丼の上の紅玉 -丸好酒場(八広)秋の訪れ | 丁稚烏龍帳

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today,detch stood live on the earth,too…

すっかりと風が軽くなりましたね。

日中はまだ暑さが残りますが、日陰に入るとひんやり…いい季節になりました。でも、これが続くのは、ほんの一息の間だけなんだろうなぁ。軽い風が徐々に冷たさを増して、日一日と葉が色づきを増して行く…ある日、喫茶店で文庫本を読みながら、通りにふと目をやると、道行く人が襟を立てながら歩いている。そんな深まり行く秋という感じでなく、最近は暑さが長引いた一、二週間後にはもう木枯らしかってな感じですものね。四季が二季になりそうで、折々の風情が楽しめなくなったら悲しいなぁと思います。


ということで、秋の風情を感じた一日の出来事をば。

先週の金曜日、ご近所u先生からご機嫌のご連絡。週6日終電まで戦い続けるこの男、何とか仕事の段取りを付けて秋の連休に遅めの夏休みをぶつけて飲み歩く計画というのは聞いておりまして、何事かとメールを開くと、「丸に出かけたけど、仕込み中のいくらを見せてもらったよ」とのご連絡。

なんと、もうそんな時期になりましたか…、八広の丸好酒場と言えば、お父さんの出身地北海道の折々の素材をいただけることでも有名なお店。なかでもえぞ鹿と並んで名が高いのが、秋のこの時期にしかいただけない、いくら。うらやましいけど土曜はお仕事を絡めた宴席で、行けそうもありませんと涙を飲んでお返事しました。


翌土曜日、江東区あたりで飲みふけった帰り道、またまたご近所からのご連絡。

前日にその話を聞いて行かないわけがないご近所のこと、美味しそうな画像を添えてメールが参りましたが、なんとごはんが切れて、一時メニューを仕舞われたとのこと。「明日の一番なら残っているかもよ」とありがたいお達しが。これは天啓ですねぇ。ちょうど、しばらく顔出していないから、今週あたりどう?とm蔵さんとお話ししていたところ、乗り込むしかないでしょう~。


丁稚飲酒帳-暖簾の奥の家 ということで、三連休中日の日曜日、はやる心を抑えつつ、八広駅に下りたったのは開店15分前。m蔵さんと二人話しながら駅前を歩きながら、早足で行く人がいたら同じ狙いだろうなぁなんて思ってましたら、いましたよ、それも二人も知り合いが(^^; どちらも前を向いて、僕らには気づいておられないようですが、あのたくましい後ろ姿は自由人さんだな…と遅れてもう一人抜いていった方は、m蔵さんが気づいた渋谷の髭さんですな。んー、いくら狙いか(笑)。

お二人の早足に気も急くというものですが、はやる心を抑えつつ、ゆっくり歩いて曳舟川通りの交差点を渡ると、髭さんは左から回られますか。あたしらは自由人さんに遅れて右回りでお店を目指します。お店の前にたどり着くと人だかり、まだシャッターが閉まっていますね。人数を数えてみると、僕らで13人とホッと一安心。


正面シャッター前でお話していた新宿さん、Sさん、髭さんに続いて、やっと追いつけた自由人さんにこんにちはとご挨拶。「昨日、○○(←u先生の本名)君と二毛作で会ったよ」、「その連絡で来たんですよ」なんて会話をしながら、あと一人で満席だねぇなんて話をしている側から自転車で乗りつけたのは、右目を腫らした紀世彦さん。開店時間一分前、これで見事満席となりました。
丁稚飲酒帳-夏の飲み物 ほどなく脇側からシャッターが開きまして、続いて正面も…「なんだい、開店前からご苦労さんだね」とキョウコさん。お邪魔しますと、今日はテレビ前、クーラー前の特等席。席に着くやおかみさんがジロリ…「メールが行きましたね?」…はぃぃ!「お昼ごはん食べないで来たの?」、当然、いつも丸で昼の時はお昼食べませんけど、今日は特に食べに来ましたんでね。おかみさんもニヤリと。さすがご近所、しっかり根回ししていてくれた様子です、ありがたやありがたや。


誰が注文することもなく、自動的に端から順にカウンターにボールが並んでいく様子は、開店早々の壮観。これも見ていて気持ちいいですね。まあ、待ちきれなかった紀世彦さんが、昨日食べられなかったレバ刺しを早速注文されてましたが、日曜用に途中でオーダーストップしたというレバがまたいい。脂が回って白みがかった感じがいかにもうまそうですね。しかも、魔法のタレが今日は作りたてのようで、中の固形成分が入れ物の上にまとまっているのをかき混ぜて…ああ、食欲そそる君!

でもまぁ、まずはボールで乾杯して、乾きを潤しましょう。ん~、今日はここ最近にしちゃ蒸しましたからねぇ、するりと入る新丸好ボールの爽快なること。確かに以前に比べると、甘味が少なくなった気がしますが、その分爽やかさは増しているように思いますよ。スイスイ入っちゃいそうなところを抑制しつつ。

と、おかみさんの視線が僕の頭を通り越して入り口に、キョーコさんと二人顔を合わせて「さんちゃんだから、入れてあげて」と先客一同お尻をちょいとずつずらしまして、椅子がもう一つ出てくるのがこちらの温かいところ。これで15席、完全なる満卓状態でございます。おいでになられた、さんちゃんさんには、ボールといつものニンニク酒で乾杯をば。


