video
Tags:「僕」の歌、季節(冬)、恋愛
ただいま恋愛中、もしくは愚かにして切ない恋愛の諸相・第1幕第3場
「モトカレとデート」
あ、
電話が来る。
あの人から電話が来る時は、どういうわけか先にそれがわかった。
どうしてなのかは、わからなかったけど。
ポケットの中で携帯が震える前に、あたしの胸が微かに震えてたのかもしれない。
一度あの人にそのことを話したことがある。
そしたら得意そうに語りはじめたっけ。
ユングがどうとか西出新九郎がこうだとか。
「女の人ってこういう時さ」って、ちょっとにやけながら。
でもある時からぱったり電話は来なくなった。
あの人が「彼氏」から「モトカレ」になったその日から。
あ、
電話が来る。
その途端携帯が震えた。
もちろん誰からかはすぐわかった。
つき合ってるころから、いや、その前からそうだった。あたしの気持ちをどんどん先回りして、あたしが答えを出す前に何もかもわかってしまう人。勝手だと思うよね?/突然の電話
終わってる恋なんて/思い出の無駄足
最初のうちは一緒にいるとすごくラクチンだった。だってあたしが考えてないあたしの考えだってわかるんだもの。
最後は、それが重荷だった。あたしが認めたくないあたしの気持ちで、あの人はあたしをがんじがらめにするから。
だからあたしは逃げ出してしまった。ちょっと鈍感で優しい、あの人の親友のところに。
「どうしても」だって。変なの。つき合っているときにはこんなわがまま言わなかったのに。どうしても来たかった/真冬の海辺へ
ガラガラのバスを降り/凍える風の中
あの人はあたしが行きたいと思うところにしか、行かなかった。
なつかしい砂浜。
あたしはいつだって、すぐそばにいたじゃない。離れていったのは、あなたの方なのよ。いてくれればいいから/僕の一番 すぐそばに…
昔と何も変わらずに…
どうしてそんな風にしか、女を見ることができないの?
そんなんじゃいつになってもあたしのことなんかわからない。
どうしてあたしがここに来た思ってるの?
あたしが望んでいることなんか、あたしは望んでない。
あたしの気持ちなんかどうだっていい。大切なのはあなたの気持ち。
「今日だけ」なんてイヤ。
お願い。今すぐ決めて。今しかないの。
もし今決められないのなら、この次はないの。
あたしは口に出すことはできなかった。
あの人は今日もそうだった。
物わかりのいい、誰も傷つけようとしない優しい人。
いいえ。2人は今日だけ/明日になれば 友達の
3人に戻るだけさ
今日から全ては変わってしまったの。
元に戻ることはないわ。