実行行為1 | 藤原の田中のブログ

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 さて、たまには刑法の答案練習もしてみたいと思います。

 東京高判平成13年2月20日です。あの、ベランダの手すりに上がった妻を、部屋に連れ戻してから殺そうとした夫が、妻の足をつかまえようとしたところ、妻が足をすべらせて、マンションの9階から転落して、死んでしまったという事例です。夫に殺人既遂罪(刑法199条。以下、「刑法」略)が成り立つか、それとも、その前に妻を切りつけて怪我をさせたことによる傷害罪(204条)が成り立つのみで、マンションから落ちたのは妻が勝手に誤って落ちただけだとするかです。

 事案の概要は、もう有名だから、いちいち説明する必要はないですよね。

 でも、簡単にやっておくと・・・

 妻にののしられた夫は、激昂して、妻と娘を殺そうとして自分も死のうと思って、台所から包丁を取ってくると、妻をいきなり倒して馬乗りになって、妻の左胸をめった刺しにしました。

 急所ははずれたものの妻は大怪我をし、しかも、腕で必死に払いのけようとしたので、両腕に防御創ができて血だらけになりました。

 しかし、子どもが泣き出したので、そちらのほうに気をとられて妻からからだを離した瞬間、妻が隙をみて逃げ出しました。玄関のほうに行った妻を連れ戻し、妻の浮気のことを問いただしました。妻が認めたので、やっぱりそうだったかと思い、このまま放置して死なせようと思い、包丁を台所に置きにいきました。

 すると、また妻が逃げ出しました。今度は、ベランダのほうに出ていって、隣の部屋のほうに行こうとしました。隣には、仲良しの奥さんがいました。

 夫は、(また逃げ出したか!)と思い、今度は、部屋に連れ戻して、全員でガス中毒死することを思いつき、妻のほうへ行きました。

 妻は、ベランダの手すりにのぼって、何とか隣の部屋に行こうとしています。夫は、妻の足をつかまえようとしました。必死にふりはらっているうちに、妻はバランスを崩し、9階から一挙に地面のほうに落ちてゆきました。そして、病院に運ばれましたが、まもなく死亡が確認されました。

 だいたいこんな事案だったと思います。

 夫をX、妻をYとしたいと思います。