前山明日香
大森様のお話を聞き、世界銀行の掲げる「貧困のない世界」の実現に、本当に大切なのは私たち一人一人の行動なのだと感じた。私自身が世界銀行についてリサーチを行った中では、そのようなことを考えていなかった。
例えば大森様がミレニアム開発目標の説明をされたときにも、それを感じた。ミレニアム開発目標は、その項目の文言を決めたりしたのは世界銀行や国際連合などの国際機関である。しかし、それを合意したのは、189カ国・147元首である。そこが大切なのではないか。つまり、国際機関が一方的に押し付けたのではないところに意義があるのだ。国際機関が提言したとしても、それを実現するのはひとつひとつの国々、そしてそこに住む人々である。また、2015年までに「貧困に苦しむ人々」の数を半減させるなどの8つの目標があるが、2015年を迎えた後はどうするのかという質問に、大森様は、このような話を始めたこと自体が重要なことだとおっしゃっていた。確かに、具体的にこのような期限・数字を決め、世界に貧困について考えるよう訴えかけたことは大きい。具体的なものであれば、このような世界の現実も、人々に受け止められやすい。
そして、大森様によれば、日本でのMDGsについての広報活動では、まず知ってもらうべきことはMDGsについてではなく、このような貧困の現実があることだ。そう、現実を知ることから始まるのだ。私は今まで、この「目標」という枠に捕らわれすぎていた。確かに「目標」達成も大切なことであるし、もちろん世界銀行もその達成を願って活動しているだろう。しかし、もっと大切なことは、「目標」そのものではなく、この世界の現実を知ることなのだと思った。そして、知って終わるのではなく、そこから自分で何ができるのか考えなければならない。
大森様のお話の中に、今後の50年間で、何も対策が講じられなければ食糧生産が人口増加に追いつけなくなり、二酸化炭素排出量は現在の3倍になる、というものがあった。食糧生産は、今、世界中で足りていないわけではない。にもかかわらず、なぜ飢餓という問題が起こっているのか。食糧はどこへ行ったのか。そう、私たち先進国側の人間が余分に購入し、どんどん捨てているのだ。だから、この現実を知り、行動しなければならないのは先進国側の人間、私たちである。
国際機関が行っていることなど、一般の人にとっては遠い存在であるかもしれない。途上国のことなどを考えなくても、日本で生きていくことはできる。しかし、自分が生きていられる理由を考えた時、日本という国だけで説明することは不可能である。世界中の人が支えてくれているから、自分という存在が成り立っている。世界の現状に目を向けることが大切なのだ。
世界銀行、MDGsの役割は、何か政策を講じて国家、機関などを動かすだけではなかったのだと感じた。これらには、世界中の人ひとりひとりに、世界について考えるきっかけを与える役割も持っていたのだ。