雑文と音楽 -27ページ目

雑文と音楽

思いつきの散文や好きな音楽を

 

 

 優斗は、首都近郊地域の農家に生まれた。両親は、米麦や露地野菜を中心に栽培し家計を支えてきた。優斗が小学生の頃は、よく家の手伝いをさせられた。当時の農家では当たり前の光景であるが、優斗の家は特別子どもの手伝いを強要したのである。

 田植えに始まり、稲刈り、小麦の種まきから麦踏みや麦刈りまで手伝った。露地野菜では、茄子にトマト、ピーマンなどの夏野菜から、秋になればさつまいも、ねぎ、大根、白菜、山芋、三つ葉、加えて椎茸などの収穫時期を迎える。父親は、できるものは何でも栽培し、出荷していた。

 一時期、養豚業も行っていたのである。親豚が出産するときは、徹夜で豚小屋に泊まっていた。優斗も一度だけ立ち会ったことがある。生命の神秘とまではいかないが、貴重な体験をしたと優斗本人も感じている。

 とにもかくにも、友人たちが遊んでいるときにも家の手伝いで一緒に遊ぶことができなかった。それが嫌で、高校生になると何かと口実を作っては手伝いをさぼるようになっていた。

 やがて、父親は土建業の季節労働者として働くようになっていた。天候に左右される農業よりも現金収入のある業種に専念する方が家族のためにもなると思ったからである。

 そのため、優斗にとっては都合よく夏の手伝いが少なくなっていた。

 

 夏休みに入ると優斗はやることもなく退屈な日々を過ごしていた。

 昨年と違って、臨海学校もなければ部活の合宿もない。学校に行きさえしていれば、何かの刺激があり、友人たちとふざけながら楽しく過ごすことができたのである。

 特にクラスの女子に会えないのが寂しかった。女子と何をするというわけでもなく、ただ、教室と言う同じ空間にいるだけでよかったのだ。早く夏休みが終わらないかな、始まったばかりなのに優斗は湯鬱であった。

 今日は何しようかと考えていると、橋口から電話がかかってきた。みんな集まるから遊びに来いよと言う誘いだった。夏休みに入っても、まだ、お泊りブームは続いていた。

 

「北海道はどうだった?」

 雀卓を囲みながら村岡が桑野に訊いた。桑野は、杉沢に誘われ、休みに入るとすぐに札幌にある杉沢の親戚の家に遊びに行ったのである。桑野が酷い目にあってきたという噂を聞いていて、あえて村岡は訊いてきたのだ。

「どうもこうもないよ。行かなきゃよかったよ」

 そこにいるメンバーは、面白半分に桑野の表情を窺った。

「何があったの?」

 橋口もつっこむ。

「なにしろ、使いっ走りはさせられるし、親戚の家に泊まらせてもらったのはいいけど、杉沢の奴、ずっとマンガ本見ていて一歩も外にでかけないんだよ」「せっかく来たんだからどこか行こうよと誘っても、自分は毎年来ていているから一人で行ってっこいよって、言うんだよ、何しに行ったんだか、頭に来ちゃった」

「ええ、そうなの?そりゃ、ひでえな」

 皆、口をそろえて桑野に同情する。

「結局、どこへも行かなかったの?」

 今度は、優斗が訊ねる。

「いや、親戚に三歳上のもう働いている従弟がいて、わざわざ休みとってくれていろいろと案内してくれたんだよ」

「杉沢は?」

「一緒には来なかった。家で何してたんだか、訊かなかったし」

「そうだったんだ」

 二人の様子が容易に想像できたので、さすがに皆桑野に本気で同情し始めた。

「帰りの列車だって、途中の駅で停車中に弁当買いに行かされたり、ドアが閉まってしまうから慌てて買って来たら来たで、自分の好みの弁当じゃないとか、お茶がなくちゃ飯食えねえとか文句言うし、頭にきてそれから上野に着くまで口きかなかったよ」

「ひでえ奴だな」

「行かなくてよかったあ」

 村岡がつい本音を漏らしてしまう。

 そんなことだろうと、杉沢に誘われても誰も行かなかったのである。向う見ずな桑野だけ、北海道に行けると喜んで誘いに乗ってしまったのであった。そんな桑野の話を聞きたくて、今回は杉沢に声をかけていなかったのである。

 優斗も、桑野の話を聞いて、行かなくてよかったと心底思えた。もっとも、北海道までの旅費を親にねだるのも躊躇いがあったし、わがままな杉沢と行っても楽しくないだろうなと容易に想像できたからである。

 桑野はほんとに災難だったな、返す返す気の毒に思う優斗であった。

 

 

 

 

 

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 Spotifyでは、毎年、この時期になると頼んでもいないのに勝手にいろいろと“まとめ”てくれる。中でも注目したのは、私が今年一年聴いてきたジャンルの第1位は「ブルース・ロック」だそうな。以下、2位がシティ・ポップ、3位サザンロック、4位フォーク、5位ソウルだということである。なるほど、そうなのかなと半分納得の今日この頃である。

 

 さて、本日取り上げるアルバムは、LITTLE MILTONの『BACK TO BACK』(1988年)である。



 チェスやスタックスなどを得てきたリトル・ミルトン。通算17作目?にして、マラコ・レコードでは5作目にあたるアルバムである。

 

 ブルーズン・ソウルで名を馳せたリトル・ミルトンであるが、本作も実に充実した歌を聴かせてくれる。

 ほんとに上手いね。

 迫力もあるし、堂々たる歌いっぷりが憎いほどに素晴らしい。

 

Little Milton - I Was Tryin' Not to Break Down (Lyric Video) - YouTube

 

The End of the Rainbow - YouTube