ある日曜日のこと。
チョットお疲れモードだったので、昼間から蒲団に寝転がってTVを見ていた。
すると、TVに僕が定期的に通うお店が映っているのを見つけた。思わず注意して眺めると、お笑い芸人のアンガールズ田中が、お店の料理についてレポートしていた。
番組は、RCCテレビの『元就。』。
そして、レポートされていたお店は、広島・八丁堀の〔肉のますゐ〕だった。
〔肉のますゐ〕は、戦後間もない頃に横川に開店したという。その後1956年に八丁堀に支店ができ、横川店が閉店した今は、八丁堀の1店舗だけになったとのこと。
〔肉のますゐ〕は、広島市民にとっては馴染み深いお店なので、あえて紹介する必要がないかもしれないが、一応ひととおり説明しておこう。
外観は、いかにも老舗らしいレトロな雰囲気。

精肉店と飲食店が併設されており、飲食店の玄関には、こちらもかなりレトロなショーケースがあり、いつも店内に入る前は見入ってしまう。

玄関から中に入ると、揚げ油の香ばしい匂いが、食欲をそそる。
シャオヘイさんが管理するWEBページ『快食.com』によると、〔肉のますゐ〕では、揚げ油にラード(豚脂)とヘット(牛脂)をブレンドして用いているという。
1階はテーブル席。お客が思い思いに洋食メニューやすき焼きを食べている。
2階に上がるとお座敷があり、くつろいだ雰囲気ですき焼きを頂くことができる。
先日〔肉のますゐ〕ファンの友人たちと共に、2階ですき焼きや洋食メニューを堪能する会を行った。

〔肉のますゐ〕のすき焼きは、割り下が甘辛く味が濃い目なので、ビールやご飯がこれでもかというくらい進む。

濃い味の割り下が旨いので、糸こんにゃくを追加し、たっぷり割り下を染み込ませて食べた。さらにビールが進む。
洋食メニューも注文した。まずは、懐かしい洋食メニューのポークチャプ(ポークチャップではない!)。

かつては洋食屋の花形と呼ばれた王道メニューが、お値打ち価格で頂ける。
そして、〔肉のますゐ〕に来たらこれでしょう!という定番メニューの、サービストンカツ。

ペラペラな薄い豚肉を使っているところが、老舗の雰囲気だ。
老舗の洋食屋のポークカツレツは、元来薄っぺらい豚肉を使い、ヘットでカリっと揚げるのがスタンダードだったのだ。
〔肉のますゐ〕でも、揚げ立てのトンカツはヘットの香り高く、衣がカリっとして、旨い。
最近は洋食屋さんでも揚げ油にヘットを用いているお店は少ないが、昔の洋食屋さんは揚げ油にヘットを用いるお店が多かったという。
〔肉のますゐ〕は、精肉店を併設しており、牛肉を捌いた後に牛脂が発生するので、ヘットを用いるのは朝飯前だろう。
また、『元就。』でもさらっと紹介していたが、「ますゐソース」と呼ばれるこちらのドミグラスソースは、牛タンや丸鶏を煮たブイヨンを用いているという。
明るい茶色なので甘ったるいかと思いきや、意外にそうでもない。滋味深く、飽きの来ない味のソースだ。
〔肉のますゐ〕は、お店の敷居が低いから、老若男女、様々なタイプのお客がそれぞれ酒食を楽しむことができる。そして、様々なお客が発する楽しいざわめきが、居心地の良い空気感を作り出しているのだと思う。
サラリーマンなら、月給日前の懐が乏しい時期の昼飯に、サービストンカツ(ライス付)のお世話になった経験者は多いはずだ。
そんな時の「安くて旨い」は、どんな美食よりも嬉しく、鮮明な記憶として残る。
月給日前のサラリーマンの味方である、「ますゐソース」がたっぷりかかったサービストンカツよ、永遠なれ!
(2012年6月27日執筆。「Web旬遊」初出)