米田大介 皮膚科医 メモ

米田大介 皮膚科医 メモ

北海道 札幌市 皮膚科勤務医 米田大介

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お疲れ様です。

北海道 札幌市 皮膚科 医師 米田大介です。

 

今回はNUDT 15遺伝子多型についてです。

 

令和2年春時点で、皮膚科ではまだそこまで知られておりませんが、2年ほど前にNUDT 15遺伝子多型を調べる検査キット

開発され炎症性腸疾患で保険適応となりました。

その後、現在では自己免疫性肝炎や急性リンパ性白血病、治療抵抗性のリウマチ性疾患

(全身性血管炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発/皮膚筋炎、強皮症、MCTD及び難治性リウマチ性疾患)

などで保険収載されております。

 

免疫抑制剤の一種でアザチオプリンという一般名の薬剤があり、上記疾患に保険適応があります。

他にも皮膚科では自己免疫性水疱症などでも広く使われて使用されています。

しかしながら、日本人を含む東アジア人では、この系統の薬剤を使用した一部の患者において、

早期に重度の白血球減少症や全身脱毛症といった重篤な副作用を生じることが知られていました。

皮膚科ではとくにこの脱毛症について相談されることが多く、アザチオプリン使用中に脱毛が起きて他科から相談された場合、

まずはアザチオプリンを中止していただいておりました。

 

近年、アザチオプリンによる重篤な副作用の発症と、チオプリンの代謝酵素の1つであるNUDT15の遺伝子多型との間に

強い関連があることが発見されました。NUDT 15の遺伝子多型によりアザチオプリン系統の酵素活性が大きく変化するとされ、

特にNUDT15の139番目のアミノ酸がArgからCysに変化する遺伝子多型を持つ場合、

その酵素活性が著しく低下するそうです。

日本リウマチ学会 リウマチ性疾患に対するアザチオプリン使用に関する通知より

 

最下段のCys/Cys組み合わせの方は、副作用が必発でかつ重症発症が多いということになります。

 

上記検査の保険収載により、アザチオプリンを実際に使う前に事前に検査することで、本当に重症な副作用が起こる方を

事前に検知し、代替療法を探すことができるようになりました。

海外でも違う薬剤で、同じように事前に副作用の起こりやすさを感知する検査があるものもあります。

今後はこのような薬剤、検査がだんだんと増えてくると思われます。

 

さて、本題ですが、先ほども書きましたが、皮膚科領域でも自己免疫疾患などでこの薬剤を使用することがあるのですが、

たとえば水疱症では、この検査が保険収載されておりません。

そもそも、水疱症にアザチオプリンの保険収載がないので、当然なのですが。

 

保険収載がない以上、この検査を水疱症患者に行った場合、検査料は全額患者様に払っていただくか

病院の持ち出しになります。そのため、いまだに皮膚科領域ではNUDT 15遺伝子多型は調べられないことが多いと思います。

今更ですが、

このブログで、たまに

「医者側はこうしましょう」と書いているのは

ごく近しい後輩にも見てもらっているからです。

読みにくいとは思いますが、気にしないでください。

お疲れ様です。

皮膚科 医師 米田大介です。

 

下肢(主に膝下以下)が浮腫(むく)むと、皮膚科に受診、

また相談される方が多いと思います。

 

下腿浮腫などとも言いますが、実は皮膚科への受診は正解なのですが、十分ではありません

 

下腿のむくみは、リンパ浮腫や他にも甲状腺機能低下に伴うものなど原因は多々ありますが、一番多いのはやはり静脈の鬱滞だと思います。

今回は主に静脈鬱滞による下腿浮腫という前提で書きます。

 

静脈の鬱滞もさらにその原因は多々あり、少しだけ後述しますが、

まずはとにかく結果として脚が浮腫むと皮膚にはたくさん悪いことが起きます

 

引き延ばされるので皮膚が衝撃に弱くなり、軽度の外傷で傷がついてしまったりしますし、

また小さな傷から滲出液が出続けてしまうので傷はなかなか治らなくなります。

鬱滞で足が浮腫むと言うことは、静脈の還流が悪くなっていることですので、皮膚、皮下組織

の組織圧亢進なども起き、軽度の炎症が常にあることになっていきます。

微小な組織破壊と再生が繰り返され、だんだんと皮膚、皮下組織が硬く変化していきます。

 

なので、足が浮腫むんで、さらに傷ができているのなら、放っておいても治る可能性は通常よりも少ないので、皮膚科にかかり適切な処置の指導を受けるべきだと思います。

 

ですが、

 

足の浮腫自体は皮膚科ではあまり治せないのです。

 

下腿の浮腫の原因としてよくあるのは心不全など心臓の働きが弱ることで血液の流れが

落ちたときや、腎臓に障害があり尿量が減る、電解質が崩れるなどの場合。

糖尿病で口渇が起き、飲水過多になっている時もあります。

また、もちろん下肢静脈の問題もあります。

深部静脈血栓症や大伏在静脈、小伏在静脈の静脈瘤や弁機能不全が原因で、下肢の静脈を通って体幹、もっと言うと心臓に静脈血が戻りにくくなることもあります。

場合によっては腹腔内に大きな腫瘍があり骨盤内の血管を圧迫することで流れば悪いこともあります。実は高齢者では車いすも含めて、座っている時間が長いだけでも

夕方には足がパンパンにむくんでいる方は少なくありません。

 

他にもレアなケースはまだまだ挙がりますが、見ていただくとわかるよう

どれも皮膚科以外の専門科の助力が必要です。

 

