ファルスタッフ@東京文化会館 by スカラ座
ここしばらくのオペラ熱は、このスカラ座来日が原因。
NHKホールでメトロポリタンオペラを見たのが2011年6月。
それからしばらくは憑きものが落ちたみたいにオペラからは遠ざかっていた(というか、別の憑きものが憑いたんだよね、AKBってのが)。
でもスカラ座来日とくれば話は別。
ミーハーと言われようとも、僕のDivaはずっとマリア・カラスだった。
カラスと言えばミラノ・スカラ座。
そのスカラ座が来るって言うんだもの、火も付きますわね。
というわけで久々の東京文化会館。8列目はまずまずの良席。
全くの初見で、付け焼き刃の知識を集めての観戦でした。
「ファルスタッフ」はオペラの巨人、ヴェルディ最後の作。となればどんなアリアが待っているのか、と思いきや、コメディとはいえ何だろうこの緊張感の無さ。同じくオペラの巨匠、プッチーニ最後の作(というか遺作)があの「トゥーランドット」であったことを考えるとその違いにびっくりする。
ストーリーは、と言えば「デブで薄毛のじじいが金目当てに人妻2人を口説こうとして失敗してお仕置きされる」。以上。
原作は14世紀初頭ってことだが、舞台のしつらえは現代。
特に1幕2幕は現代劇でも違和感のないお話し。というか、これ歌がなければ吉本新喜劇と大して変わらない筋立て。
「大将、ここの払いどないしはるんですか」
「ホンマお前らといると銭ばっかりかかってしゃあないわ。でもな、なーんも心配することあらへんで。わしの男性的魅力をもってすれば、金持ちの奥さんくらいイチコロや」
「はあ、どの辺がその男性的魅力なんだっか?」
「よく見んかい。この薄い髪と、でっぱった腹と、って何言わしとるんじゃ。ガタガタ言わんとこの手紙アリーチェはんとメグはんに届けんかい」
「かなんなあ」
ドタバタの終わった後の第3幕からはちょっとオペラっぽくなる。
幕が開いたらホントの馬が飼い葉食べててびっくり。
舞台の奥には星が輝き、美しいことこの上ない。
少ししてテノールが歌う愛のアリア。
ひとしきり盛り上がって、若い恋人のソプラノが加わって二重唱になっておお、これは、と感情移入しそうになったとたん無粋な邪魔が入る。
これヴェルディさん狙ってるでしょ。聴衆をその気分にさせといて、ハシゴを外してるでしょ。
「おやおや皆さんずいぶんロマンティックなお顔つきですねえ(ニヤニヤ)」って。
あえて劇的要素を削ろうとしているようにしか思えない。
そして終幕。
フーガ、"Tutto nel mondo è burla"「この世はすべて冗談」を、登場人物全員が横に並んで歌う。
耳につくリフレインは、"Tutti gabbati!" 「みんな騙された!」。
客席を指さしながら、「みんな騙された!」「みんな騙された!」。
するとみるみる客席の照明が明るくなって、舞台から客席が丸見え。その客を指さしながら、「みんな騙された!」。その時、安全な暗闇から舞台を見て笑っていられるという観客の特権は剥奪され、登場人物の目に晒され、笑い者にされる。
おっと、この居心地の悪さ、どっかで体験したぞ。
そう、天井桟敷だ!
まさに「みんな騙された!」。
オペラを極めたヴェルディの最後のオペラがオペラを突き抜けた何か別のモノになっていたでござる。
うーむ。