脳内パラダイス2 | Commentarii de AKB Ameba版

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Tags:片思い、「『僕』の歌」

 AKBに出てくる「僕」って、決してモテモテじゃなくて、どっちかっていうと引っ込み思案で臆病な男の子が多いよね。

 言っちゃなんだが、秋元御大も、どっちかって言うとそういう非モテ系の前思春期~思春期を送ってたんじゃないかってのが僕の邪推。自伝的小説を読むと、高校生のうちからちゃっかり彼女が出来ちゃって、やることやってるんだけど、何かこう、いまひとつリアリティが乏しいような。
 作詞家になってから時間に追われてやっつけでちょろちょろって歌詞を書いちゃうとこの描写のような真に迫るものがないというか…。

 それはともかく「僕」はたいてい「遠くで君を 君を見ている」だったり、「君が微笑んでくれたらそれだけでLucky」だったり、「人混みにまぎれて気づかなくてもいい」だったりするんだが、そういった消極的「僕」の総大将、King of 消極的「僕」、天もご照覧あれかし「僕」的元老院および「僕」的市民の第一人者にして「僕」的皇帝こそ、この「脳パラ」の「僕」であろうということは、衆目の一致するところだよね、よねよね。
 
 何しろ、

今日はあの娘にしよう/駅でよく会う娘
遊園地でデートして/ソフトクリーム食べようかな

 ってあんた、完全妄想なのはいいけれど、どの娘をターゲットってのすら決まってないんだもん。

 しかも

ロマンティックすぎて ほんとに起きたら/たちまち
パニック/夢でいい

 とどこまでもヘタレ。


 「恋のPLAN」の彼女も、

残るはひとつだけね/一番肝心なことよ
妄想だけじゃなくて/あなたをデートに誘わなきゃ

 って予定もないのにデートの計画だけを立ててて、タイガイだったけど、それでも誘いたい相手は決まってたし、デートに誘いたいって気持ちは持ってた。

 他の「僕」たちも、好きな娘くらいは決まってたぜ。
 で、ときどき暴発して走り出すバスを追いかけたりグラウンドの真ん中で大の字に寝転んだりしちゃうんだけどね。

 でも「脳パラ」の「僕」と来たら。せめて一推し二推しくらい決めておけって話ですよ。

 しょうがねえなあ童貞少年は。
 松井Rセンセイ、ここはひとこと説教お願いしますよ。

 でもまあ、「脳内」だったら誰でも無敵だからね。

片思いはいいよね/振られることは ないからね
本当の自分が喋って/ふざけて/笑って
見つめて/し放題

 どんな人でも「脳内パラダイス」は絶対必要。

 そこは誰にも邪魔されず、誰にも非難されず、誰にも内緒で、自由な、想像力の王国。そこでは何をしても、何を企んでもOK。かく言う僕も、かつてはそこで「セカイ征服の計画」を立てたもんです。

 前思春期から思春期にかけて、この「王国」をいかに豊かに築いておくかってのは、ひょっとしたら一生に関わる問題だと思うのね。
 大人になるってことは、端的に言ってこの「王国」から出てくってことなんだけど、この「王国」=「脳内パラダイス」がしっかりしていれば、実社会がどんなにつらくても大丈夫、乗り切れるような気がする。どうしても苦しい時は、少しだけそこに戻って休めばいい。
 しかも「王国」の中でタクラんだあれやこれやそれなどの突拍子もない計画を、手直ししたり別の衣装を着せたりしながらでも、実社会で実現して行くってのが人生のテーマだったりもする。僕も「セカイ征服」は諦めたけど、今でも下方修正した計画を着々と実施中なのかもしれないわけ。

 そして我らがAKB団結48ってのは、誰のパラダイスにも分け隔て無く訪れる旅の吟遊詩人。ありがたいことに日替わり週替わりでどの娘にしようか選び放題。僕らが声をかければ、彼女も僕らに話しかけてくれる。

 モチロン幻聴だけどね。

 そんなパラダイスが楽しくないわけがないよね。

 でも

「そういうあなたのことを/ずっと待ってた」なんて
告白される/そんな日がやってくるかな

 来ませんから。
 そんな日は絶対来ませんからそれだけは忘れちゃいけません。