悪魔と悪魔と悪魔と悪魔 | black kairitu

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デス師匠のweb連載Season3。毎月1日更新。コラム、レビュー、レポート、詩、ショートショート、日記など。増刊号、号外、休刊あり。

 映画を観に行こう。友人のアスリート芸人I垣キャップの発案で、友人たちと共にシネコンへ向かった。目当ての映画はこれだ。
 『ROOKIES‐卒業‐』
 もう一度言おう。
 『ROOKIES‐卒業‐』
 ♪2人寄り添って歩いて 永久の愛を形にして
 私がやると、完全にRIDER CHIPSになる。ちなみに、RIDER CHIPSのCRぱちんこ仮面ライダー MAX EDITIONメインテーマ「Ride a Firstway」は、ミスタードーナツ「エンジェルエッグ」及びサントリー「ラッキーサイダー」の両CMソングと並ぶ、今年の「思わず何だこの曲は!?と思う秀逸CMソング」である。 
 話を戻そう。
 『ROOKIES‐卒業‐』である。確かに、私は運が良ければ『クローズZEROⅡ』のカラス・エキストラには紛れることができたとしても、『ROOKIES』に入ることは決してできないのである。そのことを察してか、キンニク教官A田氏が、いざチケットを購入する段になって、こう言った。
 「デスさんが『ROOKIES』って、違うでしょ」
 「ん、まあまあ、それはね」と、思わず返す私。さらに、続けて。
 「俺は、『天使と悪魔』を観るけどね」
 自由にボケていった結果。私だけ『天使と悪魔』を観ることになったのだ。5人で行ったのに、1人だけ違うのは観ないだろう。しかしながら、面白集団の中では「窮地」が、「笑い」に転換されていくのである。私は、躊躇なく『天使と悪魔』上映室の扉を開けた。ただ、私は趣味・趣向柄、世界史を好む性質である。世界史ウンチクおじさんなのである。したがって、ロン・ハワード監督の前作『ダ・ヴィンチ・コード』も興味深く観させていただいたし、 『天使と悪魔』も密かに楽しみにしてはいたのである。そして、実際に本作を楽しんだ。だが、本作は前作と違い、ヨーロッパ中世史の用語は鳴りを潜め、反物質だの反粒子だの物理学用語が飛び出した後は、純然たるアクション・サスペンスがスクリーンを跋扈する作品だ。純粋に楽しめたが、もう少し幻想教団「イルミナティ」を深く掘り下げてほしかったかなという思いもある。そうなってくると、前作と同じように一般的には難解な用語が頻出する状態になってしまう危険性がある。そこで、そういった専門的な用語が一目で分かる良書を紹介しよう。オカルトを「わかりやすく、みやすい」という観点からアプローチした唯一のバイブル「羽仁礼『図解近代魔術』(新紀元社)」を。
 それでは、久々の「『〇〇』を読む」シリーズ。今回は、「羽仁礼『図解近代魔術』(新紀元社)」を分析していきたい。ただし、全ての項目を分析していこうと思うと長編になってしまいそうなので、今回は触りだけ。今回は、我がデス一門が定期的に行っているネタ見せイベント「G-1グランプリ」で、私が愛弟子・柿薔薇皇帝と組んだときのコンビ名にした「物言う人頭」を取り上げたい。ネタの練習をしながら、2人笑いあったものさ。
 「物言う人頭(Speaking Heads)」についての記述・説明は、本書の第4章「魔術の道具」の項目にあるのだが、いきなりこうくる。
 「西洋中世の魔術師の中には、今でいうロボットのような存在を作り出したと伝えられる人物が何人かいる。」
 え? ん? どういうことですか?
 まず、中世にロボットというのもおかしいし、科学者ではなく魔術師が作り出すというのもどうなのか。そして、驚くべきことに、「何人かいる」だ。そういった人物がいったい何人いるのだ。記述は続く。