でも実際、患者サイドの立場で言うと、自分でシラミ潰しに色んな科に受診するのも、

その度に受診した事情を説明するのも大変です。

ですから下腿がむくんだ際には、傷があるようならまず皮膚科に相談し、その治療をしながら見立てをつけてもらって、他の科に紹介してもらうのがいいでしょう。

 

逆に皮膚科医側は、傷を直しながら、血液検査や超音波検査、CT検査などを行い

どこの科に相談すべきかを判断するのがいいと思います。傷の処置だけしていても

足の浮腫がある場合はかなり治りにくいので気をつけてください。

 

傷がなく足が浮腫む場合は、頻度で言えば心不全や静脈瘤など、

また緊急性で言えば深部静脈血栓症が大事なので、

まずは循環器内科に相談するのもいいと思います。

 

仮に下腿浮腫の原因として対応できるものが何もなかった時、

もしくは静脈瘤などの静脈還流障害があるとわかっても軽度だった場合や、

原因が深部静脈で手術適応とならない時など、

弾性包帯、弾性ストッキングを用いる圧迫療法がおすすめです。

実は意外と除外しておきたい疾患もあるので、私としては医師に使用の相談をしてから

開始するのがいいと思いますが、市販もされております。

傷があるときは包帯の方が使いやすいですが、ストッキングの方が改善率は優秀です。

 

 

 

 

 

 

このようにネットでもありますが、サイズも合わせた方がいいのですし、やはり自分が使用していいものだろうか一応医師に相談するのがいいと思います。基本的には誰でも使用した方がいいのですが、例外はありますので。

 

医者側としては、患者さまに相談されたら、閉塞性動脈性疾患や、

深部静脈血栓症の超早期、血管炎や強皮症による血管障害ではないことなどを確認して

使用していいものか個別に判断してお話しています。

 

 

 

お疲れ様です。

皮膚科 医師 米田大介です。

 

昨日から急遽書き始めたこのブログですが、友人や後輩から

もっと読みやすい内容ものせた方がいいと言われました。

前回記事の様な論文紹介に近いものを基本と考えてますが、せっかくなので

もっと一般的な内容を載せます。

 

今回はジェネリック医薬品の外用剤についてです。

ジェネリック医薬品がどんなものかは皆さんもう知っていると思います。

「厚生労働省の認可を得て製造販売される、先発品と同じ有効性成分を含む医薬品

です。

現在日本では60%のシェアとなり、例えばアメリカでは90%を超えるシェアで

使用されております。多くの薬剤は、薬価が先発品の半分以下になるので、

医療費の削減に効果的です。

医療費が増え続ける現在、世の中になくてはならないものだと思います。

 

ただ。

 

間違って欲しくないのは、ジェネリック医薬品と先発品は全く同じものではない

ということです。

上記にある様に、ジェネリック医薬品は有効成分とされるものが同じ量入っているということのみを保証しております。

 

逆に言うと、有効成分以外は保証しておりません。

もちろん害になる様な変なものは入っておりません。

安全性の確認はなされております。

 

例えば皮膚科でよく使う保湿剤の「ヒルドイドソフト軟膏®︎(マルホ)」がありますが、

この薬剤の有効成分は「ヘパリン類似物質」であり、その含有率は0.3%です。

いくつかのジェネリック医薬品、また同一成分をうたわれた市販薬が販売されて

おりますが、同じ成分であることを確証できるのはこの0.3%だけです。

実はほとんどが有効成分とされているもの以外で形成されています。

 

皮膚科で使用する外用剤は、この有効成分以外の「基剤」や添加物によっても

治療成果に影響を強く受けております。それ自体に皮膚の保護力があったり、保湿効果があったり、経費吸収に関与するからです。

 

内服の場合は、細かく分解されて体に吸収された上で働きますので、

(吸収効果の違いも出てくるのですが)ジェネリック医薬品であっても

有効成分が同じなので差は少ないと思います。

 

外用剤のジェネリック医薬品を卑下しているわけではないことはご理解いただきたいです。実際私もジェネリック医薬品の外用剤は多く使用します。

コスパが良かったり、場合によっては経験的な効果が先発品よりも高いものもあります。先ほど例にしたヒルドイド®︎も様々な剤形が先発品、後発品合わせて出ていますので、患者様と相談してケースに合わせて処方しています。

ただ、理解して欲しいのは「ジェネリック医薬品と先発品は同一ではない」

と言うこととです。先発品から変えた場合、効果が変わる可能性があり、

特に外用剤の場合、それが大きいと言うことです。

 

薬局で、ジェネリックを勧められて変更した場合、患者様サイドではそのことを

医師に伝えた方がいいと思います。

また医師側も、同じ薬を出しているのに効果に違いを感じた際は、

ジェネリックに変わっていないかをチェックするのがいいと思います。

 

 

 

 

好酸球が増多を見る機会は皮膚科医ならば多々あります。

中でもいわゆるHESというものには本来の意味と、実臨床で簡易的に

広義に使われている気がします。

 

HESは全身性に臓器障害を引き起こすことが知られており、場合によっては

早急に対応する必要がありますが、その診断は複雑です。

特に除外診断が多岐にわたり難しいと思います。

 

診断治療の肝を担うのは血液内科医ですが、組織採取の容易さや障害頻度から

皮膚科が初期から関わる場面も多く、最低限の知識を持つ必要があると思います。

 

下記はBJHに載っていたものですが、読んだ中では現在最も参考になる

HESのガイドラインになるかと思いました。

 

Nauman M. Butt et al:British Journal of Haematology, 2017, 176, 553–572

 

興味があればどうぞ。