インダストリアル・デザインとは、もののフォルム(形態)を考えることがデザインと思われています。西ドイツの工業デザイナー、トーマス・マクドナルドは「生産される製品の形態上の特質を決定することを目的とした活動である。」と述べています。形態上の特質とは、外観を意味するものではなく、生産者と使用者の両方から見て、一つのものを統一あるものに変える構造的機能関係を指しています。

 

 外観のことをスタイルと言いますが、表面を魅力的なものにしたり構造上の欠陥を覆い隠すものであり、必然性のない偶然的なものであるとも言えます。つまり、機能的技術、工学的技術、経済的要素が統合されたものでなければならないのです。

 

世界で最初にインダストリアルデザインの事務所を開いたノーマン・ベル・ゲッデスがデザインした流線型の自動車。ゲッデスは舞台美術を手がけていたが、醜い機械を流行の形で覆い隠すことが人気を博した。

 

 デザインにおける視覚的な形の決定は、内部的なもの、すなわち材料、構造、機能、経済性と関係しています。外形は人間と常に接触するものですが、それは機能や構造を優先し、時には美しさを犠牲にしても仕方がないのです。

 

 19 世紀末の米国シカゴで活躍した建築家ルイス・サリヴァンは「形は機能を表す。」と言っています。20  世紀初頭のデザイン運動では装飾を排除した「機能主義」が生まれるのですが、過度な「機能主義」は人間から遊離したため批判されました。

1899 サリヴァンが設計したシュレンガーマイヤー百貨店

 

 形は人間に親しまれるものであり、精神をも高揚させるべきです。デザインをにとって大事なことは「材料」、「機能」、「構造」が人間に奉仕すべきものであるという考えです。サリヴァンの下で製図工として働き、独立後は住宅建築を始め商業建築などの分野で活躍した建築家フランク・ロイド・ライトは「機能は形に従い、人間が自然に指示する。」と述べています。

 

 ライトは人と自然と建築の融合を目指し、建物の外観だけでなく内部空間にも自然を取り入れようとしました。また「住宅は実用的で美しく、生活を豊かにしてくれるものであると同時に、人格の形成に貢献するもの」と考え、屋内の家具、什器、食器、カーペット、タペストリー、ステンドグラスなど住む人に必要な生活空間のすべてをデザインしたのです。

 

ライトが1936年に設計した「落水荘」

 

 ライトは日本で「帝国ホテル旧館」をデザインしたことでも知られていますが、彼の思想は池袋の「自由学園 明日間」や解体後愛知県犬山市の「明治村」に移築された「帝国ホテル」を見るとよくわかります。

 

ライト設計の旧帝国ホテル。外壁には栃木県の大谷石が使用された。

 人類の最も偉大な発明は文字であると言われている。紀元前  3,000  年頃、メソポタミア文明の礎を築いたシュメール人は楔(くさび)型文字を発明しました。丸い棒と鋭角三角形の棒を使いおまの新聞くらいの大きさの粘土板の上に印をつけていく記号のような文字が書かれていきました・書くというよりは、押し付けて窪ませていく作業です。

 

 

 楔形文字は近隣の民族に広まりアッカド語やフリル語、ヒッタイト語など他の言語にも展開されていきました。同じ頃、エジプトでは紙(Paper ペーパー)の源であるパピルスが発明され、植物の汁から作ったインクで文字を記すようにな理ました。この文字は表意文字ヒエログリフと呼ばれ、同時に音を表すことができたそうです。

 

 

 ヒエログリフから文字の形を借り一つの文字が音を表わす言語システムとして発明されたのがアルファベットです。やがてギリシア文字、ローマ字を生み出し、のちに英語、ドイツ語、フランス語などヨーロッパの言語体系が作られていきました。

 

 

 1439  年ドイツのヨハネス•グーテンベルグは金属製の活字を使った印刷機を発明しました。活字は鉛などの合金から作られた文字のことで溶かして再生可能なことから、その名前がつけられました。それまでの木版と違い金属を使った版は大量印刷を可能に、聖書だけでなく文学など多くの書籍が作られるようになります。ちなみ、この菌活字を使った印刷機は16世紀半ばには1時間に240枚の印刷を可能しました。

 

 

 活字の発明は単なる印刷技術の向上によるコミュミュケーションの拡大だけでなく、文字のデザインすなわちタイポグラフィTypography を生み出すことになります。活版印刷に使われたローマン書体は、古代ローマの碑文で使われた文字を真似たもので、名前もこれに由来しています。16 世紀になると、フランスのクロード•ギャラモンが 、ローマン書体をベースに美しいギャラモンと名づけた書体をデザインし印刷業者に販売しました。書体(フォント)をデザインすることをタイポグラフィと言いますが、彼は世界で最初のグラフィックデザイナーであると言われています。またギャラモンの洗練された書体は多くのデザイナーに影響を与え、ギャラモンの名前を冠したフォントが多く生まれました。

 美しいと感じる対象は個体差が大きく、時代、地域、社会、集団、環境などによっても大きく異なります。例えば、整然と並ぶものに美を感じる人もいれば、ランダムに並ぶ様子に美を感じる人います。左右対称を美しいと感じる人もいれば、非対称に美を感じる人もいます。

 

龍安寺石庭

 

 無調を心地よいと感じるか否かなども美意識に関連している場合がるといえます。また、現代の建築においても、コンクリートの打ち放し建築の美についても近年問いかけられたテーマです。

 

 西欧では華美な装飾や人工的な美をその美意識の中心においていますが、日本人の美意識はむしろ自然と対立せず寺社、日本庭園に見られるように自然と一体となり、死を敵対するものではなく「侘(わび)、寂(さび)」に見るように朽ち果てゆくもの、枯れるものへの素朴な同調などが根底にあると言われています。

 

 室町時代の能役者の世阿弥は、著書「風姿花伝」の中で「秘すれば花」(注)と表現していますが、日本人には全体的調和を重んじ、自己主張を抑制し隠蔽(いんぺい)することにより受け手の想像力を刺激し、日本人特有の奥深さに美を見つけてきたと言われています。

 

 

(注)「秘すれば花なり、秘せずは花なるべからず」は、秘密にする(隠す)からこそ花(感動)になり、秘密にしないと花になはらない(感動を与えない)という意味です。演劇である「能」は、動きを極限まで単純化し、無表情な面をつけ物狂、執心、怨霊などの題目で演じられる日本の伝統演劇で、観るものの想像力によって演じられる世界が広がっていきます。