 「西洋の魔術において人造人間と呼べそうなものとして、ユダヤ伝説のゴーレムや、パラケルス(1493?~1541)のホムンクルスが知られているが、他にも、言葉をしゃべる金属製の人頭を作ったという人物の伝説も伝わっている。歴史上最初に物いう人頭を作ったのが、ローマ教皇シルヴュステル2世(945?~1003)とされている。シルヴュステル2世は、本名をジェルベール・ド・オーリヤックといい、彼が教皇になれたのは悪魔と契約を結んでそのカを得たからだともいわれている。」
 まず、最初につっこまなければならないのは。誰?ということだ。ローマ教皇シルヴュステル2世という人物は、山川出版社の世界史用語集にも、世界史図録にも世界史研究にも出てこないのである。あなたは一体、誰なんだ。スルヴュステル2世よ。そして、1世はいるのか。3世は、4世は、16世はいるのか。気になって仕方ないのだ。
 記述はさらに、こう続く。
 「(スルヴュステル2世は)物をしゃべる人頭を作った以外にも、ドラゴンをペットにしていたなどの伝説が残る。」
 おい!こまかいテクニカルつっこみは、この際排除して、もう「おい!」である。全力の「Oi!パンク」ならぬ、「Oi!つっこみ」である。
 ドラゴンって、病気になったら動物病院に行くの? 
 「ドラゴンをペットにしていたなどの伝説」の「など」には何が入るのかなー!? 
 様々な質問を投げかけたい。
 物言う人頭を作った人物は、本書によるともう2人いる。また本文を引用しよう。
 「もう1人がロジャー・ベーコン(1220頃~1292?)である。ベーコンは火薬の製造法を記述した最初のヨーロッパ人で、飛行機械や動力船も提案、実験科学の先駆者と見なされる。その一方で占星術や錬金術にも関心を有していた。その学識の深さからドクター・ミラビリス(奇跡博士)と呼ばれ、数々の発明を行ったが、その1つに喋るブロンズの頭があった。」
 ロジャー・ベーコンといえば、世界史の教科書にも必ず出てくる人物であるが、「喋るブロンズの頭」という記述は一切出てこない。是非、大学入試に出してほしい情報である。
 最後の1人に関する記述はこうだ。
 「(ロジャー・ベーコンと)ほぼ同時代のドミニコ会修道士、アルベルトゥス・マグヌス(1200?~1280)こと、アルベルトフォン・ポルシェタットにも同様の伝説が伝わっている。彼もその学識の深さで知られた人物で、彼が作ったのは、一説には全身のそろった真鍮製の人形であったともいわれている。いずれにせよ彼は30年かけてこの人造人間を作成した。
 さあ、ここにきて突如、大問題が生じた。このアルベルトゥス・マグヌスは、世界史小辞典(山川出版社)に出てくるのだ。しかも、同辞典には「アリストテレス哲学とキリスト教神学の融合をなしとげ、弟子のトマス・アクィナスによるスコラ哲学完成への道をひらいた」とある。
 トマス・アクィナスといえば、『神学大全』を著述し、キリスト教とアリストテレス哲学、信仰と理性、超自然と自然の調和を試み、普遍論争を終わらせたという意味で、世界史的にも最重要人物の1人であり、スコラ学の完成者なのである。そんな人物の師匠が、30年もかけて真鍮製の人形を作っていていいのか。
 最後に、『図解近代魔術』のアルベルトゥス・マグヌスの記述の続きを記して今月のコラムを締めくくろうと思う。『図解近代魔術』にあるアルベルトゥス・マグヌスに関する最後の一文がこれだ。
 「アルベルトゥス・マグヌスは30年かけてこの人造人間を作成したが、彼の弟子の1人で、後に偉大な神学者となるトマス・アクィナス(1225~1274年)がこれを叩き壊したという。」
 
 ハレルヤ! アーメン!!

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