そうそう、菊地と仁藤と松井(咲)がパーソナリティの。
聞いた聞いた、聞きましたとも。あれでしょ、2時台の選曲。
よかったわよねー。
説明しよう。「ANN2時台の選曲」とは、「AKB48のオールナイトニッポン」で、午前2時を過ぎると出演パーソナリティのチョイスによる曲がかけられる、という企画である。
お3人さんの選曲。
元旦に発売された「studio recordings~コレクション~」からの3曲。
まず仁藤萌乃。選んだのはB4「アイドルの夜明け」公演から「片想いの対角線」。
続いてきくぢことあやりんこと菊地あやか。B3「パジャマドライブ」公演から「鏡の中のジャンヌ・ダルク」。
そして咲っぺこと師匠ことピアノこと松井咲子。A4「ただ今恋愛中」公演から「君が教えてくれた」。
仁藤の「片思いの対角線」。
萌乃さん曰く、
まあ萌乃さんと言えば「対角線」だよな。それがどうしたの、と言えばそうなんだけど奥様、ちょっとこの曲が入っているA4「アイドルの夜明け」公演DVDご覧になって下さいませよ。チームに昇格して、はじめて自分に頂いたユニット曲なのですっごく思い入れがあるので皆さんにも聞いていただきたいなと思います…
ANN 2013年1月12日
公演DVDで、「対角線」を演じるメンバー。センターは仁藤。左右に米沢と、当時研究生だった小森を従え堂々のパフォーマンス。
その後ろで何も言わず踊るバックダンサーたち。
このDVD見始めた最初の頃はねえ、ぼーっと見てただけなんです。
萌乃さん目ぇスルドイなあとか、これ「対角線」とか言ってるけど、フリは長辺短辺で四角形の面積だよなとか思いながら。
見てるうちに、スタイルと動きのすごくいいバックダンサーがいるな、って気づきました。
失礼ながら前列で歌う小森よかよっぽどきれいに踊る人。当時は誰だかわからなかった。
いろいろなものを見たり読んだりして、AKBの歴史や目立たないメンバーのことを知るようになっていって、そのバックダンサーが菊地あやかであるということがわかりました。そして「彩香」が「あやか」になった経緯も。
菊地彩香はTeam Bのオリジナルメンバー(そしてエース格)だったにも関わらず、正規メンバーとして最初(で、おそらく最後)に「解雇」され、オーディションを受け直し、「菊地あやか」というただの研究生から再スタートしました。
公演DVDの中で「対角線」の立ち位置ゼロにいる仁藤は、菊地がTeam Bのエースだった頃は研究生でした。その仁藤をバックダンサーとして支える菊地。
完全に立場が逆転して、仁藤の後ろで黙々と踊っていた菊地は、その時何を思っていたのだろう。
って、この時はきっと菊地は何も思ってないよね、おバカだから。ただ研究生の仕事をひたすら一生懸命やってただけだよね。
僕はそういう菊地が大好きです。
ひたすらに踊る菊地の傍らには、やはり当時研究生だった松井師匠の姿がありました(他に野中美郷、前田亜美、あとはちょっとわかりません)。
菊地と松井(咲)。
今は親友同志であるという2人。
仁藤がそれを意図してかけたのかどうかは判らない。でも「対角線」がかかっている間、仁藤のバックダンサーだった2人はきっと同じブースでその時のことを思い出していただろうと思います。そしてその後歩んできた道を。
続いて菊地の選曲。
菊地の曲紹介。
おいおい「唯一思い出がある曲」ってB3の他の曲忘れちゃったのかさすがきくぢだな、というツッコミは置いておきましょうね。私が選んだのはですね(おー)、Bサード「パジャマドライブ」公演なんですけども(まさかー)、あのホントに唯一思い出がある曲なので皆さん聞いてくれたら(おー)、すごい嬉しいな、と思います。
それでは聞いて下さい。AKB48で「鏡の中のジャンヌ・ダルク」…ibid
これは即ち萌乃さんと同じように「一番思い入れのある曲」と言いたかったんだな、と読み取ることくらいきくぢ通のミナサマにはたやすいことですわね。
ちなみにカッコの中は恐らく師匠の合いの手です。
「
僕は当時の菊地彩香を知らないから、その時のことはわからない。
でもこれが「秋元先生が、その時Team Bのエースの一人として輝いていた菊地彩香のことを思って書いた」曲であったことは知っている。
そしてスキャンダルによってAKB48を解雇された菊地が、Team Bとして二度と歌うことの無かった曲であることも(後に「Team Ogi祭2010」では歌ったけれど)。
菊地は「菊地あやか」として見事にカムバックする。しかしその後、彼女はTeam B在籍時のことをあまり語って来なかったように思える(もっとも僕が菊地の言動をいちいちフォローしているわけではないから、あくまでも印象だが)。まあ思い出して愉快なことではないし、敢えて語るような話では無いだろうけどね。
勝手な想像だが、彼女にとってTeam Bのことは、もう痛いわけではないけれど刺さったままのちっちゃなトゲのような、そんな感じだったのじゃなかったのかしら。
そしてその中心にある曲。
その菊地が、この曲について語った。
B3「パジャマドライブ」公演DVDの「ジャンヌ・ダルク」で、「B」のバナーを掲げセンターに立っているのは、菊地ではなく彼女の後を襲った指原先輩だった。鏡の中のジャンヌダルクが、
ちゃんと私の名前で
入ってる…涙目。
良かった。素直に嬉しい。
「ジャンヌ・ダルク」において、いや、「パジャマドライブ」公演全体において、菊地彩香はあたかも「いなかった人」のようであった。
でも今度出たスタジオレコーディングCDには、しっかりと彼女の名が記されていた。
「菊地彩香」と(ついでにいうと、「ワッショイB!」でもしっかり「あやりん」と歌われてる。「さっしー」ではなく)。
さらにこのCDを聞いて初めて判ったのは、DVDの声は指原先輩ではなく菊地の声だった、ということだった。またまた出ました「妖精の粉」。
DVDからリップした音源を何回も聞いてたのに、僕はこれまで全然気がつきませんでした。
声は自分なのに、歌っている姿は別の人。
自分の名前は、どこにも書かれていない。
菊地は、「パジャマドライブ」公演DVDのこの曲を見る時にどんな思いだったのだろう。
「あれは私の声だ そしてあれは私の歌だ」
決して声に出して言ってはいけない言葉。
しかしやっとこの曲を、堂々と自分のものと紹介し、人々に聞いて貰える時が来た。
僕にはそれが彼女のトゲが抜けた瞬間のように感じられた。
師匠の「まさかー」「おー」という合いの手は、多くを語らない親友菊地の、心の片隅に残っていたトゲがやっと抜けたことを言祝ぐ声であったのだろう。
この時が来るまでに、多くの月日が過ぎ、たくさんの水が橋の下を流れた。
最後に松井咲子師匠がかけたのは、「君が教えてくれた」。
そう、いろんな人が、いろんなことを教えてくれた月日だったに違いない。
その中には、最悪な形でAKBを去り、でも必死の思いでカムバックして、夢を諦めなかった少女の物語も、当然入ってるんですわよねえ、奥さん。