(ショートストーリ)





真冬なのに、少しだけ暖かいお昼過ぎ。

僕と彼女は、ゆっくりとしたカフェにいた。

ほんのり甘いブレンドコーヒーが僕たちをさらに暖かくしてくれた。

何気ない会話の中に、彼女は「他人」という言葉を口にした。

「結局、私たちは他人同士なんだよね」

多分そう言った。

「えっ?」

僕は思わず聞き返してしまった。

その後の彼女の話は覚えていないけど、考えてみると他人同士なのだ。

冷たい感じがするけど、彼女の客観的な発言は僕を悩ませた。

ハンマーで頭を殴られた感じがした。

「好き」とか「愛」とか、そんなものは証明できない「何か」なのだ。

「他人」の対になる言葉は「本人」か?

確かに「他人」は「本人」にはなれない。

「他人」という言葉で二人の距離が遠ざかってしまったような気がした。

幸せである時は気づかない「距離」のとり方。






僕たちは近づき過ぎてしまったのかもしれない。

「他人」という言葉が「適切な距離」を生んでくれた。

まだ、ほんのり温かいブレンドコーヒーを飲み干して店を出た。

少し冷たくなった外の空気を感じながら、二人は手をつないだ。