので俳優は脚本を読み込んで、その人物と人間関係を理解して、自分が何を演じることに集中すべきなのかを見極めることが大切です。ゴルフで状況状況に最適なクラブを見極めてそれを振る!みたいなものですね。
「キャラクターを外面的に演じるべきなのか?」
「感情の爆発を内面的に演じるべきなのか?」
「それともただそこに存在していればいいのか?」
「対人ストレスを演じるべきなのか?」
そして俳優にとって何より忘れちゃいけない「どこで自分の魅力が輝かせることができるか」・・・これですね。
・・・以上のような内容を詳しく実践する演技ワークショップを6月9日(土)に開催します。
あ、突然ここから告知になってスミマセン(笑)
今回のワークショップのテーマは「感情?キャラ?コミュニケーション?」
「演技の歴史」の座学1時間 + 実技3時間 = 計4時間
映画の脚本も脚本によって人物描写がいろんな方式でされています。60~70年代の感情を中心とした描き方、80~90年代のキャラクターを中心とした描き方、そしてテン年代の対人ストレス(コミュニケーション)を中心とした描き方・・・現在の日本はこれらが入り乱れて存在しているわけですが、当然それを俳優が演じる演じ方も違ってくるわけです。
そこらへんを1時間の座学で整理整頓して理解して、残り3時間でテン年代の方式に取り組んでもらう4時間です。
結局自分が何を演じるべきか、何は演じる必要ないのかをちゃんと自覚している俳優さんは強いんですよ。だってそれが表現ってもんじゃないですか。「いま、我々が演じるべき演技」に取り組んでみましょう。
【日時】6月9日(土)18時から22時。
【場所】東京都内某所。
【参加費】3000円。
参加希望&問い合わせのメールは bananavspeach@gmail.com まで。
最近、スクールとか個人レッスンとか、呼ばれてやる演技ワークショップばかりだったので、ひさびさの自分主催&参加者公墓のWS。いろんな表現者の方の演技を見られると嬉しいなあと思ってます。
一緒に演技についてあーだこーだ試行錯誤しましょう!
小林でび





