このまちにも、別れを告げる日が来ようとしている。
今月末をもって、現在の住まいの契約が切れるのだ。
ワンルームのアパート、六畳一間ロフト付。僕にとって、ここが始めての一人
暮らしだった。
立石駅から歩いて十分、見上げればご近所の家、踏み切りの音を子守唄に
眠る日々。ここで起き、ここで眠り、そしてここから飲みに行った。
二年間の生活の間に、いろいろな変化があった。いろいろな出逢いがあった。
なかでもやはり親分との出逢い、それが様々な出来事のはじまりだったように思
います。
シェフにナンパされたその出逢いがきっかけだとすれば、熊さんを交えての二回目
の宇の邂逅こそがはじまり、まーじゃん夫妻と親交を深め、F中将に下町の名店を
紹介いただき、とかげ氏と乗り越し…あ、先日八広から実家に帰ろうと思って、久々
に西馬込行きしました(爆)、叔父貴にその筋の洗礼を浴び、千住の名店を知り、
マスターの人柄に引き寄せられる居酒屋サロンでの交流を楽しみ。名古屋の友に
は誕生日を祝っていただき、北海道の友を送った蕎麦の味。中央線の巨匠の広い
心とやさしい微笑みを、ひいては横浜方面の二大先輩方とのステーキ、そして埼玉
方面。どうした地元千葉、最近Mr.Beerと三時までビールやってないぞ…もうでき
ないかもしんない(笑)。
人生流転、本当にこの二年間にこれまでの生活を遥かに上回る出逢い、様々出来
事が訪れて…意識していないけれど、たくさんの思い出がつまったこの部屋、きっと
引き払う時には、それなりの感慨があることだろう。
願わくは次の引越し先でも、いい思い出を積み重ねて行きたい。
そんな日々のなか、最近のお気に入りが、うちから渋江公園を挟んで徒歩5分ほどの
まだ数回の訪問に過ぎないが、おかみさんと娘さん、二人で切り盛りするお店の
暖かい雰囲気が好きになった。立石、四ツ木、このあたりの店のすべてがそうなのだ
ろうが、ご近所の方々の憩の場。楽しそうな赤ら顔がいくつも並んでいる。
店の構造は、やや傾いた四角形構造の一階、カウンターが五席ほどに四人掛けの
小上がりが1つ。すきまに四人ほどかけられる椅子席の小テーブルが置かれている。
はじめてご近所と探訪した時は一階がいっぱいで、急な階段をあがった二階に案内
された。二階は落ち着ける雰囲気の畳敷き。がっとあぐらをかいて、少し濃い目のハ
イボールを口にする。効くね~、家飲みというのはこういうものなのだろう。落ち着いて、
そのまま寝てしまいそうだ…某高砂亭のように。
秀逸なのは雰囲気だけではない、壁に並んだ短冊のメニュー、和惣菜、洋風おつまみ、
揚げ物、焼き物、ご飯もの、居酒屋メニューはこの折衷感がたまらない。
今日は、チーズオムレツをお願いします。それとメンチカツ。なにより下町価格なのが
うれしい。このメンチが200円台とは。ガッと箸を割りいれれば滴る肉汁…肉と玉ねぎの
オムレツもふわりと焼き上げられ、なかに忍んだチーズとケチャップの風味が絶妙だ。
うまい。んー、濃い目のボールがするすると減っていく。
ここが二軒目のご近所の進みはゆるりと、人それぞれに楽しむとしよう。
おかわりをお願いします。
それと、〆の一品はやはりこれですね。焼き鳥丼。
千葉の某店は言わずもがな、鳥丼狂いのでっち坊主としては食べておかねばならない
一品と、はじめて来たときにお願いして、その日にはまってしまいました。
なによりも肉質がきめ細かい、お肉がパサパサでないのだ。当たり前…だと思いますよ
ね、そうでもないお店もあるのよ。そしてたれが僕好みのほどよい甘味。うなぎのタレご
はん(うな丼のうなぎ抜きってヤツね)好きなワタクシとしては、ごはんにかけて食べるに
はやはりこのくらいにしっかりした味付けでないとねと。そして、ゆるんだ口を引き締める
紅生姜、たっぷりと盛られたもみ海苔の香りも香ばしく。ん~、幸せ。
越してもまた来よう、そんな思いを胸に抱きながら、今日も暖簾をくぐり、五分の家路を
たどるのでした。