君はいい人、チャーリー・ブラウン | Commentarii de AKB Ameba版

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 中学2年生の時に引っ越しをして、10年以上住み慣れた町を離れた。

 本当だったら転校をしなければいけなかったはずなのだが、どういうわけか僕は転校することなく、もとの公立中学に通学することを許された。

 慌ただしい日々の後、引っ越ししたわりには、以前と変わらない日常が続くようになった。

 ただ、電車(正確には電車とディーゼル機関車)を乗り継いで帰らなければいけないという事情ゆえ、前みたいに学校帰りに友だちとだらだらと時間を無駄に過ごすわけにはいかなくなった。

 日が傾いても遊んでいるともだちに軽く手を振って、僕は先に帰途についた。

 

 少しさびしくはあったが、生まれて初めての電車通学は心おどるものがあった。手には特別に許された腕時計。学校にいる間は鞄にしまっておいて、校門を出たら装着! そこからは少しだけ大人のセカイに足を踏み入れた僕がいた。

 

 行き帰りの車中で読む本を買うために、毎日帰りに駅ビルの本屋に寄る習慣がついたのもこの頃だった。中学生の小遣いで買える範囲の本を探すため。

 そして出会ったのが、鶴書房のPeanutsコミックスシリーズだった。

 後に角川が引き継ぐのだが、訳者は谷川俊太郎だった。

 

 Good grief! 

 

 「よい悲しみ」っていったい何のこと?

 やれやれ、それがわかるのはもう少し後の話だ。

 

 確か一冊290円だったと思う。当時の物価からしたら、そして中学生のお小遣いに鑑みると、そこそこの値段だった。だから最初に買った一冊を、ほぼ暗記するくらい読んで、僕はPeanustの(そしてスヌーピーの)友だちになった。

 

 きっと余りに僕がPeanutsとスヌーピーのことばかり言っていたからだろう、ある日東京で働いていた姉が僕に教えてくれた。

 「スヌーピーのミュージカルがあるけど、行く?」。

 

 それが坂本九主演の「君はいい人、チャーリー・ブラウン」だった。

 

 調べてみると1977年のことだ。

 ヤクルトホール。どういうわけか、一番前の席に座ることができた。

 正直、内容は憶えていないが最前列で目が合った僕に、スヌーピー役の役者は笑いかけてくれたのはしっかりと憶えている。招待してくれた姉に「スヌーピーと目があった!」と興奮して姉に報告したっけ。なるほど、昔から釣られやすかった訳だ。

 

 実家のどこかにこの時買ったスクリプトがあるはずだ。40-50冊の鶴書房版Peanutsコミックス、「月刊スヌーピー」全巻、映画「A Boy named Charlie Brown」サントラ版LP、その他いろいろ。きっともう死ぬまでに繙くことはないのだろうけれど。

 

 今でも全集が出る度買っているし、六本木のミュージアムには何度か足を運んだ。でももう一度ミュージカルを見に行くことになるとは思わなかった。

 

 もちろん、彼女のおかげだ。