雑文と音楽 -19ページ目

雑文と音楽

思いつきの散文や好きな音楽を

 

 

 今年も文化祭の日がやってきた。

 1年の時は、応援団として体育館のステージの“トリ”を務めた。今年は、“トリ”ではないが、フォークソング同好会のメンバーとしてここで演奏ができる。

 昨年、先輩の演奏をチラ見したときから、自分もこのステージで歌いたいと憧れていた。その機会がやってくるのである。

 

 文化祭は、土曜の午後から一般開放され、翌日日曜の夕方までの間、各クラスやクラブ単位で出し物やイベントが行われる。

 フォークソング同好会の主な発表会場は視聴覚室であるが、体育館でも一定の枠が予め割り振られていた。

 優斗は、土曜日は視聴覚室、日曜日には体育館に出演することになっていた。

 その頃になると、RCサクセションのカバーのほかに遠藤賢司や友部正人のナンバーもレパートリーに加えていた。ブルース・ハープも安価なものを2本、C調とA調のものを揃えて練習してきた。

 相変わらず、RCは校内ではマイナーで知る人がほとんどいなかったため、優斗のオリジナル曲だと未だに思い込んでいるものも少なくなかった。

 土曜日の視聴覚室で、まずは“肩慣らし”のような気持ちで歌った。あくまで、メーンは体育館だと考えていたのだ。

 

 いよいよ、あこがれの体育館のステージである。

 ステージ上には、パイプ椅子がぽつんとひとつだけ置かれてある。司会に紹介されると拍手の中ステージの袖から登場する。視聴覚室のような狭い空間と違って、ステージがかなり広く感じる。当然、客席も格段に広い。ステージ上からはっきりと客席が見渡せた。

 沼田やいつもの仲間が来てくれている。珍しく、杉沢の姿も見えた。昨年フォークダンスを踊ってくれた一年先輩の名も知らぬ女子が例の彼氏と一緒に座っている。大林加奈子や北村杏子を探したが見つからなかった。今日は来てくれないのか。

 200席ほどある椅子席も数席を残してほぼ埋まっている。まだ空席があるのに客席の両脇や後ろに立っている者もいる。ふと、そこに見慣れた人物の姿があった。中学校時代の恩師、細井弘だ。わざわざ、来てくれたんだ。優斗は、俄かに嬉しさが込み上げてきた。

 ハーモニカ・ホルダーを微調整すると深呼吸をひとつする。徐にハーモニカを咥えた。ギターと同時にハーモニカを吹きだす。1曲目は、遠藤賢司の「待ちすぎた僕はとても疲れてしまった」だ。

 この曲は、淵本からダメ出しをもらっていたがどうせ知っている人はいないだろうからと伴奏は適当に誤魔化している。自分は歌で勝負するんだから。

 歌の途中から大林と北村が会場に入ってくるのが見えた。あれほど、開演時刻を教えておいたのにな。ま、来てくれただけいいか。二人はこそこそと空いているパイプ椅子を勝手に移動して真ん中の一番後ろに陣取ったかと思うと手を振ってきた。視界に入った二人の様子が滑稽で、優斗は歌いながら笑いそうになってしまった。

 2曲歌い終ると少しMCを交えて、笑いをとる。そんな余裕もでてきた。“デヴュー”の時と比べても随分自信がついた気がする。

 3曲目は、「三番目に大事なもの」を予定していた。曲名を紹介するとそれまで以上に大きな拍手が沸いた。優斗は、すっかり気分がよくなり、歌うことに熱くなっていった。何かこの歌は、同年代には響くものがあるようだ。

 最後の曲は、友部正人の「一本道」にした。これも新たに加えた曲だったが、前日の視聴覚室でも歌っていたせいか、拍手も多かった。これもブルース・ハープを吹きながらの演奏である。

左手でギターのコードを押さえ、右手でストロークやピッキングをしながらハーモニカを吹く。最初は、自分にできるかなと心配したが、慣れるまで思いのほか時間はかからなかった。

