お残り終えて、八広駅から散歩道。目指すは今日からスタートの丸好酒場。
「あけましておめでとうございます」とのれんをくぐると、「あら、アンタ」と信じられないものを
見たような顔のおかみさん。いや、そら年末に来て、年始に即ですけどね、と思ったらその
ことじゃないようで。
「あんたのとこに、さっきまで友達いたんだよ」なに?ああ、u先生か…とピンと来ます。
まあ、戸塚と佐倉に暮らしていた頃からの丸好きですからね。彼も年末に来てるし、年始も
かかさないでしょう。
ということで、ハイボールをいただきます。お隣のおなじみさんと、今年もよろしくと御挨拶。
年始から爽やかな味わいですね。
おかみさんとおなじみさんが会話をされています。「今年の目標は、元気で仕事すること
だよ」と、おなじみさんが「お父さんとおかみさん、いくつ離れてるの?」「五歳だよ、今年で
73になるかね」って、おかみさん78かよ、若いねーと僕も含めて、笑いあうおなじみさん。
その年で去年は娘さんとマッターホルンだもんね。標高3000mから歩いて下山して、今
も爪先が青いんですって。ほんと、元気が一番です。
さて、あてはポテトをいただきましょうかね。
ソースを掛け回してと、ここのポテトサラダはやっぱりソースがよく合うんですよね。
んー、マッシュされた芋の甘味が、ソースと絡んでボールが進むねぇ。あれ、新メニュー
豚焼サラダってありますか、おかみさん?「あれ、今日は切れたよ(笑)」。
んー、じゃどんなものか教えて。サラダに焼肉が乗ってるの?どうもポテトサラダに焼豚
を乗せたもののようです。u先生から、旨かったよーとメールが入ったのは、この直後で
した。時既に遅し。
それでは、定番なすピーマンをいただきましょう。このピリ辛の味噌が、ふわふわの茄子
とよくあうの。これもボールが進むのよねと二杯目お願いします。
時間も時間、午後十時に近づいて、だんだんと席を立つお客さんが増えてきます。
向こうの席のお二人もお帰りですか。二人で7000円、一人3000円超ですか、こりゃ
すごいねぇ…って、五時から飲んではるんですか、すごいなあ。
お、おなじみさん、最後に豚汁ですか…あー、これで最後か、ほんとは狙ってたんだけど。
ほんとにあつあつ、温まりそうですね。なるほど、これで温まってお帰りになるんですね。
お気をつけて!
それでは、おかみさん最後に炒め物、野菜炒めに今日は寒いから、わがまま言って恐縮
だけど玉子入れてもらえます?いいよーと、豚バラ、野菜と手早く中華鍋に入れて、炒め
はじめます。そして、最後に玉子を割りいれてお皿に。たっぷりのお酢を回して、最後に
決め手の味噌。この味噌がいいんです!
一口、口に入れて、うん、やっぱり玉子と味噌はあうね~!これはいいよとホクホクして
いると左手の三人組から声がかかります。「それ、美味しそうですね」「おいしいですよ」
お兄さん、かなり出来上がり気味ですねぇ、楽しそう。同じものを頼んでいます。
「これが最後だよ」とおかみさん。
三人に野菜炒めが出たところで、タイミングをはかっておかみさんにおねだり。
「今日もごはん、炊いてある?」「あるよー」。やっぱり味噌にはごはんですよね、小さい
のお願いしま~す。おー、今年もごはん美味しいねぇ。まずはごはんだけで一口。
続いてお味噌を乗せてごはんを…うまっ、ボールをぐびっ!最高ッ!!
おやおや、お隣さんもお会計のようですね。おかみさんが目を丸くされています。
「信じられないよ、あんたらこの店はじまって以来だよ」…ん、なにが?
ほら見てごらんと、見せていただいたのは箸の束、すごい量ですね20本くらい?
「そんなんじゃないよ、47杯だよ」なにぃぃぃぃっ!?一人15杯以上ですかー。
そりゃ驚くのも無理ないわ。このお店で18,000円って、しかし…無事に帰ってね。
さて、三人が帰られて、はじめてかなしまいの客になりました。
三人分の皿をあげて、カウンターを拭いていると、お父さんも上から顔を出して
くれます。あけましておめでとうございますの御挨拶ができて嬉しいな。
はてさて、残ったボールを空けて、僕もお勘定をお願いします。今日は三品三杯で
1800円でした。隣の1/10か(笑)…改めて、このお店の安さを感じます。
お二人にどうぞ、今年もよろしくお願いします、と御挨拶をして扉を閉じました。
この小さなお店の中に、おやじさんとおかみさんが作り上げてきた世界、そこで
暮らす人たち、酒場はやっぱり店のたたずまいと店の人、そしてお客さんの三位
一体でできているんだなぁ…そんなことを考えながら、四つ木橋を渡ります。
川面を渡る風が冷たくて…でも心は温かくて、嬉しい年始となりました。