あたしがバイトしているお店は小さな喫茶店だ。大手の喫茶店ではなく個人で経営しているお店だ。お店の名前は『カフェ・ラネモーゼ』。この地域では有名なのか、お客が入る時は入る。逆に入らない時は全く入らない。そんなお店だ。今日はお客さんは結構入っている方で、あたしはあっち行ったりこっち行ったりと忙しだ。
「お待たせしましたコーヒーです」
「ありがとう」
「すみません。注文いいですか?」
「あっ、少しお待ちください!」
そう言ってあたしはトレイをひじに挟み、伝票を持って、注文の確認をする。注文したコーヒーとケーキを持っていく、そんなことを何回か繰り返していると、時間はあっという間に過ぎていき、いつしかお客さんの数も減り、いつの間にか閉店の時間となっていた。
「お疲れ様、満智子さん」
「あっ、お疲れ様です。吉原さん」
そう声をかけ、吉原さんはあたしの隣の席に座った。吉原さんはあたしと同じでこの店でバイトをしている。たしかあたしより長いから先輩さんになるのかな?あたしより少し小柄なのに、あたしよりテキパキと動く姿は、かわいく見え、すごいと思う。
「今日はいっぱいお客さんが来ましたね」
「そうね、こういう時がたまにあるんだよね。まぁ一年に十回あるかないかだけど・・・」
「そうなんだ・・・」
「そういえば満智子さん、もうすぐで一年だね」
「あっ・・・」
そう言えばそうだ。もうすぐでこの店でバイトを始めて一年になるのか、全然気付かなかった。
「一年記念にはごちそうしてあげる!!」
「本当ですか!?」
「まぁ続けばの話だけどね・・・」
吉原さんはそう言ってるが、このバイトはあたしは結構好きだ。いやなことがなければ続ける自信はある。今日はこんな会話をしながら解散することとなった。あたしの手にはマスターが作ったケーキが入ったケースを持っていた。マスターは物凄いガタイでおっさんみたいな顔をしてるけど、コーヒーやケーキを作らせるとすごいんだなこれが・・・まぁそれはおいといて、あたしはとぼとぼと自分の家まで歩いていると、ふとある人物に目が行った。それはあの人物。バイトへ向かう時に出会ったあの青年だ。青年は同じ場所で、同じように空を眺めていた。もしかしてあれから何時間も空を見ていたのだろうか・・・そう思うとあたしは少し気持ち悪いと感じ、駆け足でその場を去った。そんな感じでその日は過ぎた。今思えばこの時から世界に巻き込まれていたのかもしれない・・・