シーシェパードへ | 藤原の田中のブログ

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 今日は、日本の調査捕鯨船が、公海で、シーシェパードの体当たりを受けて、乗組員数人が怪我をして、そばでその調査捕鯨船を見守る任務についていた日本の政府船舶が、何ができるかを考えてみたいと思います。

 まず国連海洋法条約は、公海自由の原則を定めています。(87条)

 その一方で、公海においては、船舶の船籍の所在国である「旗国」が、当該船舶に対して、排他的な管轄権を行使するという「旗国主義」を認めることによって、公海での秩序維持を達成しようとしています。(92条1項)

 よって、公海上の外国船舶で行われた犯罪行為について、旗国以外の国が、公海で、執行管轄権を行使することは、国際法によって個別に認められない限り、原則として認められないことになります。

 そこで本件では、日本の政府船舶によるD国(シーシェパードの船籍ってどこでしたっけ? オランダでしたっけ? とりあえず、D国としておきますね)籍のシーシェパードに対する停船命令や乗船検査など、公海上での執行管轄権の行使が、旗国主義の例外として国際法上許容されるかどうかが問題になります。(つまり、公海上でD国籍のシーシェパードに対して執行管轄権を行使できるのは、D国公船だけだが、例外的に日本の政府船舶も執行管轄権を行使できることがあるのかが問題になる)

 たとえ公海上の行為であっても、国際法上の管轄権の根拠が存在すれば、日本の立法管轄権が及ぶことは、ありえる。(つまり、公海上であっても、日本人に怪我をさせれば、日本の刑法3条の2が及び、日本人に怪我をさせた外国人に日本の傷害罪を適用することはできる。これはいわゆる「受動的属人主義」で、これは国際的にも認められている。だから、「受動的属人主義」を国際法上の根拠として、日本の立法管轄権を公海上の外国船舶に乗る者にも及ぼすことができる)

 しかし、だからといって、日本の執行管轄権を及ぼすことが当然に許されるわけではない。(つまり、いくら日本の刑法の適用があるからといって、その外国船を停止させて、船長やその他を逮捕できるわけではない)

 上述の通り、公海を航行する船舶に対して執行管轄権を行使できるのは原則としてその旗国だけであり、海洋法条約において旗国主義の例外として旗国以外の国による執行管轄権の行使が許されるのは、1.海賊(105条)、2.麻薬等の不正取引(108条)、無許可放送(109条)に限られている。またこれらに加えて、奴隷取引や無国籍船の場合は、公海上で臨検も行うことができる。(110条1項)

 本件との関係で問題となるのは、これらのうち海賊であり、当該シーシェパードの行為がこれに該当するか否かが検討されなければならない。

 海賊とは、1.私有の船舶・航空機の乗組員・旅客によって行われ、2.公海またはいずれの国の管轄権にも属さない場所にある他の船舶・航空機やその内にある人・財産を対象として、3.私的目的のために行われる行為のうち、4.すべての不法な暴力行為、抑留または略奪行為をいいます。(101条)

 これに基づいて、本件を検討すると、D国のシーシェパードが公海上の日本の民間船舶に対して行なった行為について、1.調査捕鯨に抗議することが私的な目的に当たり、2.体当たりをして当該日本の船舶の乗組員数名に怪我をさせたことや、航行妨害、軽微な体当たりを繰り返すことが、不法な暴力行為等に当たるのであれば、海賊行為と認められることもありうると考えられます。

 当該シーシェパードの行為が海賊行為に該当するのであれば、日本による公海での執行管轄権の行使が、普遍主義(普遍主義:管轄権の基礎の一つで、海賊など万国共通の利益を害する犯罪に関しては、たとえ属地的、属人的結びつきがなくても、あらゆる国々に管轄権行使を認めるというもの。簡単にいえば、海賊に公海で出くわしたら、どこの国でもその海賊に執行管轄権を行使していい。それは、海賊は人類の敵だからである)に基づいて国際法上認められることになると考えられます。(105条、110条)

 また、1.公海でのシーシェパードによる犯罪行為を取り締まる責任は、その旗国であるD国が本来負っているにもかかわらず(94条)、2.D国はそのような旗国としての義務の履行を怠っているのであるから、3.被害船の旗国である日本は、D国に対して当該シーシェパードを適正に規制することを要請でき、4.それでも改善されないのであれば、対抗措置として、執行管轄権を公海上で行使すると主張することも考えられる。(民法でいえば、債権者代位権もしくはその転用事例みたいですね)

 しかし、このような主張に関しては、「旗国主義」という公海秩序の前提を損なうおそれがあるため、慎重に判断する必要があります。

(以上)


 結局、海賊とみなして、普遍主義を管轄権の基礎として、執行管轄権を行使するのがよいということになりますかね。すなわち、停船させて、臨検することです。逮捕もできるのかな。逮捕する権限(海上保安官?)があれば、シーシェパード乗組員を逮捕することもできるのかな。あとで調べてみますね。

 とりあえず、ここで終わり。