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デリバン・ジャパン

デリバンは、1964年創業のオーストラリアのアクリル絵の具と画材関連の製造販売会社です。

 

ブルーの第二弾です。ブルーには歴史的に見てもとても古いものが含まれています。何千年も前からあった色も安全性や安定を求めて改良されてきました。顔料の歴史の中には、それぞれの用途がとても興味深く再確認されていきます。特にブルーは原色の一つです。歴史が深くとても面白いものと思えるのではないでしょうか。そして歴史がある絵具であるほど、その色を使う時、その時間も込めて作品の制作をしていると思うと、あなたの作品が歴史の流れの中にあることを感じ、制作意欲も高まるのではないでしょうか?色の背景を知って、絵を描くことを楽しんでみて下さい。

 

 

 

プルシャン・ブルー

 

セルリアン・ブルー

 

コバルト・ブルー

 

コバルト・ターコイズ

 

オーストラリアン・ブルーガム

 

サザンオーシャン・ブルー

 

コバルト・ティール

 

 

 

 

プルシャン・ブルー

 

マティスのプルシャン・ブルーは本当に「わぁ!」と声が出てしまうような色です。フタロシアニン・ブルーが、初めにアクリル絵の具が 作られた頃の基本の暗いブルーとされていたのには、プルシャン・ブルーが、アルカリ性の乾燥していないアクリル絵の具に、影響を受けやすく、不安定な状態になってしまうからでした。プルシャン・ブルーは工業水準でしたが、その後の色の開発は百年以上行われませんでした。なぜならこの色はその状態でもよく売れたからです。そのため、ある階級のもので、粗末に作られたものもありました。ある製造者は、これらの色は洗濯剤に入れられることが多いので、品質はそれほど必要ではなかったのだと推測しています。この無頓着さがそのまま不実なアーティスト画材の製造会社で作られたため、20世紀の中頃にはプルシャン・ブルーの評判にはムラがありました。

そして近年になってやっと、プルシャン・ブルーは本当の姿を見せはじめたのです。昔使っていた色の構造では扱えない製造の種類が、どんどんと増えてきています。産業を支えるために化学者は、近年のモダンなプラスチックやペイントとして使える品質の新しい色を開発しました。この為、高品質で前世紀のように、悪く粗末なプルシャン・ブルーで悩まされることがなくなったのです。マティスでは長い間新しい種類の色の試験をし続け、その長い道のりの結果マティス・プルシャン・ブルーが出来上がりました。プルシャン・ブルーには、暗い青として使うたくさんの強みがあります。そして油絵の具の緑がかった色と比べて、アクリルのクリスタルのような透明なメディウムの中で輝きを出します。プルシャン・ブルーは、二百年経って、新しく生まれ変わり、成長しています。

プルシャン・ブルーは歴史的に見ても重要な色です。これは近年になって、初めての合成顔料として開発されたものだからです。古代のエジプシャン・ブルーは、似たような色でしたが、とても弱い色でした。製造はローマ帝国時代の後半にはだんだんと無くなっていき、どのようにして作るのかは忘れられてしまったのです。ウルトラマリン・ブルーは存在していたのですが、19世紀前までは高価なラピスラズリの原石から作られていたため、とても高額の絵の具でした。アズライト(藍銅鉱)も良い色なのですが、もっと明るめのブルーで、自然のインディゴは退色も早くなります。

価格的にも手に入れやすい、暗めのブルー顔料が必要になっていました。スイスの絵の具と染料の製作者、ヨハン・ヤコブ・ディースバッハは、ベルリンで何世紀もの間錬金術師が成功できなかったことをやり遂げました。彼は初めて、とても美しい青で耐候性に非常に強い、さらに安く作れる青の合成に成功しました。このことは大きな評判になり、この色はその作られた場所から、ベルリン・ブルーまたはプルシャン・ブルーと呼ばれました。そしてその人気は素早く拡がり、東洋にも広がりました。この美しく暗いブルーは、日本の版画によく出てくるプルシャン・ブルーに関連付けられます。北斎の有名な版画、「神奈川沖浪裏」はとても良い例です。そしてヨーロッパのアーティスト達は、プルシャン・ブルーとガンボージ(ゴム樹脂で黄色顔料)とを混ぜて、フッカーズ・グリーンの混色を作るなどの新しい色を楽しんでいました。

プルシャン・ブルーは、強く濃い色であるフタロシアニン・ブルーによく似ています。非常に強い色なので混ぜるときは、少しずつ足していかなければすぐに他の色を負かしてしまいます。これは絵の具が非常に長持ちするという長所でもあります。プルシャン・ブルーが違うのは、高密度な鉱物色ということです。そのため更に密度のある絵が描け、フタロシアニン・ブルーのようにグリーンの偏りがあまりありません。一般的には透明感のあるグレーズや水彩画のように仕上げたい場合はフタロシアニン・ブルーを、そして不透明感のある絵の具が必要な場合はプルシャン・ブルーを使うと良いでしょう。

プルシャン・ブルーは、濃いグリーンやブラック、バイオレットを作る際に役に立ちます。フッカーズ・グリーンは伝統的にはガンボージと混ぜて作りますので、トランスパレント・イエロー・オキサイドと混ぜて、保存力が優れたよく似た暗いグリーンの色を作れます。いろいろな黄色と混ぜることで、アーティストが必要とする多様な暗めのグリーンが作れます。カドミウム・イエロー・ライトやニッケル・チタンは、きれいなグリーンを作るのにとても良い選択です。アースカラーと混ぜることで、自然によく見られるオリーブタイプのグリーンが作れます。マティス・ローズ・マッダーと混ぜてとても刺激的なバイオレットカラーを、マゼンタ・クィン・バイオレットと混ぜてダーク・パープル、そして藤色を作る際には、パーマネント・ライト・バイオレットに少しオーストラリアン・レッド・バイオレットを混ぜたもので作れます。もっと柔らかく自然なバイオレットは、ヴェネチアン・レッドと混ぜる良いでしょう。

 

 

セルリアン・ブルー

セルリアン・ブルーは、ラテン語で「スカイ・ブルー」という意味です。この名前は1860年にこの顔料につけられたのですが、実際にはその五十五年も前に開発されていました。それは、アーティストにとって空の青がとても大切だということに、科学者たちが気づかなかったからです。1860年に発売されたと同時にとても人気の色となりました。この色は耐光性がとても高く 、上位のチタンホワイトやクロミウム・グリーン・オキサイドに次いで、3位から4位との信頼を受けていました。なぜならこの色は、コバルト化合物で保存性が高かったのです。20世紀中頃には、持続性がほぼ同等のクロミウム版のセルリアン・ブルーが開発され、マティスでは、その顔料をセルリアン・ブルーに使っています。

クロミウムは、非常に面白い元素なのです。殆どの金属はシルバー・グレーか色を持たない化合物なのに対して、銅と同じようにクロミウムは例外的な金属元素と言えます。銅は古くから色を利用していますが、クロミウムは18世紀まで待たなければなりませんでした。中国では2000年前に矢の先を固くするために使われたり、古代ではルビーの赤を称賛したりされました。この赤色はクロミウムの不純物から出る色です。しかしながら、この硬さや、珍しさからクロミウムは、産業革命まで理解されることなく使われることはありませんでした。1760年に赤色として初めて使われた時は、鉛に結合された鉱石が見つかったため、鉛の化合物でした。そしてそれから40年経って金属は分離されて、20世紀の初めに、その特性を鉄と合金させる事でステンレススチールができました。電気メッキで輝くクロームの表面を持つ商品は、1920年代を代表します。その間、アーティストたちは、19世紀中頃からビリジアンなどの顔料の恩恵を受けており、そしてついにこの美しいセルリアン・ブルーの恩恵も受けるようになりました。

セルリアン・ブルーは、古代に使われていたが、持続性には乏しかったアズライトに似ています。チューブから出した色は暗めの色なのですが、オーストラリアン・スカイ・ブルーを少し混ぜるだけで大体満足のいく色になります。空の色は、年間を通して、1日を通して、気候によっても非常に幅の広い色を見せてくれますので、この方法の混色が正解というものはありません。しかし目安としてセルリアン・ブルーやオーストラリアン・スカイ・ブルーを多めに混ぜ、少量のウルトラマリン・ブルーやコバルト・ブルーを混ぜると、透明感のある空、特に日中の空の色を作り出すことができます。

ランドスケープの作品で、空と緑が多い場合もセルリアン・ブルーは適した色の選択になります。セルリアン・ブルーとトランスパレント・イエロー・オキサイドを混ぜたグリーンは、昔の巨匠たちが羨むような、とても重宝される色で、高い保存性を持っています。緑はこの色が作り出す素晴らしい色の序章でしかありません。カドミウム・オレンジと混ぜることで、煙のような中間のグレーが作れ、ベネチアン・レッドと混ぜると、非常に繊細で深い藤色が作れます。または、コバルト・ティールやアクア・グリーン、マティス・エメラルドと混ぜて、深く暗いターコイズ色を作ることができます。セルリアン・ブルーは本当にアーティストにとってありがたい色です。

 

 

 

コバルト・ブルー

コバルト・ブルーの歴史は長く、3000年も前からガラスの色をつけるのに使われていたのですが、その時代の色の原料は解明されておらず、それは偶発的で散発的なものとされています。これは銅とニッケル鉱石そして、ヒ素の存在に関係して起こるものです。炭鉱の労働者たちの考えでは、銅を取り出す際に、コバルトが存在する場合、鉱石を溶解するとヒ素の酸化物が出来ると考えられ、コバルトの成分は邪悪なもので「小鬼」という意味の“Kobold”という名前が付けられました。そしてこの名前が今のコバルト・ブルーの名前に由来しています。

中世紀に、エジブシャン・ブルーの製造が途絶えた際、どのように製造されていたのかが忘れられ、錬金術士は、濃いブルーのガラスでエジプシャン・ブルーに非常によく似た、スマルトと呼ばれる顔料を作り出しました。エジプシャン・ブルーとの違いは、銅を使った色とスマルトはコバルトを基礎に作られたと言うことです。コバルト・ブルーの顔料の品質は非常に良いのにもかかわらず、スマルトは粗末な色で、弱くザラザラしており、古代エジプシャン・ブルーの強い青味に欠けていました。唯一の長所はウルトラマリン・ブルーより安く、無いよりはましだということでした。

