会いたかった2 | Commentarii de AKB Ameba版

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 A2の3曲目にしてAKB48のメジャーレーベルからの初めてのシングル。
 いろいろな意味で、AKBにとって大切な一枚。
words
video
 「会いたかった」。
 さらっと聞くと、この歌は「会いたい人に会えた喜び」を全身で表しているようにみえる。でもこの「会いたかった」という言葉の背景には、二つの「会いたかった」が隠れている。
 一つは単純にかつて抱いていた「会いたい」という願望の過去形。
 「会いたいと思っていた。そして会うことができた。私はすっとあなたに『会いたかった』」
 そしてもうひとつ。
 かつて抱いていたが実現しなかった過去の願望。
 「会いたいと思っていた。でも会うことができなかった。私はあなたに『会いたかった』」

やっと気づいた/本当の気持ち
正直に行くんだ/たったひとつ この道を
走れ

 会いたい! という気持ちを、まっすぐにぶつけるんだ! と鼓舞するようなこの歌。勇気づけられた人も多かっただろう。でも「会いたかった」の中に「会えて良かった」ことを暗示するような歌詞は見当たらない。

誰よりも大切だから/この気持ち伝えたかった

 「伝えたい」ではなく「伝えたかった」。
 気持ちは伝えられたのだろうか?

 「会いたかった」と同じように、この表現には、「伝えたかった、でも伝えられなかった」というせつなさが隠れている。
 読み過ぎだろうか?

 PVを思い出してみよう。
 あのPV、AKB初のメジャーシングルのために撮られた館山オールロケによるPVは、海岸にたたずむ前田の姿とナレーションから始まる。
 放課後、海辺で音楽を聴く前田。それを見つめる峯岸、中西、小野。よしっと決意する前田、がんばれっと声援を送る3人。CDを返すことを口実に、会いに行こう!。前田の自転車ダッシュが始まる。

 それと同じ頃、灯台のところでだべっていた高橋と大島(優)のところに大島(麻衣)からメールが入る。「引っ越す先輩、今 駅から出ちゃうよ」。会いに行こう! 鞄を放りだして走り出す二人。
 そう、「会いたかった」のPVには、二つのストーリーが同時に展開されていた。
 自転車を飛ばす前田。ひたすら走る高橋と大島(優)。 
 
 前田は自転車を飛ばして飛ばして、学校の自転車置き場で会えた。
 会いたかった、そして会えた。伝えたかった気持ちを伝えられた。
 
 高橋と大島(優)は、二人して走って走って駅までたどり着いたが、電車は行ってしまった。
 会いたかった、でも会えなかった。伝えたかった気持ちは伝えられなかった。

 会いたかった。会えた人もいた。会えなかった人もいた。

 秋元は「かなわなかった思い」という、苦いフレーバーをさりげなく隠してこの曲を世に出した。思いはかなわないかも知れない。でも結果を恐れてはいけない、人と出会うためには、人は今いる場所から動き出さなくてはいけないのだから。

 地震で大切な人と離ればなれになった人たちが、一人でも多く会えて、「会いたかった。そして会えた」喜びに包まれますように。