video
Tags:Single、N1、Desire
「制服が邪魔をする」は、「制服」で象徴される制度に束縛されて(と同時に守られて)いる女の子の葛藤の歌でした。イメージはずいぶん違うが構造としては「セーラー服を脱がさないで」とそんなに変わらない。
1985年の歌だぜ、これ。秋元っちゃん進歩無いぞ。
ところがだ。
こっから先はちょっと先取りになっちゃうんだけど、その後AKBにおける「制服」の意味はどんどん進歩というか進化というか変容というか、とにかく違ったものになって行く。
たとえば「JK眠り姫」。2008年、A5の公演曲だから、「制服が邪魔をする」のA3から3年後。
秋元先生JKって言いたかっただけちゃうん?
ま、それはさておき、ここでは「制服」が自分を「守る」と同時に「縛る」という、初期のころにみられた葛藤は見られなくなっている。
汚れない少女性/処女性を守る殻としての「制服」ではあるが、ここには自分を縛るものというネガティブなイメージは微塵もない。なにしろまだまだ堅い殻の中/汚れていないその果肉
大事なものを守り続ける/キスで目覚めて
愛を知る日まで
ってくらいだから。時がどれだけ過ぎても/似合っていたいの制服
ちなみに「少女性/処女性」を守る殻とその破壊というテーマは「胡桃とダイアローグ」でも展開されている。これもイイ曲なんだけどねえ、話が散乱しすぎちゃうよねえ。
さらに2009年2月、B4の「女子高生はやめられない」になると、
と、「制服」は「守る」でも「縛る」でもない、男どもをノックアウトする「武器」になってしまっている。制服を着ていりゃ 勝ちゲーム/ハナノシタ男たち 一発ノックアウト
ところであれだね、この歌、いかにもTeam Bっぽくていいやね。
なーんて、まさにAKBのことじゃん。ちょい可愛い。平均以上。でもスペシャルじゃない。私たち 可愛いじゃん/それなりのルックス
スペシャルなんと言わないけど/平均以上じゃん
で、AKBという「制服」を着てれば「勝ちゲーム」。
こういう歌をいけしゃあしゃあとメンバーに歌わせる秋元康ってやっぱヘンタイ(イイ意味で)だよねえ。
2010年3月、K6の「制服レジスタンス」ではもっと複雑な様相を呈する。
私は/制服を着たレジスタンス
大人に抵抗し続ける
孤独な/制服を着たレジスタンス
大人対する抵抗(レジスタンス)という、歌のテーマ自体は昔っからあるおなじみのもの。でも昔だったらこういう時は、制服は脱ぎ捨ててたよね。
「大人が押しつける制服(という制度)はゴメンだ!」と言って、「制服廃止運動」とか言い出して菅直人に投票しちゃってたわけ。
でも「制服レジスタンス」は違う。制服を脱ぐどころか
だって。私が/制服を脱いだら
抵抗するものがなくなる
ここでは「制服」が、抵抗の拠り所にすらなっている。
おもしろいねえ。「制服は押しつけられたもの」「個性を抑圧するもの」という感覚が全くない。
AKBの制服風のコスチュームって、いつのころからかメンバーごとにヴァリエーションがあるようになったよね。ベースは同じなんだけど、アクセサリーとか着丈とかインナーとか、ディテールが一人一人違うものを着るようになった。
おそろのようでおそろではない。
でも全体の統一感、「AKBらしさ」は保たれている。
本来は対立するはずの「制服」と「個性」を融合させる工夫、と言えるかもしれない。
レジスタンスの拠り所であった「制服」がただの「男を釣る」道具に発展(進化? 堕落? 相対化?)したのが「I'm crying」。2010年7月からはじまったA6の曲。
このころになると、制服を着るとコスプレにしか見えないメンバーが増えてきた、ってのも「制服の持つ意味」の変化と関係してるのかもね。
ところでこれだけ「制服」についてぐだぐだ書き連ねといて何だが、ステージをよく見るとこの曲、制服着てないんだよね。