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雑文と音楽

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「RCサクセションって知ってる?」

優斗は、同じクラスでフォークソング同好会の米村賢一に訊いてみたが知らないという。

 同じく同好会の山本力にも訊いてみたがやはり知らないという。米村は高田渡ファンだし、山本は吉田拓郎のファンでそれぞれカバー曲をレパートリーにしている。

 優斗も含め、3人とも一人で弾き語りのスタイルであった。

「知らないか」

 優斗は一旦がっかりしたが内心ほっとしてもいた。誰もRCを知らないということは、彼らとレパートリーがかぶる心配がないからだ。

 この二人が知らないのであれば、他の同好会メンバーもおそらく知らないだろう。知っていたとしてもレパートリーにしようというようなメンバーは思い当たらない。

 オリジナル曲を作ろうと考えていたがどうやら間に合いそうにない。それならばと、優斗は5月の定例演奏会にはRCのナンバーを歌うことにしたのだった。

 

 RCはギター2本とウッドベースによるフォーク・トリオだが、なんとか一人で弾き語りできそうな曲を探した。

 RCの曲は、優斗たち現役の高校生に響くものが多いと感じていたが、売れたような曲もないし、テレビに出演するわけでもないから知る人は少ないのかもしれない。同じクラスの仲間にも何人か訊いてみたがやはり誰も知らない。ここまで、知名度がないのか。もっとも、橋口以外は音楽に興味のある奴がいなかった。仕方ないかと思いつつ、なんとなく寂しくもあった。

 RCのボーカルは、忌野清志郎っていうらしい。優斗もそれほど詳しいわけではない。いつだったか、テレビのバラエティ番組に出演していたアマチュア・グループが古びたギターを弾きながらふざけたような歌い方をしていたのでよく憶えていた。RCサクセションと言う名の由来を訊かれて、「ある日作成しようということで」って答えていた気がする。

 ある日、ラジオの公開番組か何かで紹介されたフォーク・グループがあった。その名前とあの歌声、あの時のアマチュアだとすぐに気付いた。彼らはプロになったんだ。それが嬉しかった。

 音程を崩したような独特で個性的な歌唱は他に類を見ない魅力があった。清志郎の作る曲には毒気もある。中でも「三番目に大事なもの」が気に入った。

 女子目線の曲であるが、ちょっと皮肉を込めた歌詞が面白い。一番目が自分で、2番目が勉強ってそれらしい。三番目が「恋人」っていうけど、男の子ならだれでもいいとか、友達に見せるためや高校生活の想い出を作るためだとか辛辣なことを言っていながら、最後はやさしく「あなたよ」と特定するあたりが何とも言えずグッとくる。

よし、これに決めた。いつだったか、ラジオの番組でカセット・テープに録音しておいたものを小刻みにポーズをしながら歌詞を書き写し、適当にコードを当ててみたりしながらなんとか様になりそうな手ごたえを感じた。

 多少コードが違っていても、もともと清志郎が音痴のような歌い方をしているから大丈夫だろう。そもそも、この曲を知っている人は少なそうなのだから・・。

 

 

 

 

 

 信号のない交差点で左折しようとしたら、右手に軽トラックが見えたのでやり過ごそうと待っているとその軽トラおそろしく遅い。運転席に高齢の女性の顔だけが見えた。やっと目の前を通り過ぎようとしたとき、ちょこんと頭を下げたようだった。

 譲ってくれたことへのあいさつかなと思いながら、左折してその軽トラの後を走った。あいかわらず、遅い。見ると、古びたポンコツの軽トラだ。そういえば、一人で運転しているのにマスクしていたな。

 なんとなく、可笑しさが込み上げてきて、そのおばあちゃんが可愛く思えた今日この頃である。

 

 さて、本日取り上げるアルバムは、RCサクセションの『HARD FOLK SUCCESSION』(1982年)である。



 過去にも取り上げたことがあったが、前文の絡みもあって(笑)

 

 このアルバムは、ベスト・アルバムで『初期のRCサクセション』と『楽しい夕に』のアルバムからのピック・アップとシングル曲を収録したもので、もちろん「三番目に大事なもの」も入っている。

 

 この頃のRCとロック・バンドに変身してからの初期の頃が好きだな。