コバルトは、1755年にようやくスウェーデンの化学者、イェオリ・ブラントのよって、新しい元素と特定されました。彼はコバルトの問題を解決しようとしていたのです。そしてブルーの色がコバルトから来ているのもので、ビスマスの不純物や銅から来ているものでは無いことを明らかにしました。それからの顔料の発明は早く、コバルト・グリーンが初めに発明され、コバルト・ブルーは1802年にフランスの化学者、ルイ・ジャック・テナールによって発明されました。そして1807年にはアーティスト用の絵の具として使われました。

コバルト・ブルーという名前が顔料の名前として記録されたのは1777年でした。スメルトはコバルトから作られましたが、たくさんの不具合がありましたが、本当のコバルト・ブルー顔料は不具合も無く、素早くアーティストたちの人気の色になりました。

コバルト・ブルーは、耐久性に最も優れた色の一つで、ウルトラマリン・ブルーよりも安定しており、何百年の間、ほとんど、または全く色あせを見せない色です。この安定性のため金属に使われ、20世紀中頃からアーティストは、他の産業と競い合わなければならなかったため、絵の具の値段の高騰にもつながりました。その耐熱性の高さのために、ジェット・エンジンのタービンの羽根に使われたり、腐食性の高さから、医療用の人工臓器に使われたり、同じような理由からリチウム電池にも使われました。

コバルト・ブルーは寒系のブルーで不透明なため、ウルトラマリン・ブルーよりもカバー力が優れています。そして明るい色は幅の広いブルーやグリーン、そしてバイオレットを作り出します。風景画家にとっては、空の色を作るのにはウルトラマリン・ブルーよりも優れていると言えるでしょう。オーストラリアン・スカイ・ブルーと混ぜることで、深く強い真夏の空色を作り出すことができます。セルリアン・ブルーとオーストラリアン・スカイ・ブルーを混ぜることで、もっと個性的な冬の空や海辺の空などの 少し緑がかったブルーを作り出します。オーストラリアン・ゴースト・ガムは、柔らかく控えめなブルーを作ることができ、キャンプファイアーの煙から夜明けの霞などの色になります。

コバルト・ブルーは、他のブルーよりもグリーンの幅も広くさせます。それらのグリーンは、ウルトラマリン・ブルーで作るよりもくすみのないグリーンですが、風景画のオリーブ色のグリーンを作るのにも十分です。暗めのオリーブ色はコバルト・ブルーとイソ・イエロー、またはトランスパレント・イエロー・オキサイドを混ぜて、美しい葉の緑は、オーレオリンやカドミウム・ミディアム・イエローを混ぜて、明るいサップ・グリーンや芝のグリーンは、コバルト・ブルーとカドミウム・イエロー・ライトを混ぜることで作れます。

コバルト・ブルーは、ウルトラマリン・ブルーのように赤みがかっていませんが、十分の赤みを持っているため、とても繊細なバイオレットが作れます。マジェンタ・クゥイン・バイオレットと混ぜるのも素晴らしいですが、プライマリー・レッドと混ぜて美しいミッド・バイオレットの色が作れます。オーストラリアン・レッド・バイオレットと混ぜることでとても深いパープル/バイオレットが出来、まるでディオキサジン・パープルのようですが、耐光性ASTMが1という優れものです。古代の炭鉱労働者たちは鉱石の中にコバルトを発見した時、見下したかもしれませんが、現代のアーティストにとっては賞賛したくなる素晴らしい色です。

 

 

 

コバルト・ターコイズ

 

コバルトが1755年に元素として特定された後、1780年にスウェーデンの化学者スヴェン・リンマンが初めのコバルトの顔料、コバルト・グリーンを開発しました。この顔料は比較的弱く、アーティスト・カラーとしてのみ使われていました。コバルト・ブルーは1802年になって、フランスのテナールによって開発されました。19世紀半ばには2種類以上のコバルト・バイオレットが入手可能になり、そしてイエロー、さらに20世紀には新しいコバルト・グリーン、セルリアン、ターコイズなどのコバルト顔料が開発されました。コバルト顔料は、その他の顔料に比べて耐光性の高さに優れているという評判がありました。

とても近い同種の色、セルリアン・ブルーPB36やコバルト・ターコイズは、コバルトとクロムの化合物です。これは、クロムに含まれる着色剤がとても綺麗なエメラルドグリーンである事に関係しています。マティス・カラーではこのコバルト顔料を、グリーン寄りのターコイズ色から、深いブルーの色味まで使っています。これは海を描く画家にとって、深海の水が、緑がかったターコイズ色や、深いブルーのコバルト・ターコイズ色を見せることからも、とても重要な色になります。

マティスのコバルト・ターコイズは、風景画家にとっても、重要な色になります。この色はユーカリの葉のようなブルー・グリーンや遠景の丘などにも柔軟に適応できます。人物画家にとってもこの色は、織物や人工的に作られた物質の色を表すのに最適です。

この色と、もっと深く緑がかったサザンオーシャン・ブルーとの比較は非常に面白く、双方の色はお互いに助け合っています。そしてどのような混色の際にもどちらかの選択が選べます。例えば、両方の色にアンブリーチ・チタンを混ぜると、コバルト・ターコイズでは、嵐の際の雲や水面などのとても柔らかいブルー・グレーの色を作り出すことができ、サザンオーシャン・ブルーの場合は一般的に見られないような色を作り出します。反対に、コバルト・ティールとコバルト・ターコイズを混ぜると、とても美しいターコイズを作り出すのに対して、サザンオーシャン・ブルーの混色は、スキューバー・ダイバーや魚のバックの海の色などによく見られる、とても幅の広い海の色を作り出します。

コバルト・ターコイズとサザンオーシャン・ブルーの比較では、コバルト・ターコイズは柔らかい中間色を作り出すのに対し、サザンオーシャン・ブルーは、ダイナミックで深く鮮やかな色を作り出します。

コバルト・ターコイズは、ランドスケープの画家にとって、とても利用価値のある色です。アンブリーチ・チタンとの混色ではとても柔らかいブルーを作り、スキーや1日の終わりの色味を作り出すことができます。オーストラリアン・サーモン・ガムと混ぜることによって、風化してしまった木やガム・トゥリーなどの薄暗いグレーを作り出し、トランスパレント・イエロー・オキサイドと混ぜることで、とても柔らかい自然なグリーンを、さらにはイソ・イエローとの混色では日の当たった葉などのグリーンを作り出すことができ、とても明るいサップ・グリーンを作る場合は、カドミウム・イエローと混ぜることで作れます。混色に関しては、今日新しい顔料がたくさん出てきていることもあるため、いろいろなテストをすることをお勧めします。これまでの伝統的な混色の方法は、昔の巨匠の作ったレシピであることが多く、その時代からはもうすでにかけ離れた量の新顔料が手に入るようになっています。このため、オレンジはグリーンを作る際にあまり思い浮かばない色かもしれませんが、明るいオレンジはグリーンを作る際にとても良い選択とされています。これと同じことがこのコバルト・ターコイズにも言えます。バイオレットを作る際にコバルト・ターコイズは普通では考えないのですが、マティスローズ・マッダーと混ぜることで、とても美しく柔らかさを秘めたバイオレットを作り出すことができます。マティス・コバルト・ターコイズはアーティストに素敵なサプライズをたくさん与えてくれる色です。

 

 

 

 

 

オーストラリアン・ブルーガム

オーストラリアン・ブルー・ガムは、マティス・ブランドが作る特別なオーストラリアン・カラーです。オーストラリアの風景にある色は、とても特徴があり、風景画家にとって自然に見られる色がチューブに入っているのは、とても助かることでもあります。オーストラリアン・ブルー・ガムは、その点でも素晴らしい仕事をするのですが、それ以外でも幅の広い役割をこなします。特に現代美術家、イラストレーター、グラフィックのアーティスト、または色をこよなく愛するアーティスト達の役に立つ色と言えます。

オーストラリアン・ブルー・ガムは、気持ちの良い薄いグリーン系のブルーです。とても柔らかい抑え気味の色は、安らぎを与えます。この色が、ブルー・ガムと呼ばれる木の葉の色であると考えるのは間違いで、似てはいるのですが、少しブルー寄りのため、いろいろな光の状況や天候などによって変わるガム・ツリーの色の移り変わりが容易に作れるようになっています。さらに、スキー場や海、または想像の世界の色としてもとても扱いやすい色です。

ユーカリの木の葉を描く場合、オーストラリアン・ブルー・ガムが出発点となることでしょう。時間帯や気候によって色は変わってきますが、基本イエロー・オキサイド、クロミウム・グリーン・オキサイド、またはトランスパレント・アンバーをオーストラリアン・ブルー・ガムに混ぜると良いでしょう。これらを混ぜてみて初めて独特で素晴らしい色を発見できます。さらに、 オーストラリアン・ブルー・ガムは、流木などを描く時にももってこいです。ロー・アンバーや少しのアッシュ・ピンクを混ぜることでとても柔らかな青みがかったブラウン・グレーが作れ、これらの木の色を表現できます。

空や海にもオーストラリアン・ブルー・ガムが役に立ちます。暑い夏の日などは、コバルト・ブルーとオーストラリアン・スカイ・ブルーを混ぜると表現できますが、もっと涼しい、グレーよりのオーストラリアン・ブルー・ガムとコバルト・ブルーを混ぜることで、冬の空のような色が作れます。そして水にもこのブルーやグリーンがとても役に立ちます。

オ−ストラリアン・ブルー・ガムは、とてもユニークな色で、それはグリーンを作る時にはっきりわかります。ニッケル・チタンと混ぜると、20世紀に内壁やレトロ系の洋服などによく使われた色、明るいグリーン・アップルの色が作れます。もう少し濃いグリーンを作るには、オーストラリアン・ブルー・ガムにサザンオーシャン・ブルーを混ぜることで、ファッショナブルな色が作れます。ナポリ・イエロー・ライトと混ぜるとパステル調のグリーンが作れ、これらは現代のグラフィック系の作品にとても扱いやすい色で、他の色を混ぜて作るには難しい色です。現代美術家は、この色を他の側面から見ることでしょう。オーストラリアン・ブルー・ガムはイリディーセント・ホワイトと混ぜて輝かしいブルーを作り出し、メタリック・シルバーと混ぜることで柔らかなブルー・グレーを作ります。

