良く晴れた青空は気持ちよく澄み渡り、まるでさっきまでの大雨が嘘のようだった。
すでにだいぶ薄くなった虹が名残惜しそうに遠くの田んぼに色を落としている。
先ほどまで静かだった蝉達が、じわじわと合唱を始めた。
そんな中、道を行く人たちは少し先の道を無表情に見つめながら、周りの光景に気付きもせず、それぞれの目的地に向かって進んでいく。その道のすぐわきでアオガエルがぴょんと跳ねても、誰も気づかないだろう。
ポタ・・・・
一滴の雫が一人の女性の首筋に落ちた。
「ひゃ!つめたい!」
女性は反射的に首に手をやり上を向いた。
「あ・・・」
そして、かなり薄くなった虹を見つけた。
近くを歩いていた子供がそんな女性の視線の行く先に気付き、
「あ!虹だ!!!」と大きな声をあげて走り出した。
その声に、周りを歩く人がいっせいに空を見上げる。
全員の目にかすかな虹が移り、そして吸い込まれていくように虹は消えた。
突然の出来事に、歩みを止めていた人たちが、1人、また1人と歩き出す。
そしてまた、いつもの日常が戻ってくるのだ。
どこまでも虹を追いかけていく子供たちを残して・・・
20230605