おい!
日常生活に漠然とした悩みを抱えている人。
理不尽な出来事にいらだっている人。
とにかく人間関係や生きることについて考えている人。
いるだろ!
いないか?
いるはずだよ、僕が思う限りは。
あるいは誰でもこの種の悩みは抱えているだろう。
そんな人に僕はこれをお勧めする。
まだ読んだことのない人に限るが。
カミュ / 異邦人
あらすじはWikipediaを読んでくれれば良い。
アルジェリアのアルジェに暮らす、主人公ムルソーのもとに、彼の母の死を知らせる電報が養老院から届く。母の葬式に参加したムルソーは涙を流すどころか、特に感情を示さなかった。彼は葬式に参加した後の休みの期間中、遊びに出かけたまたま出会った旧知の女性と情事にふけるなど、普段と変わらない生活を送る。ある晩、友人レエモンのトラブルに巻き込まれ、アラブ人を射殺してしまう。ムルソーは逮捕され、裁判にかけられることになった。裁判では人間味のかけらもない冷酷な人間であると証言される。彼の母親が死んでからの普段と変わらない行動は無関心・無感情と人々から取られたのだ。彼は裁判自体にも関心を示さず、裁判の最後で殺人の動機を問われ「太陽が眩しかったから」と答えた。判決では死刑を宣告され、ムルソーはそれすら関心を示さず、上訴もしなかったため、死刑が確定した。留置場に司祭が訪れ、ムルソーに悔い改めるように諭すが、彼は司祭を追い出す。留置場の中でムルソーは、死刑の瞬間に人々から罵声を浴びせられることを人生最後の希望にする。
主人公のムルソーは何も母親の死を悲しまなかった訳ではない。
母親が養老院で生きる希望を見つけ死んでいったことを確信していたのだ。
そのため涙を流すことは安らかに死んだ母親を侮辱することになったのだ。
それだけは覚えていて欲しい。
ムルソーは倫理観の欠如していない普通の人間だ。
ただ反キリストであっただけで、
冷酷で卑劣であるとされ、
死刑になったのだ。
その中でも彼は最後まで楽しんでいた。
楽しむことを忘れなかった。
いつでもこの世に生まれたことの幸運さを楽しんでいたのだ。
この小説は限りなくバッドエンドだが、
全くそれを感じさせない。
最後まで希望に満ちあふれている。
読み終わった後は清々しさが残るほどだ。
とにかく僕の解釈はこうだった。
この本を読んだとしても何も感じないかもしれない。
つまらないかもしれない。
あるいは何か感じるかもしれない。
僕みたいにいままでの悩みがふっとぶかもしれない。
それは分からない。
でも何も感じなくても、
有名な古典なので知ってたらとりあえず格好をつけられる。
小難しそうと敬遠するかもしれない。
でもたった127ページ。
読もうと思えば2、3時間程度で読めてしまう。
文章もぜんぜん難しくない。
ただの小説だ。
ただの”素晴らしい”小説だ。
ぜひ読んで欲しい。
この小説だけは多くの人に読んで欲しい。
傑作は傑作たるゆえんがある。
不条理をものともしない、
人生を楽しむためのすべての要素が詰まっている。