オーストラリアン・ブルー・ガムは、もちろんブルー・ガムの木を描くときの良い出発点かもしれませんが、この色がマティスのブランドの絵の具の色範囲に仲間入りできたのは、それ以外の幅の広い役割を持った色で、アーティストの手助けをする色だからです。

 

 

 

 

サザンオーシャン・ブルー

サザン・オーシャン・ブルーは、海の奥深くの色で、ターコイズ色を深くしたような色です。この色はフタロシアニンのブルーとグリーンの混合で、透明度の高いとても暗いターコイズ色になります。そして、20世紀以前のアーティストにとっては、 透明度と保存力が高いこのような青味がかったターコイズ色を、手に入ることはできませんでした。フタロシアニンは、アーティストに非常に高い恩恵を与えています。

なぜなら、これらの顔料は、化学者によって実験室の中での実験によって出来た製品で、私たちは、人工的な染料を人為的な色のように考えがちですが、本来はもっと複雑なものなのです。これらの化合物は有機色と呼ばれています。それは分子の中に炭素の原子が含まれているからです。現実に、この有機物は、自然に人体の中で発生する化合物ととても近い関係があるのです。キナクリドン顔料、ピロール、そしてフタロシアニンは特に、人間の胆汁の変形型になります。この自然の胆汁の着色剤のことをピロールと呼び、その名称は私たちが使う合成の赤顔料の名前の由来になっており、化学的に構造がとてもよく似ているのです。一部のアーティストは、ピロール顔料をグーグルなどで調べると、そのほとんどが医療系に関連する疾患の記事である傾向があるため、混乱が起こります。アーティスト顔料として適用される場合は、本質的に非毒性です。

 

これらのピロールのようなアーティスト顔料は、耐光性に非常に優れた特徴を持っています。ピロール・レッドを例にとってみても、カドミウム・レッドよりも光に対する耐光度を持った初めての赤顔料であったり、サザン・オーシャン・ブルーに入っているフタロ・ブルーは、その他の顔料が保存性に高いかどうかを見るための耐光性評価のシステムの基準として使われていたりします。フタロ・ブルーと同じぐらい耐光性が高い場合は、最高の耐光性の範疇とみなされます。

 

サザン・オーシャン・ブルーは、風景画家や海洋画家など、いろいろなジャンルで使われます。名称から深い海の色がほのめかされるように、コバルト・ターコイズと混ぜることでとても広い範囲の深いグリーン・ブルー、ブルー・グリーンの色を作り出すことができます。オーストラリアン・ゴースト・ガムで色味を明るくことで、寒々した海に見られる中間から明るめのターコイズ色が作れ、嵐の中でのブルー・グリーンはオーストラリアン・サーモン・ガムにサザン・オーシャン・ブルーを混ぜて作ることができます。

 

そして熱帯地方の海を作るには、サザン・オーシャン・ブルーにコバルト・ティールを混ぜて、インクの様な暗い、例えばグレート・バリア・リーフなどのサンゴの海の外側の色にはコバルト・ティールを少なめに、そして透きとおった水の色、サンゴ礁のあたりにはコバルト・ティールをたくさん混ぜて作ります。イエロー・ライト・ハンサからコバルト・ティール、そしてサザン・オーシャン・ブルーで、もっと浅い海の色を作ることができます。

 

風景画家のアーティストもこの色を楽しむことができます。まず森林の緑を作ることから始めてみましょう。とても美しい深いグリーン、透明度の高いフッカーズ・グリーンのような色を作るには、サザン・オーシャン・ブルーにトランスパレント・イエロー・オキサイドを混ぜて、中間的な芝のグリーンはイソ・イエローを混ぜることで作れます。とても明るい緑、カドミウム・グリーンのような色を作るには、カドミウム・イエロー・ライトまたはビスマス・イエローを混ぜて作れます。サザン・オーシャン・ブルーは、グレート・オーシャンや南オーストラリアを、大型帆船に乗って地球を一周するような詩的な美しさを呼び起こすことでしょう。そして同時にトロピカルな海や森林の中にも発見できる色です。この色は全ての四季の色でもあります。

 

 

 

コバルト・ティール

 

コバルト・ティールは20世紀に開発されたとても高い性能のコバルト顔料なのですが、アーティスト用のこの色自体は、もっと古代からある色になります。シナイ半島で採掘された、とても純度の高いターコイズ石の色に似ており、その昔はこの石を砕いて製造されたとても素晴らしいターコイズ色の顔料でした。宝石から作られたこの色は、とても高額でしたが、古代のエジプトのアートは、神殿に雇われたアーティストや写本筆写者によって作られた為、ファラオ(古代エジプトの王)によって支払われていた顔料が高額であることは、問題にはなりませんでした。これはメフカートという名前で呼ばれ、ホルスと呼ばれたエジプトの神話に登場する天空と太陽の神、クサリヘビ、大きく広げた腕や、日の出、そして3粒の砂などの印象的な象形文字にも使われていました。明るいグリーンの顔料は喜びを表しますが、ターコイズはとても重要な顔料と考えられており、約束や未来の兆しなどを具体的に表現しています。この色は、ホルス神の目の色とも呼ばれ、日ノ出の光線などに使われました。そして新生児の女神、ハトホルの色でもありました。そして彼女の名前の一つには、ターコイズ嬢と言う呼び名がありました。この色が古代のエジプトで大変な意味を持つことははっきりしていますが、ローマ帝国によって滅ぼされたと同時に、ターコイズ顔料の製造も滅び、20世紀にヨーロッパで開発されるまでターコイズ色は手に入りませんでした。

コバルト・ティールは、本物の宝石のようなターコイズ色です。たくさんのターコイズと呼ばれる色がありますが、緑と青の間の色をターコイズと名付けることが多いのが実情で、本来は、コバルト・ティールが古代エジプトの使っていたオリジナルの色になります。他の顔料との混色をしなかった古代の人々と違って、現代のアーティストは、自由に色を混ぜてすべての可能性を出すことができ、とても使いやすい色になります。特に緑を作る時に、驚くような混色を手に入ることになります。

なぜなら、コバルト・ティールは、明るめのグリーン寄りのブルーと考えられており、明るいグリーンを作る際に力を発揮します。それらは個性的で他の顔料では作れない色になります。コバルト・ティールとニッケル・チタンで、とても明るく輝くようなグリーン・アップルの色を作ったり、パーマネント・グリーン・ライトと混ぜると翡翠のような美しい緑ができたりします。驚くほど明るい黄緑は、カドミウム・イエロー・ミディアムと混ぜて作ります。柔らかいグレー系のグリーンにはトランスパレント・レッド・オキサイドかフッカーズ・グリーンと混ぜます。これらのグレー・グリーンは、ブルー・ガムの葉の影の色に最適です。

青をコバルト・ティールで作ることもとても興味深い結果を生みます。オーストラリアン・レッド・バイオレットと混ぜると、中間的な暗めで赤寄りのブルーができます。この混色はあまり浮かばない色の取り合わせかもしれませんが、チューブの色では見ることのない色ができます。とても淡いグレー・ブルーを作るには、コバルト・ティールにアッシュ・ピンクを混ぜて作ります。イリディーセントを使うことで、さらなる驚きの結果が得られます。コバルト・ティールとイリディーセント・ホワイト、またはメタリック・ライト・ゴールドを混ぜてみてください。そしてチューブから出したそのままの色の美しさも持っており、古代のエジブト人のように使うこともお勧めです。

 

 

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原色の一つ、ブルーのお話です。ブルーもたくさん色があるので二つに分けます。地球は青いと言いますが、赤や黄色と同様子供の頃から慣れ親しんだ色ではないでしょうか?青い海、青い空、そして地球は青かった。しかし、青にもいろいろあります。微妙な色の偏りは混色の時にも大きな違いを出します。個性的なパレットを作るためや、本当に好きな色の混色を探すため、基本的な混色のルールを超える自分だけの何かを見つけるためなど、色や顔料のことを知って、そしてそれをヒントにして、自分だけの色の組み合わせを楽しんでください。

 

 

 

オーストラリアン・スカイ・ブルー

 

ミネラル・ブルー

 

ウルトラマリン・ブルー

 

ミッドナイト・ブルー

 

マティス・インディゴ

 

フタロシアニン・ブルー

 

プライマリー・ブルー

 

 

オーストラリアン・スカイ・ブルー

マティスのオーストラリアン・スカイ・ブルーは、ウルトラマリン・ブルーとチタン・ホワイトのブレンドです。この混合をチューブで持っているのは、風景画家にとって本当に便利です。そしてこの色は、空を描き始めるのにとても使いやすい色です。ただ、この色を始めに塗ってしまうという意味ではありません。空の色は時間や季節、または日によって違います。高い空は色が濃く、水平線へ近づくにつれて薄く柔らかくなっていきます。一色でこれを表現することはできません。もちろんオーストラリアン・スカイ・ブルーもそれを考えているわけではなく、理想的なスカイ・ブルーがやらなければならないことをこなします。それは、様々な空の色のベースとして使うことで、平均的な日の空の色を描くことができます。

これまでに、本当の意味での単色顔料で、スカイ・ブルーという色はありません。19世紀まで使われたアズライトが一番近いものとされていましたが、白を使って明るくする必要がありました。セルリアン・ブルーが現代のアズライトに変わる色で、そして白と混ぜることで北ヨーロッパの空の色を表現することができます。オーストラリアの空は、違った特性を持っており、通常ウルトラマリン・ブルーがその色を表すのに近いとされています。特に夏の間や、乾燥した地域の空の色と言われています。そのため、オーストラリアン・スカイ・ブルーは、ちょうど良いオーストラリアの空の描き始めの色になります。

 

空を描くときには、色の変化が頭上の空の色と地平線近くの色の違いが大きいため、マティスのオープン・メディウムMM31を使うことをお勧めします。オープン・メディウムは、混ぜる量に応じて、絵の具の乾燥を遅らせることができます。そのため、ウェット・イン・ウェットのテクニックや、空の色のブレンディングが簡単にできます。空の色は常に変化し、使う色も日によって変わっていきます。光や日時などの特性によって変わってきますが、ウルトラマリン・ブルー、ミネラル・ブルー、プライマリー・ブルー、セルリアン・ブルーやコバルト・ブルーなどの色は、すべて暗い部分の空を作るのに良い色の選択と言えます。水平線近くの卵の殻のような淡い色を作るには、オーストラリアン・ゴースト・ガムやアンティーク・ホワイトなどを混ぜると柔らかな効果を表せます。ウェット・イン・ウェットの技法で、優しい色のグラデーションを作ることができ、視覚的にも喜びを与える結果が得られます。

