北野武監督作品。


ソナチネ」観た。

BBC(イギリス放送局)が選ぶ、

「21世紀に残したい世界の映画100本」にも選ばれている名作。


$お客様が楽しみに待っているお荷物です。-ソナチネ
ソナチネ(1993) 監督:北野武


いままで観た映画の中でもトップクラスに入るレベルだった。



天才、北野武。



美し過ぎる映画。




世界で「タケシブルー」と絶賛された、

全体的に青を基調とした画面は本当に美しい。



この物語全体を覆う真っ青な暴力をより際立たせている。





ーーーー感想ーーーー





ヤクザ組織の抗争のため沖縄に送られたたけし演じる村川一行。



早々になんの意味も無い抗争だということが明らかになり、

たけし一行は捨て駒にされたと気付き始める。



そんな中でも一行は次々に殺されてゆき、

ひたすらに人は減っていく。



どこで誰が死ぬか、一瞬先の予想もつかない。



一瞬で訪れるの死。

余韻なんてものは何もない。



圧倒的な暴力は一瞬だけでその先に訪れるのは死のみだ。



そして偶然殺されずに残った男たちは沖縄の辺境で、

ただただ死から隠れる日々を過ごすことになるのだ。



たけし演じる村川は殺しに何の躊躇もない。

本人は、それは死ぬのが怖いからだという。



「あんまり死ぬの怖がると、死にたくなっちゃうんだよ。」と。



生と死の狭間、狂気の満ちている中でずっと生きてきた男。



そんな男が沖縄の僻地で最後に見いだしたもの。



それは"笑い"であった。



彼の恐怖や思考を"笑い"が浄化していく。

あらゆる感情を圧倒する"笑い"。

ただ死から逃れるだけの日々も笑いによって、



儚くも美しいものになる。



死の狂気をも覆い隠すものはただひとつ、


笑い”なのだ。


その笑いの末に彼が見つけたものは何だったのだろうか。


狂気、哀愁、そして笑い。これらは表裏一体で切り離せない存在だ。



日本映画を語る上で必ず見るべき一本。

海外に誇れる傑作。


ソナチネ 予告編




ブルーレイが出たら絶対に買おう。
8月は結構小説読んだよ。

「ジェノサイド」
「今夜すべてのバーで」
「1973年のピンホール」
「羊をめぐる冒険」
「ゴーストバスターズ -冒険小説-」
「異邦人」
「東京奇譚集」
「限りなく透明に近いブルー」
「ロング・グッドバイ」

それぞれレビューするのは大変。


まあ一言ずつぐらいでレビューします。

$お客様が楽しみに待っているお荷物です。-ジェノサイド
高野和明 / ジェノサイド

完璧なリサーチ。最高のSFには気も遠くなるようなリサーチが必要で、専門家が観ても有無を言わせないような理論立てが必要だ。このため日本ではこのようなタイプのSF小説家というのがあまりいない。理論で有無をいわせない「仮想科学」を組み立てるような作家である。海外ではマイクル・クライトンなどがその代表だ。しかし、この高野和明という人物はそれを日本でやってのけた。マイクル・クライトンの再来。さらに「研究者が抱くべき感動」をおおきなテーマにしており、物語としても最後まで飽きさせない。今後の作品にも期待。



お客様が楽しみに待っているお荷物です。-今夜
中島らも / 今夜すべてのバーで

酔っぱらいの本なのにページを繰る手がとまらないのは作者のエネルギーによるものか。この小説のハイライトは明らかに医者と主人公の殴り合いのシーンだろう。これはなんだろう。この小説は。レビューが非常に難しい。何度も読むべきだ。現時点でいえることは、どのように生きていくか、それを考えるエネルギーに満ちあふれている物語であるということだ。友人に借りていたのだが、これは購入して保存しておく必要がありますね。



お客様が楽しみに待っているお荷物です。-1973
村上春樹 / 1973年のピンホール

村上春樹のこのタイプの小説は読み終わった後にどうこう考えるものではない。何も起こらない。ただただ奇妙な日常を過ごしていくだけだ。でも読ませる力がある。一文一文、想像力をかき立てられる。そして、どこでやめてもいい。最後まで読まなくても読んだ部分までで物語になるのだ。



お客様が楽しみに待っているお荷物です。-羊
村上春樹 / 羊をめぐる冒険

上記と同じく友人の「鼠」と主人公「僕」のシリーズの三作目。前作と比べて読みやすい。「羊をみつける」といういままでにはなかったストーリーというものが存在しているからだ。三部作の中ではもっともこの話が好きだ。第一章から鳥肌がたつ。生きることについての問いが物語の裏に潜んでいるのもこの小説が前2部作よりも傑出している証拠だ。



お客様が楽しみに待っているお荷物です。-ゴースト
高橋源一郎 / ゴーストバスターズ -冒険小説-

「元祖 こんなんありなん」と僕たちが個人的に呼んでいる作家、高橋源一郎の真髄。もう最初からめちゃくちゃ。小説の概念を破壊する。物語は縦横無尽に飛び回る。最初はアメリカで強盗のブッチとキッドがゴースト退治に向かう。そしてその旅の途中に出会うのは松尾芭蕉で、弟子の曽良を引き連れていた。芭蕉はハーレーダビットソンに乗り、イージーライダーよろしく銃撃されて事故を起こし死んだかと思った瞬間、気付いたら「俳句鉄道888」に乗っていた。そして隣の席に座ったドンキホーテの娘と会話を始める。一方、東京では超人マン・タカハシが空を飛んでいた。マン・タカハシは何を隠そう著者・高橋源一郎本人である。そして本人の回想へ、小説家の愚痴を言い始めた、と思ったら小学校時代の回想へ、小学校時代の女の子の名前を出して、こいつはこういう性格でウザかったとか喋りだす。もうめちゃくちゃやー。なんなのこの小説は!!




