Philosophy of Development ~第9章 ユーラシアの内陸諸国をめぐって | 由川 稔のブログ

由川 稔のブログ

モンゴル、ロシア、カザフスタン等と付き合って、早30年以上経ちました。軽い付き合いも重い付き合いもありました。いったい何をして来たのか…という思いもあります。「近代化」、「自由化」、「開発」、「資源」等をめぐる国際的な問題について、考えています。由川稔

9章 ユーラシアの内陸諸国をめぐって

 

1.21世紀のシルクロード

 

(2)関係各国の事情

 

a. モンゴル国

 

またご無沙汰してしまいました。忙しくしてはおりましたが、記事を拝見して、勇気づけられたり、学んだりの日々で…ありがとうございます。

 

月曜日に、モンゴルに来ました。夜間でマイナス20度前後。風が無い中で常識的な格好をしていれば、適度に身が引き締まる程度の寒さです。

 

モンゴル航空の機内食、メインの部分(照り焼きチキンのようなもの)は東京で仕込んだそうです。日本との間で直行便が飛び始めた頃に比べれば、随分良くなりました。後で果物(リンゴ・パイナップル・メロンのスライス)も出まして。

 

 

 

こちらは今朝のウランバートルです。前に来た時に比べて多少薄らいだ印象もありましたが、やはり石炭の煙の臭いはきつく、煤煙が層を成して市を覆っているのも見て取れます。

 

 

 

遠くに発電所(石炭火力)の煙突が見えます。


夕食は、牛肉、羊肉、羊の脂尾の鍋にしました。ビールは最近当地で生産されるようになったというヴァイスビアを試しました。ドイツの技術が入ったおかげで、ミュンヘンの味を思い出させてくれます。社会主義時代のモンゴルのビールは、独特という言葉には収まりきらないものでした。それを考えれば、普通に美味しく飲めるビールの選択肢が増え、普通にうれしく感じます。

 

 

ブログを書けないでいた間、内外で凄惨な事件が相次ぎました。特にISIL、いわゆる「イスラム国」なる集団の件は、モンゴル人にもかなりの心理的衝撃を与えたようです。友人とも会食、どちらからともなく、話を始めていました。集団の生成の背景や経緯については、何を主とし何を従とするかも諸説あるようでよくわかりませんけれども、いずれにせよ人間(向う側もこちら側も)が、少なくともここ数百年の歴史で流した血と涙からでも学んで変容していくことは困難なのか、対症療法的な思考を超える重い問いを、改めて突き付けられたような気がします。

 

昨日は、モンゴル国立科学技術大学附属高等専門学校を訪問してきました。日本の高専との交流を活発に進めています。財政面、組織面を中心に、まだまだ問題山積ですが、努力し続けるしかありません。

モンゴル国は、基礎的でかつ実用的な技術を身に付けた人の層が極めて薄いという弱点を抱えています。これは、社会主義時代にはソ連と影響と庇護下にあって、そういった分野の需要と供給はソ連や東欧諸国に全面的に依存していたこと、また体制転換後は、急速な市場経済化の中で、「民だけでなく官も(!)取りあえず今日明日で金になる事をする」という短期短期の近視眼的行動様式を選んでしまったことも、背景として挙げられます。

良いことづくめとは言えなくとも、或る程度はしっかり実用的科学技術の研究開発に国としても取り組んできた日本に範を取って、何とか仕切り直しをしたいのだというモンゴル側の意欲を、強く感じました。

 

以下は前回に引き続き、統計資料です。これらに関する記事はまた後日改めて書きます。

 

産業セクター別貸出残高の推移

 

産業セクター別不良債権率の推移

 出所:http://www.mongolbank.mn/liststatistic.aspx?did=2_2 より、各年データを筆者加工。

日本では金融機関の自己査定における債務者区分として、「要注意先」、「破綻懸念先」、「実質破綻先」、「破綻先」があり、モンゴル側データでも、それに類似する債権区分がなされている。すなわち「Хугацаа хэтэрсэн зээл」、「Хэвийн бус зээл」、「Эргэлзээтэй зээл」、「Муу зээл」であるが、ここでは便宜上、定義の対応関係は省き、不良度が最も高い「Муу зээл」を「不良債権」としておいた。