 

 

 

ミネラル・ブルー

マティスのミネラル・ブルーは、岩や鉱物などに見られる柔らかいグレー・ブルーの色です。他のブルーに比べて明るさを抑えた色ですが、この巧妙な色は色々な場面で活躍できます。暗めの従兄弟、ペインズ・グレーやミッドナイト・ブルーのように、寒色系のブルー・グレー、または混色を目的とした柔らかで抑えたブルーとして使います。ルネッサンス時代のウルトラマリン・アッシュの色の使い方に似ています。その昔、ウルトラマリン・ブルーは、ラピスラズリの宝石を砕いて、科学的に灰汁を使ってブルーの色を取り出して作られていました。この工程は部分的に成功し、ラピスラズリにブルーが残ってしまうため、後2回この工程が繰り返されていました。初めの2回の工程でできたブルーを、ウルトラマリン・ブルーとして販売し、これらは、第一と第二として販売されました。第二は一回目のものよりブルーの強さが弱かったので安く売られました。3度目の工程でできたブルーは、ブルーの強さも弱く、グレーの母石と混ぜて売られました。これは強いブルーとして売られていたのではなく、ウルトラマリン・アッシュとして売られました。前の二つに比べてこの第三の顔料はとても安価で売られました。昔の巨匠は、この色を嵐の空や霧の風景に見つけ、アース・カラーとの混色でできるソフトなグレーは岩などに見られる色で、白い布の影などにも見られたため、とても使いやすい色だと発見しました。

これらのグレーや中間色は、自然界の中にとてもよく見られる色で、その色を出せる顔料はわずかしかありません。そのため、18世紀にペインズ・グレーなどが重要視され、ムードのある風景、特に雲や雨などを表見するのに使われました。ミネラル・ブルーはこの伝統を受け継いでいます。ペインズ・グレーよりも青みが高く明るい色は、南の海に見られるグレー・ブルーを思い出させます。イエロー・オキサイドと混ぜることで、ユーカリの葉などに見られるグリーン系のグレーを作ります。ミネラル・ブルーは、ムードのあるブルーで空気感を出すのに最適です。

 

 

 

ウルトラマリン・ブルー

ウルトラマリン・ブルーは、たびたびブルーの王様とみなされることがあり、アーティストの絵の具の中でもとても、人気のあるブルーであることは明白です。ヨーロッパで初めて登場したのはイタリアのルネッサンス時代で、おそらくベニスでアラビアのダウ船によって、魅惑的な好奇心から持ち込まれたのだろうということです。この色はこの時点で、とてもセンセーショナルであったため、ペルシャからインド、中国、そしてヨーロッパへと広がりました。金の重さとほぼ同じ料金であったこの色は、とても特別であるという評判を高くし、上流階級の貴族のみがこれらの絵を買うことができました。イタリアのアーティストたちは、ペルシャ人が船に乗って持ってきた色という事実以外は知らなかったので、「ウルトラマリン・ブルー」海外から来たブルーという意味の名前がつきました。この時代にアーティストたちは、契約の中にこの色を使うという指定がされていたりして、この顔料を使うことを強要されました。たくさんのアーティストたちは、ブルーの色の部分をもっと安いアジェライトを使って描いてから、薄いウルトラマリン・ブルーで仕上げるということを試みました。この方法は油彩が定着してきて簡単に行えるようになりましたが、その試みもヨーロッパ人がどのようにこの色を作るのかを学んだ結果、少しずつ顔料の価格も安くなっていき、必要がなくなってきました。1930年代に人工のウルトラマリン・ブルーが開発されてからは、この色の価格はオーカーと同じくらいまで下がり、使用される率が急上昇しました。

この色は暗い青色のラピスラズリという宝石用原石を砕いて作られていました 。ラピスラズリは古代より採掘されています。世界で一番古いラピスラズリの鉱山は、アフガニスタンにあり、7000年もの間採掘されています。この石は、初めの数千年の間は宝石として使われました。この頃、顔料を石から作る知識はあったと思われますが、古代のエジプト人が濃いブルーのガラスを砕いて作ったパウダーの似たようなブルーが使われていたと思われます。この方法の方が宝石用の原石、ラピスを砕くよりもはるかに安かったので必要ではありませんでした。5世紀になって、ヨーロッパと地中海の経済の崩壊の後、エジブトのブルーが手に入らなくなったと考えられ、アフガニスタンのアート作品で初めてラピスラズリの顔料が使われたとされています。しかし、この色の簡単に石を砕いた製造方法には問題がありました。とても弱く、この顔料では筆で描く品質が悪かったことに加え、とても高額になったのですが、他に濃いブルーがその時代にはなかったため、それから600年もの間、東側で使われてきました。

13世紀に入って、ペルシャで新しい方法で色を作る開発がされました。石を砕いた後に、苛性アルカリ溶液やその他の物質を使って化学的に処理されました。この方法で、石の母体であるブルーの着色剤を抽出することができました。そのため純粋なブルーで素晴らしい絵の具が作れるようになったのですが、これはその時代の優れたハイテク技術であったため、石を砕いただけよりももっと高価になってしまいました。そしてこの色がベニスからその他のヨーロッパの国々広がり、そしてインドや中国にも同じ時期に広がりました。ヨーロッパの錬金術士やアーティストによって、このウルトラマリンの色の抽出方法を発見するまでに、1世紀以上の時間がかかりました。しかし、後の入手可能な状況と使用頻度のゆっくりした向上で、価格は少し下がりました。とはいえ絵の具の中ではゴールド・リーフ(金箔)の次に高価であることに、変わりはありませんでした。

産業革命の間に初めての人工顔料が化学者によって開発されました。プルシャン・ブルーが1706年に開発されたのを皮切りにフランスの政府が1824年に人工顔料の開発者に多額の賞金をかけました。1816年にはすでにウルトラマリンのような濃いブルーは、石灰製造の際に偶然発見されたことから、科学者たちによって逆行分析のいろいろな実験が行われていました。1826年には、ジャン=バプティステ・ギメが重要な発見をしました。彼はこの方法を秘密にしておきたく、賞金ももらい工場でウルトラマリン・ブルーを製造したのですが、2年後に大学の研究者クリスティアン・グメリンによって他の方法が開発され、グメリンはそれを公表したため、ウルトラマリン・ブルーの製造にはグメリンの方法がベースになりました。

この業界はとても大きなものになりました。人工顔料はアーティストや宮殿などのデコレーションに初めは使われていたのですが、人工のウルトラマリンは、とても安くすべての顔料製造者にグメリンの方法は知れ渡っており、それによって使用方法が倍増されました。紙を作る会社で少量のブルーを混ぜることで、自然のままでは少しクリーム色になってしまう紙をもっと白くすることが可能になり、またはブルーの紙を作ることができました。洗濯用の商品やクリーニング材に使われる青味材は、ほとんどウルトラマリン・ブルーです。繊維製品も白く見せるために使われ、化粧品、特にアイシャドウ、住宅、車や飛行機などの塗料、青の屋根材の色素材は耐光性に優れていることが重要な条件でした。

人工のウルトラマリン・ブルーはラピスラズリから作られたウルトラマリンと似ているのですが、違うことを評価しなければなりません。たくさんの優れた特徴を持った色ですが、全てにおいて優れているわけではありません。たくさんの人は昔の色の方が美しいと言いますが、それらは主観的な意見でもあり、客観的な現実よりも昔の神秘的雰囲気のためにそうなっています。ラピスから作られたウルトラマリンは、もっと大きく揃っていない結晶から出来ており、それはもっと激しい暗いブルーの色を出します。それに比べて、現代のウルトラマリンは、結晶が小さく、光の反射率が高く明るい色を出します。昔の色は深い色味にバイオレット色が現代のものより少なくなります。もしも何からできているのかを伏せて、現代のアーティストに色を選んでもらうとしたら、だいたいフレンチ・ウルトラマリンが良いという答えが返ってきます。これはウルトラマリンにバイオレット色が多めの色調でアーティストに愛されています。マティス・ウルトラマリン・ブルーはこのフレンチ・ウルトラマリンのタイプです。宝石の原石ラピスラズリから作られるウルトラマリンは一色であるのに対して、人工のウルトラマリンは、ブルーからアーティストが好む緑がかったものまで多くの色調があります。グリーンとバイオレットのバージョンもあり、それらは工業的に使われており、それらの影響を及ぼす範囲は少ないのです。すでに使われなくなった色で、ウルトラマリン・イエローは、本当のウルトラマリンではなくバリウムの顔料でした。

ウルトラマリンはとても暖色系の、透明度も高いブルーで、とても働き者の色で、すべての空色から、イエロー・オキサイドとの混色でオリーブ・グリーンまで、アーティストに使われています。ウルトラマリンで作るグリーンはとても使い勝手がいいのです。何故ならウルトラマリンは、バイオレット側のブルーのため、綺麗なグリーンを作ることができませんが、私たちが日々目にする自然の緑に近い色を作るのです。そしてカドミウム・イエロー・ミディアムと混ぜると柔らかい木の葉のグリーンを作り、イエロー・オキサイドや、ロウ・シェンナと混ぜることでオリーブ系の緑を作ることができます。

寒色系の赤、マティス・ローズ・マッダーと混ぜることで、綺麗なバイオレットができ、これは耐光性においてもディオキサジン・パープルよりも優れています。その他の寒色系の赤、ブリリアント・アリザリンからマゼンタ・クイン・バイオレットなどと混ぜると、とても上品なバイオレットを作ることができます。もっと土のようなバイオレットを作るには、ベネチアン・レッドやカドミウム・レッドを混ぜることで可能になります。黒に変わるとても濃い色は、ウルトラマリン・ブルーとバーント・アンバーで作れます。このようにウルトラマリン・ブルーはとても用途が多く、アーティストたちから人気であることも理解できます。

 

 

 

ミッドナイト・ブルー

 

ミッドナイト・ブルーは、暗いブルー・ブラックでペインズ・グレーに似ています。ただし、ペインズ・グレーは、ウルトラマリン・ブルーとマーズ・ブラックで作られており、ミッドナイト・ブルーはフタロ・ブルーで混ぜられています。両者とも同じくらいの耐光性と使い勝手の良さがあるのですが、個性や色のムードは、それぞれ混色でその特徴の違いを出します。ペインズ・グレーは特徴のあるブルー・バイオレットの色味を帯びた色で、色相環のスペクトルの寒色で力を発揮します。特にブルー・グレーやバイロレット、藤色など。

