明日は明日の君が生まれる | Commentarii de AKB Ameba版

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Tag:AX、サヨナラ
 寄り道が終わりません。

 2009年のAXは「初日」が第1位になったことで記憶されている(言うまでもなく「くるくるぱー」は第0位である)。

 その時の8位がこの曲。スクリーンに曲名が映し出されると「うぉー」とも「えー」ともつかないどよめきがAXを満たす。そして暗闇の中から聞こえてくる透き通るような歌声。

たったひとつの空しかないよ/どんなに空が広くたって
大事な人とはぐれたとき/見上げる者を勇気づける

 そう、その時はすでにメンバーではなかった彼女の、水のような声。

 会場に響き渡る彼女の名。

 彼女について本当に語りたいことがある人たちは、口をつぐんでいる。
 シアターで彼女と出会い、ともに育ち、別れ、彼女とはぐれてしまった人たち。ネットを歩いていると彼らの情熱や哀しみがいたるところに残っている。
 それを知っていて彼女について語るのは、とても気が重い。 

今日まで歩いてきた道/今は二つに分かれてる

 彼女と彼らは別々の道を歩いて、ずいぶん遠いところまで来てしまった。

 AKBが有名になるにつれて、後から彼女を知った人増えた。僕もそうだ。握手はおろか、生の歌声すら聞いたことのない「新規」。それでもその時彼女がどんなに輝いていたかを想像することはできる。あったかいお味噌汁とからあげが恋しくもなる。
 
 アイドルとは虚像である。ファンはそれが虚ろなものと知っていて、そこに「愛」を注ぎ込む。
 「地下アイドル」でスタートしたAKBは多くのファンの愛(とお金)をエネルギーに、どんどん加速していった。その過程でスピードについて行けず自ら降りたり落ちたりしていった女の子たちがいたのは仕方のないことなんだろう。

明日は明日の君が生まれるよ/長い夜を越え
陽が昇るように/夢の続き
すべて捨てて/両手を広げよう

 これは別れの歌であると同時に、死と再生の歌でもある。西の果ての冥府に逝った太陽が、長い夜を経て生まれ変わる歌。

 彼女は別の名を得て、夢の続きを捨ててまでも新しい自分に生まれ変わった。その姿を望まない人々のことを思うと心は痛むが、その痛みは、愛したゆえのもの。

誰もが愛に傷ついて/その悲しみに立ち止まる
痛みが地図になって/迷ってしまう

 どれほど痛みが強かろうと、愛さなかった方がよかった、とは言えない。
 だってそんな気持ちになれるって、「僕」はついているね、なんだぜ?

 歌が終わった時にも彼女を呼ぶ声は会場に響いた。

 「里菜!」

 明日は明日の君が生まれるのならば、何度でも生まれ変わればいい。
 あなたの名を呼ぶ声は、今もどこかで響いているのですよ。
 
 聞こえる? りなてぃん。