雑文と音楽 -29ページ目

雑文と音楽

思いつきの散文や好きな音楽を

 

 

 一学期も終わる頃になると、女子を除けば誰とでもくだらない話で笑いあえる仲になっている。特に仲の良い者たちの間では、土曜日になると誰かの家に泊まらせてもらうということがブームになっていた。

 期末テストが終わった今日は、村岡勇一の家に泊まることになっていた。

 村岡は、優斗よりもさらに遠方から通学していた。オートバイが好きで、たまにバイクで通学してくることもあった。もちろん、学校では禁止されているが、内緒で近くの目立たたない場所に停めていたのである。

 優斗も一度だけ後ろに乗せてもらって下校したことがあったが、味わったことのないスピード感が少し怖かった。優斗は、既に原付の免許だけは取得していたが、興味があったわけではなく単に持っていた方が便利だと思ったからに過ぎない。

 優斗は、多くの男子が一度は通るようなバイクやたばこなどには一切興味を示さなかった。興味があるのは、強いて言えば音楽と異性であった。

 

 村岡の家は、駅前のとおりを真っすぐ歩いて15分程度の住宅街にあった。

「まだかよ!」

 早速、杉沢滋がぶつくさ言いだした。予め言ってあったのに、文句を言うくらいなら来なければいいのにと思ったのは優斗だけだったのかはわからない。

 村岡の家は、築20年ほど経つ、木造2階建てのごく標準的な家屋であった。

2階の村岡の部屋に入るとすぐに雀卓を囲んで、覚えたての麻雀が始まった。最初の面子(メンツ)は、吉本秀一、桑野保夫、杉沢、それに優斗の4人である。他に、橋口豊、高山輝明も来ていたが、高山は麻雀には興味が無く、ただ見ているだけでいいと言っていたので、半荘(ハンチャン)勝負の2,3抜けでやることになった。

 優斗は、中学校時代の恩師から麻雀を教えてもらっていて、多少腕に覚えはあったが、桑野はまだ憶えたてであった。

 麻雀は性格が出ると言われている。杉沢は、負けが込んできたり、思うような“手”ができないとイライラを露わにしてくる。

「まだかよ、早く切れよ」

 初心者の桑野にあたる。

「ちょっと、待ってよ。考えてるんだから」

「どうせ、ろくな手じゃないんだろ?」「へたくそなんだから」「そんなところで鳴くなよ」

(いちいち、煩いやつだな)

「ちぇ、リーチかよ!せっかく、今良い手ができるところなのによ」

(そんなの知るかよ)

 段々、優斗までイライラが伝染してきそうだった。

 一方、吉本はマイペースで黙々とやっているが“先づも”するのが悪い癖である。

「あ、また先づもしてる」

 杉沢のチェックが入る。

「ああ、また満貫かよ」「そんなところで当たり牌きるかなあ」

 桑野と杉沢が代わる代わる振り込んでいた。

「お前は不用意に当り牌捨てているだけだけど、おれは勝負して振り込んだんだからな。お前とは違うんだよ!」

(いちいち煩いな。同じ振込のどこか違うんだあ?まったく、呆れるよ)

 優斗は、早くこの半荘が終らないかなと思うようになっていた。

 結局、吉本がトップで優斗が2位、次に杉沢、桑野という成績で半荘が終わった。

「ああ、つまんねえの」

 杉沢は、ふてくされて寝転がると、持ってきたマンガ本を読み始めた。

 優斗は、ため息を着くと橋口と交替して、その後ろで橋口のお手並みを拝見することにした。橋口の切り方も自分とは違っていて、見ていると面白い。

 

 村岡の家では夕飯にカレーライスを御馳走してくれた。これまでのどの家でもカレーライスだった。それが一番手っ取り早くて、出された方も食べやすいのである。

 村岡が1階と2階を何回か往復化して全員分を運んでくれた。

 食事のあとは、クラスの女子の話題になる。誰が可愛いだとか誰が色っぽいだとか、話題は尽きない。

「なんだかムラムラしてきた」

 何を思ったか、高山が突然ズボンを降ろすと、窓を開けて通りすがりのOLに何やら卑猥な言葉を浴びせたのである。

「よせよ!警察に通報されちゃうだろ!」

 慌てて、村岡が制止して窓を閉めるとみんな大笑いである。

「勘弁してくれよ、自分ちじゃねえんだからさ」

 相変わらず、挙動不審な高山である。村岡に謝ったものの、麻雀を見ているだけで退屈してたからさという変な言い訳をしていた。

 

「じゃあ、また始めるか。あれ、今度は誰が入るんだっけ?」

 吉本は、調子が良くて連勝しているため抜けられない。

 土曜日とはいえ、さすがに夜ともなれば音が響くだろうとそっと牌を混ぜようということにした。

 すると、下からトントントンと階段を上がってくる足音がした。皆、親父さんでも注意しに来たのか、あるいはさっきの高山の件で通報でもされたのかと一瞬緊張して様子を窺っていたが、足音は村岡の部屋を通り過ぎて奥の部屋に入っていった。

「だれ?」

「姉貴だよ」

「隣は姉ちゃんの部屋なの?じゃ、あいさつして来なきゃ」

 高山がGパンのチャックを締めながら腰を上げると、慌てて村岡が止めに入る。

「あいさつはいいから!」「まったく、油断も隙もないんだから」

 村岡が半ば本気で焦った様子にまた笑いが起こった。

 

 こうして楽しい「お泊り」が終わると、いつの間にか外が白々してきた。雑魚寝から一人、また一人と身体を半分起こしては、あくびをしてまた横になる。

「次は、誰んちにしようか」

 誰かが寝言のようにつぶやいたが、優斗は、聞こえないふりをして、また目を瞑った。

 

 

 

 

 

ффффффффффффффф

 

 熱海から帰ってきたら、ものすごい朝の冷え込み。やっぱり、あちらは温暖な気候なんだなと改めて感じた今日この頃である。





 さて、本日取り上げるアルバムは、JOHNNIE TAYLORの『THIS IS YOUR NIGHT』(1984年)である。

 



 このアルバム、マラコ・レコードに移籍後の第1弾の作品である。

 スタックスでのザラザラした少し荒削りなサウンドも好きであるが、洗練されたマラコ・サウンドは円熟したジョニーの歌唱にぴったりハマってる印象がある。

 

Johnnie Taylor - Still Called The Blues (Lyric Video) - YouTube 

 

After Hours Joint - YouTube