ミッドナイト・ブルーは、もう少し柔軟です。この色は、特徴のあるグリーン系のブルーの色味を持っており、それは深く強いグリーンにとても良く働き、さらに矛盾するのですが、レッドやバイオレットの色範囲との働きでも輝きを出します。

ミッドナイト・ブルーは、その名の通り、インクのような夜空の特徴を出します。これはとても深いインディゴのような色で、空の色や夜の水の色がそのホームグラウンドです。もしこの色をゴッホが生きていた時代に手に入れることができたなら、彼はこの色を愛し、彼の夜の絵の中に取り入れたことでしょう。この色は、ペインズ・グレーよりも色味を持っており、そして光をたくさん吸収するので夜空のように深い暗闇を表します。ミッドナイト・ブルーに含まれるフタロシアニン・ブルーは、透明顔料なので純粋な黒の顔料に比べて光の吸収を効率的に行います。純粋な黒でないにもかかわらず、その見た目は深い暗さを表します。

 

そして興味深い黒を、ミッドナイト・ブルーとトランスパレント・レッド・オキサイドで作ることができます。トランスパレント・レッド・オキサイドの光の吸収の効果が、美しい透明感を出し、色を美しく暗くし、レッドが温かみを与え、木炭を思い出させます。

 

ミッドナイト・ブルーにマジェンタ・クゥイン・バイオレットを混ぜてみてください。結果は、この上ないほど深く暗いバイオレットで、美しいマジェンタのアンダートーンを持った色を作ります。この美しいバイオレットは、ディオキサジン・パープルよりも耐光性に強く、同じような色味をつける強さを持っています。そしてその個性はパレットで混色を行うという行為から予測ができない微妙さを踏まえています。

ミッドナイト・ブルーにビスマス・イエローやカドミウム・イエロー・ライトなどの明るいイエローを加えると、濃いグリーンのガラスの瓶のような色を作る事が出来ます。そしてアースカラーのような効果を得るにはイエロー・オキサイドやトランスパレント・イエロー・オキサイドと混ぜることで、透明、または不透明な群葉を描くのに役立ちます。

この色の強みはグレーにも出ます。ミッドナイト・ブルーにアッシュ・ピンクを混ぜるととても柔らかなグレーを作り出し、グリーン寄りからピンク寄りまで幅をもたせた柔らかさを表します。また、パーマネント・ライト・バイオレットと混ぜて作ったグレーは、ブルーから藤色にかけたグレーを作り出します。アクア・グリーン・ライトは、また違ったグリーン系のグレーを作り、そこにオーストラリアン・ゴースト・ガムを混ぜてグリーンを柔らかくし、木や葉などに見られるグレーを作り出します。チタン・ホワイトを代わりに使うと、夏の空の雲などに見られるブルー系のグレーになります。このように幅の広いグレーやブラック、グリーン、バイオレットは、ミッドナイト・ブルーをとても多才な場面で使えることを意味します。その中には、冬や夏の夜の南の海や、夜の水面、日中のオーストラリアの低木など、使える幅は広がります。ペインズ・グレーのようにこの色はアーティストにとって重要な色のチョイスとなることでしょう。

 

 

 

マティス・インディゴ

 

マティス・インディゴは、純粋な顔料PB60で、通常インダンスレン・ブルーと呼ばれています。少し紛らわしいのですが、顔料そのものは、アントラキノンと説明されています。とても素晴らしい耐光性と永続的な保存性を持った有機顔料と評判を持っているバット顔料です。とても薄く塗られた色も、色あせをしないと言われています。この色は、色々な意味でフタロ・ブルーの従兄弟と言われていますが、化学的には関係はありません。両方共暗い青でアーティストが必要とする色ですが、フタロ・ブルーは緑がかった青で寒色であるのに対して、マティス・インディゴは赤みがかった青で暖色になります。これは、歴史的に見てもアーティストが初めて、暖色と寒色の耐光性にも優れた、とても深い青色を手に入れたということになります。

マティス・インディゴは、インディゴのような色ですが、自然のインディゴが持っている古い色は色あせがとても早いと言う問題はありません。100年前にイギリスの偉大な画家の手によって描かれた水彩画の風景などは、空の色がピンクやオーカーの色になっています。これは画家がその色で描いたのではなく、その当時の一般的に使われた自然のインディゴにレッドやイエロー・オーカーを混ぜて描かれていたからです。時間ととものにインディゴは色あせしてしまい、今では色は残っておらず、オーカーはその色を保持していたため空の色がオーカー色になってしまったのです。もしもその時代にマティス・インディゴがあったなら、これらの絵に描かれた空は今でも同じように青空だったことでしょう。

マティス・インディゴは暖色のため、ウルトラマリン・ブルーとの相性も非常によく、混色による影の部分や、黒に近くすることも違和感なくやってのけます。トランスパレント・ベネチアン・レッドを少し混ぜることで、色の色相を変えることなく、濃い影の部分の黒っぽい青を作ることができます。これはアーティストにとって、とても力強い味方です。

ウルトラマリン・ブルーのように、マティス・インディゴはバイオレットを作れますが、ウルトラマリン・ブルーより深く、暗く、そしてもっと力強い色になります。どの赤を混ぜるかにもよりますが、そのバイオレットの範囲は豊かで尊大なパープルから、素晴らしい深いバイオレットまでと広い範囲を持っています。マティス・ローズマッダーも、赤みのかかったパープルを作るのに役立ちますが、マジェンタ・クイン・バイオレットの方が、本来のバイオレットを作るのには向いています。この二つの色で、マジェンタのアンダートーンを持った繊細で優美なバイオレットを作り出す事が出来ます。

色の清らかさは、白を混ぜた時に、とても美しいパステルカラーになる事から明らかにされます。これらの色はディオキサジン・パープルよりも耐光性が強いため、郊外や光が当たる作品で何世紀も変わらない色を残したい場合は、一番の選択となります。

色々な実験を試みることは、特別な驚きを与えることがあります。マティス・インディゴにメタリック・カラーを混ぜることで本当のお宝を発見できます。例えば、マティス・インディゴにメタリック・コッパーを混ぜると、玉虫色に輝く鳥の羽根の色などに見られる、自然の青銅のような効果が現れます。さらに、これらの色は抽象画などの空想の世界を、特別で美しいものにすることができます。

マティス・インディゴはグリーンを作る際にも、とても素晴らしい色の選択になります。マティス・エメラルドと混ぜることで、透明なグリーンのガラスのボトルの色を作ることができ、静物画の歴史を見ても深いグリーンのガラスの瓶はとても一般的でよく見られます。

自然界の中でも、マティス・インディゴの強みが現れます。アンブリーチ・チタン・ホワイトと混ぜることで、緑がかったグレーを作ることができ、ユーカリの葉などの微妙な色に最適です。そしてロー・シェンナと混ぜて作る、暗めの緑がかったグレーは、それらの葉の影の部分の色になります。

自然のインディゴは、古代エジブトの初期の時代から18世紀まで使われ続けました。なぜなら、アーティストにとって、たとえ色あせするのがわかっていても、この暗いブルーはパレットに必要不可欠な色だったからです。今日、私たちにとって、顔料PB60(マティス・インディゴ)があることは本当に幸運なことです。他と比べると少し高価な顔料ですが、この最高の特質は十分に価値のあるものです。保存の度合いにしても、この美しい深い青色にしても、そして混色で出来るブルー、バイオレット、グリーンなどの美しさは必要不可欠な色の一つとなるでしょう。

 

 

 

フタロシアニン・ブルー

フタロ・ブルーは、フタロシアニンの省略名です。これは、一般に認められ、一般的に使われる顔料の名前の中では珍しい化学名です。英語名の初めに“Ph”がついていますが、これは発音されず英語では、“thalo”と発音されます。1936年に初めて販売された時には、他の名前が付いていました。それはモナストラル・ブルーで、今でもこのように呼ぶ絵の具製造会社がありますが、ほとんどの会社は化学名にもどしました。

この色は、偶然に見つけられた色です。この偶然の発見は、顔料の世界では比較的よく起こることです。一番有名な最初の合成コールタール染料の発見は、19世紀半ばで、マラリアの治療のためにキニーネを合成しようとした人が見つけました。しかし、フタロシアニン顔料は、3つの国も違うグループが、同じ時期に偶然見つけた珍しい顔料です。スイスとスコットランドで、1907年に偶然見つけられた物質は、とても強い染色効果と、とても綺麗な色であることが記録された以外は、何もされませんでした。1935年に他の研究をしていたイギリスのICIが偶然見つけた時には、のちに追跡調査が行われ、その時代の耐光性に最も優れた有機色素であることがわかりました。それから1年以内に織物用の染料や工業用やアーティストに使われる顔料ができました。フタロシアニン・ブルーやグリーンの主要産業を考えるとスイスとスコットランドは 、この濃いブルーの不純物に興味を示さなかったことで、重要なチャンスを逃してしまいました。

これは、深い緑がかったブルーで並外れた強さを持っていました。今市場に出ているフタロシアニンは、すべて実際の濃度ではありません。なぜなら、一滴混ぜるだけで他の色を圧倒させてしまうからです。この色を扱い易くするために適切な量の増量剤が製造段階で混ぜられて、この色の強さを弱めています。増量剤などの不純物の添加なしではこの色は使うことができません。この大量に増量剤を添加した状態の絵の具チューブでも、パレットの中ではとても強い色の分類の一つで、抑え気味で使わなければ、色を作る際に簡単に入れ過ぎてしまいます。

フタロシアニン・ブルーは、アーティストにとって必要不可欠な基準の濃いブルーです。20世紀初めから中頃の粗末な製品基準が、プルシャン・ブルーの不同の性質の評判をあげました。アクリル絵の具の中では、何年もの間フタロ・ブルーが唯一の選択でした。なぜなら、初期のプルシャン・ブルーは、アクリルの乳剤の中でとても不安定になったからです。とはいえ、プルシャン・ブルーの製造テクノロジーの発達で、顔料が安定性や品質ともに信頼できるようになったため、アクリル絵の具として存続し、この二つの色は非常に相補う存在となりました。プルシャン・ブルーは、より不透明で、フタロ・ブルーのようにグリーン寄りの顔料ではないことなど、様々な状況の中でそれぞれ違った利点を持っています。フタロ・ブルーのすばらしい透明度と混じり気のなさを持つ色は、宝石のような質の良い顔料であると言えます。これはブルーやグリーンの色のガラスや、水やその他の透明または半透明な物質の表現に申し分のないブルーです。