お客様が楽しみに待っているお荷物です。-異邦人
カミュ / 異邦人

前回のブログを参照してください。
今まで読んだ小説の中で一番凄かった小説。




お客様が楽しみに待っているお荷物です。-奇譚
村上春樹 / 東京奇譚集

村上春樹の中でも特に読みやすい小説だと思う。東京で起こった不可思議な話を短編形式でお送り。「すべて実話です」と書いてあるので、最初の方はありえなくもないと思えるようなないようなのだが、最終話まで読むと実話じゃないことは明らかだ。そして最終話のクオリティが最も高い。村上春樹入門編の小説です。




お客様が楽しみに待っているお荷物です。-ロング
レイモンド・チャンドラー / ロング・グッドバイ

村上春樹が最も好きな小説は、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」と、フィッツジェラルドの「グレート・ギャッツビー」、そしてこのレイモンド・チャンドラーの「ロング・グッドバイ」である。いやー、とても素晴らしい作品でした。まさに傑作と言えますね。ハードボイルド作品で面白い作品はたくさんあるんだけど、このロンググッドバイは「友情」というのを一貫してテーマにおいているため、より味わい深い作品に仕上がっている。とても丁寧に、緻密に積み重ねられた人物描写がなせる技だ。




お客様が楽しみに待っているお荷物です。-限りなく
村上龍 / 限りなく透明に近いブルー

村上龍の小説を初めて読んだ。今まで敬遠していた訳ではないんだけどね。面白いことは面白かったし、こういう退廃感あふれる作品は嫌いじゃない。でもこういう作品は今まで映画で散々見てきたし、新しい感じがなかったのか、あまり心が動かなかったのが正直な感想だ。


以上です。

なんか村上春樹関係の小説が多いですね。



次はドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」を読むつもり。

読めるかなー。積み本にならないことを祈ります。





おい!




日常生活に漠然とした悩みを抱えている人。

理不尽な出来事にいらだっている人。

とにかく人間関係や生きることについて考えている人。





いるだろ!

いないか?





いるはずだよ、僕が思う限りは。

あるいは誰でもこの種の悩みは抱えているだろう。


そんな人に僕はこれをお勧めする。

まだ読んだことのない人に限るが。


$お客様が楽しみに待っているお荷物です。-異邦人
カミュ / 異邦人



あらすじはWikipediaを読んでくれれば良い。

アルジェリアのアルジェに暮らす、主人公ムルソーのもとに、彼の母の死を知らせる電報が養老院から届く。母の葬式に参加したムルソーは涙を流すどころか、特に感情を示さなかった。彼は葬式に参加した後の休みの期間中、遊びに出かけたまたま出会った旧知の女性と情事にふけるなど、普段と変わらない生活を送る。ある晩、友人レエモンのトラブルに巻き込まれ、アラブ人を射殺してしまう。ムルソーは逮捕され、裁判にかけられることになった。裁判では人間味のかけらもない冷酷な人間であると証言される。彼の母親が死んでからの普段と変わらない行動は無関心・無感情と人々から取られたのだ。彼は裁判自体にも関心を示さず、裁判の最後で殺人の動機を問われ「太陽が眩しかったから」と答えた。判決では死刑を宣告され、ムルソーはそれすら関心を示さず、上訴もしなかったため、死刑が確定した。留置場に司祭が訪れ、ムルソーに悔い改めるように諭すが、彼は司祭を追い出す。留置場の中でムルソーは、死刑の瞬間に人々から罵声を浴びせられることを人生最後の希望にする。


主人公のムルソーは何も母親の死を悲しまなかった訳ではない。

母親が養老院で生きる希望を見つけ死んでいったことを確信していたのだ。

そのため涙を流すことは安らかに死んだ母親を侮辱することになったのだ。




それだけは覚えていて欲しい。

ムルソーは倫理観の欠如していない普通の人間だ。

ただ反キリストであっただけで、

冷酷で卑劣であるとされ、

死刑になったのだ。

その中でも彼は最後まで楽しんでいた。

楽しむことを忘れなかった。

いつでもこの世に生まれたことの幸運さを楽しんでいたのだ。



この小説は限りなくバッドエンドだが、

全くそれを感じさせない。

最後まで希望に満ちあふれている。

読み終わった後は清々しさが残るほどだ。




とにかく僕の解釈はこうだった。




この本を読んだとしても何も感じないかもしれない。

つまらないかもしれない。

あるいは何か感じるかもしれない。


僕みたいにいままでの悩みがふっとぶかもしれない。




それは分からない。

でも何も感じなくても、

有名な古典なので知ってたらとりあえず格好をつけられる。




小難しそうと敬遠するかもしれない。




でもたった127ページ。

読もうと思えば2、3時間程度で読めてしまう。

文章もぜんぜん難しくない。

ただの小説だ。





ただの”素晴らしい”小説だ。




ぜひ読んで欲しい。

この小説だけは多くの人に読んで欲しい。

傑作は傑作たるゆえんがある。




不条理をものともしない、

人生を楽しむためのすべての要素が詰まっている。