丁稚飲酒帳-年に一度の風物詩 さて、ひとしきりのサーブが終わったところで、おかみさん。「食べますか?」、もちろん二つ返事で「はいぃ!」。今日のお楽しみ、いくら丼でございます。

さすがに昨日、ごはんが足りなくなったということで、大盛りの注文は自粛いたしました(^^; だって皆さん食べたそうな様子だったんですもの。事実、自由人さんはあたしと同じロットでのご注文。髭さんはあとで食べるので、まずは鮭カマなんて注文されてましたもんね。


炊き立ての白いごはんに続けて、冷蔵庫から取り出されましたのは、いくらがぎっしり詰まった瓶状のプラ容器。結構あるんじゃん…と席から声がかかれば、「親戚に分ける分がドンドン減ってくんだよね」と苦笑いのキョーコさん。あらら、おすそ分けでございましたか、これはますますもってありがたく頂戴せねば。

丁稚飲酒帳-白砂紅玉 白いごはんの上に、海苔を散らして、その上にお玉ですくわれた紅い宝石がドバーッと、蛍光灯に照らされて光輝くその様子は本物のルビーにも劣らない輝き。いや、生命を宿す宝石ですもの、これ以上ない綺麗さですよね。ずしりと重い丼の重みに食欲がいや増します。

 さて「早速いただきまーす」ってぇと、口の中でプリプリッとはじける粒粒の食感が舌に心地よく、次の瞬間口の中にいくらの旨味が広がります。この塩気と旨味を受け止めるごはんがまた、丸好のごはんだぜよ、これでうまくないわけありません(断言)!ああ、思い返して涎が出ちゃいましたよ。


丁稚飲酒帳-白くて苦いやつ いただいているうちに、おかみさんが冷蔵庫から取り出したのは、白ゴーヤの糠漬け。これがまた、塩気の効いた苦味が口の中をリセットしてくれますねぇ。「ちょいと味見を」なんて手をだすさんちゃんさんとの掛け合いがまた面白い。


さてさて、お隣のご夫婦が頼んだ秋みょうがに、僕らも乗っかりましょう。これがまた、ぷっくりと身の膨れたいかにも上物。触らせていただきましたが、手に取っただけでずしりと重く、身の張りが違います。今年の夏は異常な暑さのせいもあってか、やたら茗荷が高くて、しかもスーパーに並ぶのはもっとほっそりしたもの。「香りが違うんだよ」とおかみさん。


丁稚飲酒帳-香り立つ秋 このずしりとした茗荷を一人前にたっぷり二個半は使うでしょうか。小鉢一杯になった茗荷から立ち上る清清しい香り。たっぷりかつお節の乗ったところに、チラリとしょう油を掛けまわしていただけば、口に入れたとたんにこの香りが口の中をさっぱりと漱いでくれる、なんとも最高の箸休めですねぇ。

そういえば去年もいくら丼いただいたよなぁ…なんて思って、検索してみましたら、去年も茗荷といくら丼の組み合わせでいただいてましたね。だって美味しいんだもーん。

ただ、続けて鏡下のsさんが頼んだしなべきゅうり(山形漬物の一つで、塩漬けしたきゅうりをしょう油ベースの出汁で漬け込んだものだそうです)、一本半のきゅうりの上にこれまたたっぷり一個分の茗荷が乗って、うーん、あっちの方が二倍味が楽しめたか…って、貧乏性も大衆酒場では勉強ですよね。次、見かけたらたのもうっと。



丁稚飲酒帳-イリコが効いてます  はす金平は、ピリッと味付けられたごぼう、ハス、ニンジンにイリコがたっぷり。これはカルシウムも取れるし、魚の旨味が野菜にも回って、ピリ辛の味付けでボールが進むわいな。さんちゃんと紀世彦さんなんて、「今度、他の店に行ったら、煮干しが入ると美味しいって教えてやろう」なんて盛り上がってますよ。


 痺れた舌を休めるポテトに、トドメはしし唐味噌で涙を浮かべながらの一時間半は、あっと言う間に過ぎちゃうんだなぁ。

 と、そろそろ皆さんも〆の時間帯でしょうか、m蔵さんの向こうのご夫婦もいくら丼を食べられてますよ。「どうですか?」とおかみさん。当然、「美味しいです」とご夫婦。いつも食べたいいくら丼ですが、おかみさん曰くこの時期のいくらが一番おいしいんだそうです。「もう少しすると、皮が固くなっちゃうから駄目なのよ」と、んー、まさに風物詩ですねぇ。

 気づけば過ぎていた一年ぶりのいくら丼、こうして節目を振り返ることのできる季節感って、やっぱり大切だと思います。また来年も、予約でひとつ(^0^)/ 

 それもこれも、今日ここに導いてくれたご近所の気遣いと、おかみさん方に感謝ですね。去り際、自由人さんに声をかけていただいて、あちらでも是非ご一緒しましょう♪…と一言二言の交流がまたありがたく。皆さんにお先に失礼しますのご挨拶に、笑顔で応えてくれる嬉しさひとつ。


やっぱりここは、家なんだなぁ…家があるから自分があるんだという、実に当たり前のことを改めて感じられた気がします。自分にとっての揺るがせに出来ない線、それをどこかに持たないといけないんだろうなということを、最近漠と考えています。そんな不安定に揺れ続ける心の寄る辺が、確かにあるんだということを感じられた気がした昼下がりの一時でした。難しいことはともかくも、とにかくうまかった(^-^)v どうもご馳走さまでした!


丸好酒場 月・火定休 いくら丼は9/18,19のみ提供(平成22年)