この色は、チューブから出したそのままの色で使われることはあまりありません。それは自然界に存在しない色だからです。ただこのユニークな色はアーティストにとってとても使いやすい色なのです。なぜなら、混色で作られる色は他では真似のできない色があるからです。

それはありとあらゆる緑を作る際に、特に貴重なのです。フッカーズ・グリーンはアーティストが特に役立つ色と感じており、それはチューブで買うこともできますが、フタロ・ブルーを使って混ぜられた色には、もっと個性があります。そして、それを作るには二通りの方法があります。フタロ・ブルーとオーレオリン・イエローを混ぜると少し明るいバージョンが出来、フタロ・ブルーとトランスパレント・イエロー・オキサイドを混ぜるともっと暗く強い色になります。この三つの顔料の透明度は、よく似た美しい暗めのグリーン、原型のフッカーズ・グリーンを作ることができます。原型のフッカーズ・グリーンは雌黄(しおう)が使われており色あせがありました。現代のこの代替の混色はとても永久性があります。

不透明の顔料や明るいイエローを使うことで、とても違ったグリーンが作れます。カドミウムグリーンは、フタロ・ブルーとカドミウム・イエロー・ライトや、カドミウム・イエロー・ミディアムを混ぜることで、模倣することができます。これらのグリーンはとても明るく、自然界で見られる緑よりもかなり明るい色になりますが、人工的に作られたもの、例えば、陶器、車や住宅、または洋服などに見つけることができる色です。自然なオリーブ・グリーンは、フタロ・ブルーとイソ・イエローを混ぜることで、そして、もっと暗いグリーンは、カドミウム・オレンジをイソ・イエローの代わりに混ぜることで作れます。

空はとても変わりやすい色ですが、フタロ・ブルーとオーストラリアン・スカイ・ブルーを混ぜることで、完璧なブルーが作れます。これらのブルーは、特に暑い真夏日の海面などの水面を描くときに、必要になったりします。その他には、海の奥深くや空の夕暮れ時の明るいグリーン・ブルーにも役立ちます。これらの色はオーストラリアン・ゴースト・ガムと混ぜることで簡単に作れます。フタロ・ブルーの美しさと繊細さは、混色を楽しむためにも価値があり、出来上がった、たくさんのグリーンやブルー混合色の輝きに驚かされることでしょう。

 

 

プライマリー・ブルー

 

プライマリー・ブルーは、アーティストにとって驚きの色です。プライマリー・イエローやプライマリー・レッドは、3色から5色の混色方法で働くように作られており、プライマリー・ブルーはその中で求められる仕事を完璧にこなします。プライマリー・イエローとレッドは、従来の混色の筋書き通りのカラーチャートの顔料に近い位置を占めていますので、孤立した特徴のある色とは言えませんが、プライマリー・ブルーは、アーティストにとって幅の広いテクニックで使えるとてもユニークな色になります。

この役柄は、三原色について調べなければその存在の理由はわかりません。アーティストたちが使う色名、イエローやレッド、ブルーはそれぞれの顔料により色味が違うため、平等に良い混色ができるわけではありません。例えば、ウルトラマリン・ブルーは、赤みを含んだブルーのため、明るいグリーンを作りませんが、バイオレットを作るのには向いています。黄金のイエローは、同じように明るいグリーンを作るのには向いていませんが、オレンジを作るのには向いています。ただし、色がそのスペクトルの色の真ん中、例えばイエローが、緑よりでも赤よりでもないものは、幅の広い色を作り出すことができるということです。スペクトルの真ん中のイエローは、良いグリーンも良いオレンジも作るということです。そしてスペクトルの真ん中のレッドは、オレンジもバイオレットも作り出し、真ん中のブルーはグリーンもバイオレットも作り出すということになります。これは黒を加えられた4色印刷の基本になります。4色印刷では、白色は紙の白が使われています。アクリル絵の具で同じような方法を取る場合、ホワイトを加えなければなりません。何故ならアクリル絵の具は通常、印刷よりも厚みを帯びるからです。長年印刷用インクには、フタロ・ブルーに薄め液を混ぜて明るくしたものをシアンと呼んで使っていました。マティスでは、絵の具の特性を守るためにこの方法を避け、透明度が高くなりすぎないように、正しい色味のフタロ・ブルーの顔料とホワイトを混ぜてシアンのような色を作り出しました。

 

混色によって、その他の原色を混ぜることでこれらの色の強い可能性を見ることができます。これらの色を使うことで、使う絵の具を5色とシンプルにしながら、幅の広い色を作ることが可能になります。プライマリー・ブルーにプライマリー・イエローを混ぜて明るく美しいグリーンを作り出し、プライマリー・ブルーにプライマリー・レッドを混ぜることで、感嘆の声が上がるような美しいバイオレットを作り出します。この三原色とブラック、ホワイトを使うことで、先生が、色彩論を生徒に実践で見せながら説明することを可能にします。とてもシンプルですが、クラスでどれだけのことが可能であるかを勉強するのにとても役に立ちます。

 

プライマリー・ブルーは、他の原色がなくてもその実力を発揮します。風景画家のアーティストは、すぐにそれを発見できるでしょう。例えば、オーストラリアン・スカイブルーと混ぜて素晴らしい空色を作り出します。そして、海の色を作る時にもこの色は役に立ちます。熱帯地方の海、特にグレートバリアリーフやクイーンズランド州北側の珊瑚のある海、またはインド洋、例えばイルカがやってくるモンキーマイヤーや、カリブ海、ティモールの海など、これらはすべて美しいターコイズの色を持った海です。これらは、ウィンスロー・ホーマーの水彩画バミューダなどに見られる効果です。ターコイズ色はプライマリー・ブルーにコバルト・ティールを混ぜて作ります。もっとグリーン寄りのターコイズを作る場合は、アクア・グリーン・ライトを混ぜます。これらの色は宝石のターコイズのようにとても繊細で優美な色です。

 

プライマリー・ブルーに、アース・カラーを混ぜるとまた違った驚きに遭遇します。トランスパレント・イエロー・オキサイドと、プライマリー・ブルーを混ぜるととても幅の広いグリーンを作り出し、瓶のグリーンから透明感のある落ち着きのあるオリーブや葉のグリーンを作ります。トランスパレント・レッド・オキサイドとプライマリー・ブルーを混ぜると、とてもリッチで温かみがあるにもかかわらず、グリーン寄りで、オーカーのアンダートーンを持つブラックを作ります。プライマリー・ブルーは、驚きをたくさん秘めた素晴らしい色です。

 

 

 

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ベネチアン・レッドやマルーン、ローズマッダーと言えは、くすみと鮮明さとの間を行き来しているような、でも暖かい綺麗な色ですよね。そして青に向かう紫もここのグループに入れました。歴史的背景、化学的背景、そしてアーティストとして、いろいろな角度からそれぞれの色を見たときに何か新しい発見があるかもしれません。絵を描くことの面白さはその中にある色をどのように使うかということも含まれています。

 

 

ベネチアン・レッド

 

トランスパレント・ベネチアン・レッド

 

パーマネント・マルーン

 

ディープ・ローズマッダー

バーガンディー

 

ジオキサジン・パープル

 

パーマネント・ライト・バイオレット

 

 

 

ベネチアン・レッド

ベネチアン・レッドは素晴らしい特徴を持つ純粋な酸化鉄(アイアン・オキサイド)です。この名前が付けられたのは、ベニスの内陸側で取れる自然の酸化鉄の色が、ポッツォーリ近くで見つかる濃いバイオレット・アイアン・オキサイドと、その他に見られる普通のレッド・オキサイドの中間ぐらいの色だからです。これは、相対的に暖系のマストーンを持ち、比較的に寒系のアンダートーンを持つ珍しい特性を持っているので、特徴のあるピンクを作るのに最適です。(マストーンとは、絵の具そのままの色のことで、特に厚めに塗った時の色のことです。アンダートーンとは、薄塗りした時の色のことを言います。)普通のレッド・オキサイドのような、不透明度ではないことから、このアンダートーンが非常に輝きを持ちます。ベネチアの画家達は、特にティッツィアーノ・ヴェチェッリオの使い方を見てもわかるように、この色を生まれつきのセンスの良さで使い分けました。 そしてこの色はイタリアでとても有名になりました。ベニス郊外にある採石場では、ティッツィアーノが使っていた顔料であると言われる採石場が有り、少量を今でも製造していると言う事ですが、大量生産には足りないぐらいの少量という事です。その代わりに、工業生産はその他のベニスの地域へ移行しました。なぜなら、自然のオーカーの製造には色々な質の原料が必要だからです。しかし、ほとんどの製造会社は、自然のオキサイドに比べて純粋な赤である事と、確実であるから合成物を使っています。これは耐久性の高い色の一つで、薄く塗られた箇所の耐久性も高いことが知られています。付け加えるならば、この暗めのレッド・アイアン・オキサイドは、地域や時期によって違う名前をつけられましたが、ベネチアン・レッドという名前は、古く常に最上の顔料であるということを表します。

同じ色合いのレッド・オキサイドは、石器時代のフランスの洞窟画で発見されています。そしてこれが発見された時の色は、1万6千年前と変わらぬ綺麗さと鮮やかさがありました。確かに洞窟の中ですので真っ暗なままの保存であったため、光によって起こる色あせを保護したことにはなります。耐久性が最も優れた顔料であったとしても、光は色を変化させる一つの原因です。その他、空気中の湿度や、閉鎖された場所での他の物質との化学反応などは作品の色を変える要素です。特に石器時代の壁画は、現代のようにアクリル絵の具のフィルムによって、環境から顔料が守られていません。レッド・オキサイドは、ものすごく長い時間の経過を経ても、変化を見せなかった。そして私たちが見たものが何千年も前に描かれた変わりの無いものであると確信しています。