 すべての演奏が終わると、立ち上がって深々と礼をするとさらに大きな拍手をあびた。緞帳は降りてこないのでそのまま袖にはけると、優斗は、裏の階段を降りてすぐに細井を探した。辺りを見渡すと、体育館からぞろぞろ出てくる群れの中に細井の姿を見つけた。

「先生!」

 優斗が叫ぶと、細井はその声に気づいて振り返った。

「来てくれたんですか?」

「おお、斎木君。よかったよ。君、人気あるんだね」

「いや、そうでもないですけど」

 優斗は謙遜してみせる。

「これからまだあるんだろ?」

「私の出番は終わりですけど・・」

「私はこの後用事があるからもう帰るよ」

「そうですか。わざわざ、ありがとうございました」

 細井は、忙しそうだ。そんな中、自分のステージを見るためだけに来てくれたのだ。優斗は、眼がしらが熱くなるのを覚えた。

「優斗、よかったよ」

 細井の後姿を見送っていた優斗に“親衛隊長”の沼田が声をかけてきた。一緒にいた橋口ら仲間は、何も言わず沼田の後ろでニヤついている。

「斎木君、カッコよかったよ」

 すかさず加わってきたのは大林と北村であった。その後ろにも、ステージ上からは気づかなかったが級友たち何人かが顔を出していた。

「みんな、ありがとうね」

 思いのほか、大勢が見に来てくれたことが嬉しかった。

「じゃあ、駅前のラーメン屋で打ち上げやろうぜ」

 沼田が提案すると、いいねと何人かが賛同した。

(打上って、君ら何もしてないけど・・)

「大林らも来る?」

「う~ん、私はいいや。男子だけでやってきて、ね?」

 橋口が訊くと、大林は北村を見ながら答えた。

「じゃ、行こうぜ」

 結局、行きそうなのはいつものメンバーだ。

「おれもすぐ後から行くから、先やってて」

 昨年の文化祭は、後夜祭のファイア・ストームが楽しかった。優斗は、大林らの動向が気になった。

「この後、どうするの?後夜祭出るの?」

「どうしようかなあ? 杏子、どうする?」

「どうしようか?」

 出るのか出ないのか早くはっきりして欲しいとは思いつつ、二人が出るって言ったらどうしようかまでは考えてなかった。

「俺、後夜祭出ようかな?」

「ダメでしょ、みんな待ってるよ」

「そうなんだよな、後から行くって言っちゃったからなあ」

「さあ、早く行って行って」

 大林に背中を押されて、優斗はつまづきそうになる。

「わかったよ、行くよ。じゃあ」

 優斗は、後ろ髪をひかれる思いで学校を後にした。肩のギターが少し重かった。

 

 

 

 

 

ффффффффффффффф

 

 今朝、窓を開けると、朝もやの中に陽が射してきて、雨あがりの庭で雀が数羽遊んでいるのが見えた。今日は、結婚記念日。近所のレストランで慎ましくお祝いしてきた。あと何回一緒に記念日を迎えられるだろうかと考えてしまう今日この頃である。

 









 さて、本日取り上げるアルバムは、J.GEILS BANDの『“LIVE” FULL HOUSE』(1972年)である。

 



 1970年にデヴューし、2枚のアルバムをリリース後、早くもライヴ盤をリリースしたJ.ガイルズ・バンド。

 それだけライヴ演奏に自信と魅力があった証拠なんだろうね。聴けばそれがすぐわかる。

R&B、ブギー、ロックン・ロールにブルース、黒っぽい雰囲気の曲のオンパレードだ。全8曲中ファーストから6曲、セカンドから2曲、スピード感があって、一気に聴き終わってしまう。

 

とにかく、ピーター・ウルフがかっこいいし、マジック・ディックのハーモニカも欠かせない。もちろん、J.ガイルズのギターも聴かせどころはちゃんと心得てるね。

 

臨場感も半端ない。絶対、大音量で聴きたいアルバムだ。

 

J. Geils Band - Hard Drivin' Man - Live Full House - YouTube

 

Looking for a Love - J Geils Band - Live Full House - YouTube