人類の最も偉大な発明は文字であると言われている。紀元前  3,000  年頃、メソポタミア文明の礎を築いたシュメール人は楔(くさび)型文字を発明しました。丸い棒と鋭角三角形の棒を使いおまの新聞くらいの大きさの粘土板の上に印をつけていく記号のような文字が書かれていきました・書くというよりは、押し付けて窪ませていく作業です。

 

 

 楔形文字は近隣の民族に広まりアッカド語やフリル語、ヒッタイト語など他の言語にも展開されていきました。同じ頃、エジプトでは紙(Paper ペーパー)の源であるパピルスが発明され、植物の汁から作ったインクで文字を記すようにな理ました。この文字は表意文字ヒエログリフと呼ばれ、同時に音を表すことができたそうです。

 

 

 ヒエログリフから文字の形を借り一つの文字が音を表わす言語システムとして発明されたのがアルファベットです。やがてギリシア文字、ローマ字を生み出し、のちに英語、ドイツ語、フランス語などヨーロッパの言語体系が作られていきました。

 

 

 1439  年ドイツのヨハネス•グーテンベルグは金属製の活字を使った印刷機を発明しました。活字は鉛などの合金から作られた文字のことで溶かして再生可能なことから、その名前がつけられました。それまでの木版と違い金属を使った版は大量印刷を可能に、聖書だけでなく文学など多くの書籍が作られるようになります。ちなみ、この菌活字を使った印刷機は16世紀半ばには1時間に240枚の印刷を可能しました。

 

 

 活字の発明は単なる印刷技術の向上によるコミュミュケーションの拡大だけでなく、文字のデザインすなわちタイポグラフィTypography を生み出すことになります。活版印刷に使われたローマン書体は、古代ローマの碑文で使われた文字を真似たもので、名前もこれに由来しています。16 世紀になると、フランスのクロード•ギャラモンが 、ローマン書体をベースに美しいギャラモンと名づけた書体をデザインし印刷業者に販売しました。書体(フォント)をデザインすることをタイポグラフィと言いますが、彼は世界で最初のグラフィックデザイナーであると言われています。またギャラモンの洗練された書体は多くのデザイナーに影響を与え、ギャラモンの名前を冠したフォントが多く生まれました。

 美しいと感じる対象は個体差が大きく、時代、地域、社会、集団、環境などによっても大きく異なります。例えば、整然と並ぶものに美を感じる人もいれば、ランダムに並ぶ様子に美を感じる人います。左右対称を美しいと感じる人もいれば、非対称に美を感じる人もいます。

 

龍安寺石庭

 

 無調を心地よいと感じるか否かなども美意識に関連している場合がるといえます。また、現代の建築においても、コンクリートの打ち放し建築の美についても近年問いかけられたテーマです。

 

 西欧では華美な装飾や人工的な美をその美意識の中心においていますが、日本人の美意識はむしろ自然と対立せず寺社、日本庭園に見られるように自然と一体となり、死を敵対するものではなく「侘(わび)、寂(さび)」に見るように朽ち果てゆくもの、枯れるものへの素朴な同調などが根底にあると言われています。

 

 室町時代の能役者の世阿弥は、著書「風姿花伝」の中で「秘すれば花」(注)と表現していますが、日本人には全体的調和を重んじ、自己主張を抑制し隠蔽(いんぺい)することにより受け手の想像力を刺激し、日本人特有の奥深さに美を見つけてきたと言われています。

 

 

(注)「秘すれば花なり、秘せずは花なるべからず」は、秘密にする(隠す)からこそ花(感動)になり、秘密にしないと花になはらない(感動を与えない)という意味です。演劇である「能」は、動きを極限まで単純化し、無表情な面をつけ物狂、執心、怨霊などの題目で演じられる日本の伝統演劇で、観るものの想像力によって演じられる世界が広がっていきます。

 

 モノの機能を満たすという最終目標の達成に始まったデザインは、モノの姿や形の中に美を意識するようになります。美意識という言葉がありますが、それは人が美しいと感じる心の働きをのことです。

 

 西洋美術の規範である古代ギリシャやローマ美術はデザインの審美性を高め  、15  世紀に始まるルネッサンスから  19  世紀半ばの印象派に至るまでの長い期間、美のあり方の基準となりました。美の基準とは均整(Balance)、調和 (Harmony)、対称(Symmetory)でをさし、これを美の3要素と言っています。

 

 特に古代ギリシアで発明されたパルテノン神殿に用いられた建築のオーダー(様式)は近代に至るまで、西洋の公共建築に多大な影響を与えるとともに、そのモチーフが工業製品にも引用されるなどの影響が見られます。

 

パルテノン神殿 アテネ アクロポリスの丘 紀元前432年頃

イギリスの高級車 ロールスロイス シルバークラウドのフロントグリルに神殿の様式が使われた

 

美の3要素

 

Balance/ バランス

 均衡、釣り合いを意味する言葉です。一般には重量的に左右の重さが釣り合っていることを言いますが、美術や造形では、視覚的なバランスが含まれ、色相、明度、彩度が影響することで大きさの異なるものでも釣り合って見えるものがあります。これが崩れた状態を Unbalance アンバランス(不均衡)と言います。

 

同じ大きさの石でも黒いと重く感じる。

 

Harmony/ ハーモニー

 音楽の3要素であるリズム、メロディ、ハーモニーひとつである和声(和音)は、ふたつ以上の音の調和した響きで、メロディを包み込んで全体的な調和感を形成します。美術や造形では色彩や図形の調和を言います。

「Composition」1923

抽象絵画の父と呼ばれるヴァシリー・カンディンスキーはキャンバスに形態と色彩のハーモニーを生み出した

Compositinnは音楽では作曲、デザインや美術では構成と訳される

 

 

Symmetry/ シンメトリー

 一般には左右相称の意味で使われています。物体もしくは美的対象の構成が中心軸に対して色,形,性質が左右、または上下に同形に配置され,両者が均整,相称な関係にあることを言います。反対にこれらの関係がくずれた状態をアシンメトリー asymmetry(不均衡)と言います。

 

 美術の分野において、この関係が明確に表われているのは建築のデザインで,いかなる時代の様式においても,宗教建築その他の威厳や安定感を必要とする公共建築などはシンメトリーな外観を持ち、逆に個人的な趣味性の強いデザイン優先の小規模の建築や実用本位の建築にはアシンメトリーのものが多く見られます。

 

宇治平等院鳳凰堂 左右対称だけでなく池に映る姿も上下対称

釈迦の死後1200年後に訪れる末世を恐れ、生きている間に極楽浄土の世界を見たいと願った