その他に変わっていない事は、アーティストにとって、とても役に立つということです。年月と共に利用できるようになった、明るく素晴らしい色があるにもかかわらず、ベネチアン・レッドは特別な場所を保持しています。これは土のようなバージョンのブリリアント・アリザリンで、色合いを少し弱められた色です。そのため混色は非常に似たものがあるのですが、重要な相違があります。混色は常に柔らかく、ブリリアント・アリザリンよりも色調を弱める特徴があります。ベネチアン・レッドでピンクを作る時には、人の肌の色がその優しさから、綺麗に表す事ができます。有機顔料のいとこのようなこの顔料は、バイオレットや藤色が作れますが、ベネチアン・レッドで作る藤色やピンクは、ぼんやりとした感じの色味になり、これらは自然界で見られる色です。そしてこれらの色は、美しさと繊細さを兼ね備えており、この和らげる効果は他の色との調和を作る手助けをします。不透明性を比較した時の色にも違いが出ます。ブリリアント・アリザリンは、簡単に透明なグレーズ色を作ることができ、ベネチアン・レッドはそのカバー力に力を発揮します。そのため、ベネチアン・レッドは、ブリリアント・アリザリンを補うことができるのです。補色ということではなく、補い合うという意味です。

アーティストがこの色を使ったら、なぜティッツィアーノがこの色を愛し、色の選択の少なかった石器時代のアーティストの作品が、とても美しいことがわかります。

 

 

トランスパレント・ベネチアン・レッド

トランスパレント・ベネチアン・レッドやパーマネント・マルーンは、両者共にベネチアン・レッドと混ぜることで、光の当たっている、または陰になっている深く土のような赤色を表現することができます。昔の巨匠達は、影の部分は暗く透明度があり、明るい部分は不透明で、その中間色はこの二色をぼかし混ぜあわせ、キャンバスの質感を使って色の移り変わりを表しました。ぼかしの技法は、通常明るい色を乾いた下地の色の上に薄く塗り、下の色が見えるように上塗りをすることを言います。そしてこの技法は、キャンバスの質感がある方がうまく上のレイヤーを作ることができます。例えば、小さなキャンバスに、横から光が当たっている布が畳まれている絵を描いていると仮定します。全体はトランスパレント・ベネチアン・レッドで、そこに少しのベネチアン・レッドを織られた布の質感を出す為に加えます。これは暗さや透明度を妨げない程度に行います。そしてこのレイヤーの絵の具が乾くまで待ち、ベネチアン・レッドでぼかしの技法を使って、中間の明るさを作っていきます。そしてアッシュ・ピンクでベネチアン・レッドを明るくして、明るいトーンを作っていきます。この例ではベネチアン・レッドを使いましたが、トランスパレント・ベネチアン・レッドを使ったり、その他の透明な暗めの色を下地に使ったりすることもできます。

トランスパレント・ベネチアン・レッドやパーマネント・マルーンは 、両方共上記のようなテクニックを使うこともできますが、トランスパレント・ベネチアン・レッドには、手頃な価格であるという利点があります。高価な顔料をそのユニークな特質のため使わなければならない場合もありますが、それほど必要でない場合に使える手頃な絵の具があると助かります。それに、ここで注釈を入れておきたいことは、それぞれの顔料の値段によるグレードの違いは、相対的な品質にそれほど関わっているわけではありません。それよりも製造段階のコストがかかることが多いのです。ある顔料は原材料の値段が高い場合や製造が難しく、それにかかる時間が長いという場合があります。

トランスパレント・ベネチアン・レッドの他の使い方として、とても効果的なのがMM24イリディーゼント・メディウムやイリディーセント・ホワイトと混ぜて色を明るくすることです。この濃厚な赤みのあるブラウンは、その透明度の高さのおかげでイリディーセントの効果がとても美しく、金属などの質感を出すさいに非常に便利です。バリエーションとしてマティスのメタリックカラー、メタリック・ブロンズ、メタリック・コッパー、メタリック・ゴールドなどを、金属の色に応じて使い分けることもできます。トランスパレント・ベネチアン・レッドは、暗い金属部分などに素晴らしい効果を表します。この色は多様な才能を持っており、暗い赤色から、暗めの土の色、そして金属系の色などと上記に挙げましたが、その他にもウルトラマリン・ブルーと混ぜて深く輝かしいバイオレットが作れます。これらの色は近年手に入るようになったのですが、すでにこの色が無い昔を考えられないほどになっています。

 

 

パーマネント・マルーン

顔料番号レッド179は、ペリレン・マルーンとして化学者によく知られた顔料です。ペリレンの分子は、二つのナフタリンの分子が背中合わせに結合した時に出来ます。これは“ペリ”と呼ばれる配列で、たくさんの面白い特性を持っています。まず、この分子はとても安定しているため耐光性に非常に優れています。そして、太陽光発電やLEDライトの研究に利用価値がある特性を持っています。絵の具の製造会社にとっては、顔料とし少しもどかしい色です。永続的保存性や無害である事、化学薬品や風化への抵抗力、そしてほとんどの画材媒体との適合(しかしアクリル絵の具の調合には少し難しいところがあります)、そして黒から赤へとの広い範囲の色合いを持っているなど、顔料が持っている良い特性をたくさん持っています。落胆させられるところは、綺麗な明るい赤ではなく、深いマルーン色であることです。人々が望む明るく綺麗な色と比べると、それに打ち勝つのは難しく、売り上げも限られていますが、アーティストにとっては理想的な色なのです。何世紀にもわたり、アースカラーはアーティストのパレットに欠かせない、とても大切な色で、顔料はどの国でも取れるありふれたもののため、赤や黄色系の色は簡単に手に入りました。これらの使いやすい色も一定の制限があるため、イエロー、レッド、バイオレット、ブルーやグリーンなどの新しい顔料の開発がされていました。唯一の目を引く例外は、19世紀中頃に開発された人工のアイアン・オキサイドで、より信頼できるアースカラーであるとともに、マーズ・バイオレットなどのありふれた色合いではありませんでした。そしてこの状態は1世紀以上続いたのです。

前世紀、最後の10年から変化がありました。透明のアイアン・オキサイドが入手可能になり、絵の具の製造会社によって、いろいろな高性能有機顔料を使った実験が始まりました。初めの頃はベネチアン・レッドやパーマネント・マルーンは赤の分類の中に入れられ、他の明るい赤や鮮やかな赤と一緒にされましたが、これらの色の利用価値は明確で、アースカラーの仲間に入れることが考えられました。なぜならこの落ち着いた色は、混色の際に明るい赤の混色の特性よりも、アースカラーのように作用したからです。

パーマネント・マルーンの透明性はとても素晴らしいものでした。それまでの不透明な伝統的アースカラーには、透明度が必要でした。そしてアースカラーに透明度が加わったことで、創造の可能性は急激に増加させられたのです。水彩画のテクニックで色の美しさの恩恵を受けることができ、グレーズ(薄塗り)にも最適です。これはとても深い赤で、アンダートーンでその美しさが見られます。例えば赤い布をたたんだ影になっている部分などに、うまく使うことができたり、ベネチアン・レッドと混ぜることで色の豊かさを増したり、コバルト・ブルーと混ぜると豊かな暖かいバイオレットを作り、イエロー・オキサイドやニッケル・タイタニウムと混ぜることで、黄金のようなアースカラーを作ることができ、オレンジに混ぜることで、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホが愛した落ち着いたオレンジを作ることができます。この色は少し高価なアースカラーですが、美しい混色はアーティストに大きな報酬を与えることでしょう。

 

 

ディープ・ローズマッダー(パーマネント)

ディープ・ローズマッダーは、とても深い赤色で、化学の業界ではベンズイミダゾロン・レッドとして知られています。この色は大量に作られており、プラスチックの色付けや、水性の絵の具、インク、そして繊維業界でデザインを布に印刷する際にも使われています。アリザリン・クリムゾンにとても似ている色で、混色などの際も同じように色を作れるのですが、アリザリンの悪い特徴だけは受け継いでいません。ディープ・ローズマッダーはとても耐久性に優れており、カドミウム・レッドに値するぐらいの耐久性を持っています。ベンズイミダゾロンは、アゾ顔料の一つで、アルファベットで見ると名前の中にアゾを含んでいます。アゾ顔料はとても大きな有機顔料ファミリーで、黄色、オレンジ、赤の範囲の一部です。このように大きなファミリーの場合、ある色は同じファミリー内の他の色と比べて、耐久性に劣るものが出てくることを予想されます。そしてその中で一番良いもの、ディーブ・ローズマッダーはこの例のように、カドミウムと同じレベルと言える耐久性を持っており、例えば淡い色や白を混ぜた際の耐光性はカドミウムよりも高くなります。

この顔料は、顔料業界の中でも耐光性、耐風化、耐化学薬品、の性能が高いと考えられ、その上、他の耐久性の高い顔料よりも安価であることから広く使われています。アーティスト・カラーとしては、色々な画材に向いており、アクリル絵の具での自然な高透明度はその素晴らしさを露わにします。アクリル絵の具と油絵の具の重要な違いの一つに、油絵の具で使うアマニ油は、自然の黄色味を含んでいるのに対して、アクリル絵の具は常に透明と言う利点があります。これは油絵の具の製造会社にとっては、問題の一つで、アマニ油よりも自然の色味を含まない油もあるのですが、それらはアマニ油に比べて、強い絵の具の塗膜を作り出す事ができません。白や青などの色は特に、顔料の元の色に比べると色が変わっているのがわかります。それに比べて、アクリル絵の具は、常に顔料が持っている色の美しさを出す事ができます。なぜならそこに加えられる色はないからです。ディーブ・ローズマッダーの場合もアクリルの塗膜の透明さが故に、自然のこの色の透明度がこの色のアンダートーンの素晴らしさを助長します。

その他の油絵の具との違いは、グレージングの時のこの色の特性です。油絵の具では、グレージングは最後に行われる工程で、ゆっくり乾燥します。アクリル絵の具の場合は、どの段階でもグレージングを行うことができ、乾燥の速度も早くなります。ディープ・ローズマッダーはグレージングにとても相応しい色です。くすんだオーカーの色を高めることもできます。グレージングの際にはマティス・アクリリック・ペインティング・メディアムMM9で薄めてお使いください。

ディープ・ローズマッダーは、マティス・ローズ・マッダーを補う役目があります。暗めで、ブルー・レッドではなく、重要なことは、もっと透明度があるということです。そして価格の面でもマティス・ローズ・マッダーよりお手頃になります。双方の色にそれぞれの役割や長所があり、これは片方が他方より優れているということではありません。アーティストの作品によって、どちらが成果を得られるかが変わってきます。これは個人的な選択になります。藤色や中間のバイオレット色、そして美しく輝くブラックをフタロシアニン・グリーンと混ぜて作る場合は、マティス・ローズ・マッダーの方が好ましいと言えるでしょう。反対に、ディープ・ローズマッダーは、暗めのパープル、他の赤色を暗いトーンに変えることに関しては負けていません。価格の利点も無視できません。全てのアーティストがお金持ちであるわけではなく、もしもその理由のみで選ばれたとしても問題はありません。なぜなら、幅の広い濃く情熱的な赤からアリザリンのような混色を可能にする色は、ウルトラマリン・ブルーと混ぜることで濃いパープルやバイオレット、とても輝かしく美しいそれらの色は、ジオキサジン・パープルで作るバイオレットやパープルよりも耐候性も高くなります。アースカラーと混ぜても素晴らしい色が作れます。他の赤より明るいわけではありませんが、アイアン・オキサイドやアンバーとの混色においても、完璧に調和します。ベネチアン・レッドと混ぜるととても深い赤を作り出し、バーント・アンバーとでは、バーガンディー、レッド・ワインの色を作り出します。イエロー・オキサイドとの混色ではとても個性的なバーント・オレンジやゴールデン・オーカーを作り出します。

 

バーガンディー

バーガンディーは、深い赤みがかったパープル色で、何年にも渡りとても人気のある色です。この色は、古代の遺跡や美術品に使われたティリアン・パープルに似ています。その色は、海のカタツムリ、巻貝から作られており、当時銀と同じ価格だったと言われています。この色はローマ皇帝が身につけた色で、一般の人達はこの色を使うことを禁じられていました。色の起源は古代のフェニキア人、又はミノア文明とかなり古い歴史を持っています。

バーガンディーは幸運なことに、古代の色に比べて、全く手頃な値段です。これはキナクリドン・レッドとナフトール・レッド、そしてブラックの混合顔料の色です。パレット上で混色ができるのに、なぜ初めから混ぜられているこの色が必要なのでしょうか?端的に言うと、この色の魅力です。そして人々は綺麗なものや、魅力的なものを買ってしまいます。初めはそれでいいかもしれませんが、それではあとが続きません。もちろん綺麗だけではありません。現実的に、アーティストがスタジオで制作をする際、アーティストによって使いやすい色、そうでない色が出てきます。

何故なら、それは彼らがある種の混色を作って、それをベースとして絵を描き始めるということが、よく絵画では使われるからです。例えば、アースカラーは他の色に比べて明るい色ではありません。しかし、それらの控えめで、土のような調子は、人間の肌や、自然の岩、木などのほとんどのものに対して最適な色です。バーガンディーは、アースカラーに近い深みのある赤と言えます。そしてその色は、赤ワインのような暗い色で、髪の毛の色や花、そして影になった肌の色などによく使われています。この色はとても便利な色で、アーティストにとっても使いやすい色ですが、この色の単色顔料がないため、顔料を混ぜて作られた色しかないのです。たくさんのアーティストはこのあらかじめ顔料を混ぜて作られた色を重宝しています。時間の短縮と、実際に色を混ぜたときにある微妙な色の違いはなく、常に同じ色であるという利点があります。

バーガンディーは驚きの色なのです。暗目の赤い革のようなバーガンディーを作ることが簡単に思いつきますが、他の色と混ぜて素晴らしい色を生み出します。オーストラリアン・ゴースト・ガムは、混色の際に混ぜる色としてはあまり思いつかないかもしれませんが、この2色の混色は薄暗くぼんやりした非常に美しい色を作り出します。バーガンディーに入っているレッドが、その薄暗さの中に美しいピンクのようなアンダートーンを作り出します。薄暗い色はガム・ツリーの木の皮や、田舎の夏の午後の光などの色を探索するのに最適です。とても暑い日には、インクのようなバイオレットの影が岩などの割れ目に見えますが、バーガンディーにウルトラマリン・ブルーを混ぜることで、このようなバイオレットを作ることができます。この2色で作られた暗いバイオレットは、とてもミステリアスで、隠れた深みがあります。その反対に、セルリアン・ブルーと混ぜるととても違った色が作れます。このブルーは柔らかく優しいので、自然の野花や、遠くに見える丘などの色を作ることができます。このブルーはスキー場の地平線へ沈んでいくお日様や、空が日中の青から夜に変わる色などに最適です。

 

 

ジオキサジン・パープル

ジオキサジンは、初期のアクリル絵の具の色展開に含まれていたオリジナルのバイオレット色です。とても綺麗で深い味わいのあるバイオレット色で、アーティスト達にとても好まれました。この色はカルバゾール・バイオレットとして知られており、この両方の名前は同じ顔料のことを指しています。ピロール顔料と化学的にとても近く、大量生産がされており、アーティストの絵の具として使われているのはほんの一部です。なぜならこの色の基盤となる染色の力がとても強いということで、高度に濃縮されたものは黒に見えるため、黒のインディアン・インクとして販売されています。これは新聞社などで使われている安価なインクになります。アクリル絵の具としては、アーティストにとって要望の強い綺麗なバイオレット色になるような製法で作られています。

この色は完璧なのですが、耐光性の度合いはASTM IIを示しています。これは少し誤解を招く場合があります。それぞれのASTMのランクは、それぞれ色に応じた広帯域の耐光性です。そのため、ASTM Iの顔料、例えばフタロシアニン・ブルーなどは変色なしという結果が出ています 。または、80−100年の間ほとんど変化を感じ取ることができないという結果なのですが、イエロー・オキサイドを見てみますと200年以上かけてやっと感じ取れることのできる変化が起こるという結果が出ています。全てのASTM Iは耐光性がチューブから出したそのままの色、または白で淡色にした色の両方がこの耐光性を持っているとしています。色は淡色化された時に変色の恐れが多く現れます。ASTM IIの色はそのままの色では変色はないのですが、白に混ぜられた淡色になった際に変化が現れるということです。ジオキサジン・パープルは、ASTM IIとランク付けされていますが、その中でも一番上で、業界での評判も良く、ごく少量の変色が見られますが、それはとても薄く仕上げられた淡色になった時の話になります。要約すると、ジオキサジン・パープルはとても耐光性の強く、アーティストが安心して使える色であるということです。

21世紀になって、顔料の選択肢は非常に多くなり、アーティストたちにとって、限られた色の範囲しかない状態が考えられなくなっている状況です。19世紀にはその状況下で、良いバイオレットの顔料が手に入らなかったため、バイオレットは混色で作られていました。今日のそれに変わるたくさんの選択の中で、ジオキサジン・パープルは業界の基礎となり、プラスチック製品や、印刷インク、床用の素材、織物、ゴム、ハウスペイント、産業や自動車の塗料などに使われています。

アーティスト達は、常にバイオレットから柔らかいラベンダー色、藤色、そして初期の貴族や王族の肖像画家にとって支柱となり好まれた、深い帝国のパープルを重んじていました。印象派の時代からは、このバイオレットがアーティストにとって違う重要な意味を持つようになりました。印象派の画家たちが、黒の代わりにバイオレットを影に使い始めたことで、モダンな時代の明るく魅力的な絵画への重要な役割を果たしていると言っていいでしょう。ジオキサジン・パープルは、印象派のような色を出すのに素晴らしい出発点と言っていいでしょう。ウルトラマリン・ブルーと混ぜてブルー寄りのバイオレットを作ったり、マジェンタ・クゥイン・バイオレットと混ぜて暖色系のバイオレットを作ったり、またはそのままで深みの有る暗いパープルを作ったりできます。ジオキサジンはマジェンタ・ライトやパーマネント・ライト・バイオレット、オーストラリアン・スカイ・ブルーなどと混ぜて明るめの色を作ることができます。常に覚えておきたいことは、とても薄い淡色を作る際はチタン・ホワイトを混ぜますが、通常色を明るくする際には、元の色に近い色を混ぜたほうが良いということです。ジオキサジンは万人のパープルまたはバイオレット色で想像できる限りのバイオレット色を作ることが可能です。

 

パーマネント・ライト・バイオレット

パーマネント・ライト・バイオレットは、とても美しいパステル調のバオイオレットで、その必要性をぱっと見ただけでは理解できないアーティストもいると思います。しかしこの色は何年もの間販売され続けています。それはたくさんのアーティストにとって必要であるからです。グラフックのアーティストはこの色を好み、大きなポスターのような作品に使いっているところが想像できます。しかし、この色が長年必要とされているのには、それよりももっと深い理由があります。まず、この色はオフ・ホワイトとしての役割を果たしています。オフ・ホワイトとは、アーティストにとってとても重要な色です。名前からもわかるように、白に少しの色が加えられている色のことを指します。マティスでは多くのオフ・ホワイトを作っています。純粋なチタン・ホワイトは、色を明るくしますが時にはきつ過ぎたり、色味を奪い取ったりしてしまいます。そのため、色を明るくする場合には同色の明るめの色を混ぜていく方が、チタン・ホワイトを混ぜるより自然に色を明るくできます。チタン・ホワイトは一番明るい色に使うのが良いでしょう。パーマネント・ライト・バイオレットは、バイオレット色を明るくするのに非常に向いています。

そしてこの色は、藤色やラベンダー色、明るいバイオレット色を作る際のベースの色として素晴らしい活躍をします。これらの色は風景画や想像的な作品に不思議な空気感を出します。例えば、ロマン主義のアーティスト、特にターナーの空気感を出すバイオレット、藤色、ブルー、ゴールド、イエローやレッドの美しい対比で使われています。バイオレットは幅の広い感動を表します。空想的な作品を手掛ける際には、敏感な藤色から精神的なバイオレット、尊大なパープルなど、これらの感情の深みを作るのを助けます。またはもっと伝統的な風景画にも感情を込めることができます。藤色は夏の暑さを感じさせたり、広い空間を経て遠くの丘や山々を感じさせたりすることができます。パーマネント・ライト・バイオレットは、ウルトラマリン・ブルーと混ぜることで、とても柔らかいブルー系の藤色を作ります。ジオキサジン・パープルかバーガンディーと混ぜると、パープル寄りの藤色を作ります。ベネチアン・レッドと混ぜるともっと素朴な藤色を作り、アースカラーとよく合う色ができます。この色を使うと、色々な明るめの色をどんどんテストしたくなります。

 

 

 

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