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雑文と音楽

思いつきの散文や好きな音楽を

 

 

 夜の外出から帰ると大林加奈子と北村杏子はパジャマに着替えた。宿の浴衣では、寝ている間にはだけしまうので女子のほとんどはパジャマやジャージに着替えていた。

 数人でお菓子を囲んで始まった恋バナもそのうち一人二人と抜けていき、最後に加奈子と杏子だけが残った。

 他の女子が居なくなったのをきっかけに恋バナの延長の振りをして加奈子はこれまで気になっていたことに触れみた。

「杏子はさ、今まで訊いたことなかったけど、誰か好きな子いないの? 」

「特にいないよ」

 杏子は、チョコをひとつ口に入れ、左側の頬を膨らませながら何気ない顔でいる。

「加奈子は?」

「私?私もいないよ」

 杏子の本音を訊きだそうとしているのに自分は早くも嘘をついている。のどに引っかかった後ろめたさをファンタ・グレープで呑み込んだ。

「だって、クラスの男子って、ちょっとガキっぽくない?いつもバカばっかりやってるし・・・」

 加奈子はそう言いながら笑った。もしも、杏子も優斗を好きでいて私が本音を言ってしまったら、杏子は私に遠慮して自ら身を引くに違いない。杏子はそんな子だ。杏子は可愛くて好きだし、一年の時から仲良くしてくれた。杏子にはそんなことをさせたくないと思っていた。

「そうだよね」

 杏子も笑う。

 ああ、このままじゃ、話が終っちゃうよ。加奈子は、優斗に対する杏子のほんとうの気持を確認しないと自分は前に進めない気がしていた。思い切って訊いてみようか。

 

「斎木君なんか、どう?」

 ちょっと唐突過ぎたかなと一瞬加奈子は思ったが、もう言ってしまったから仕方ないと成り行きに任せることにした。

「え?どう?って」

 杏子はあくまでクールだ。だが、表情を変えないように意識しているのは加奈子にもわかった。

「斎木君って、杏子と合うんじゃないかなと思って・・」

 ああ、変な展開だ。加奈子は、自分の中で何かが壊れていくのを感じていた。

 杏子の表情は少し緩んだが、やがて真剣な眼差しに変わった。

 杏子は、加奈子なら自分の気持ちを理解してくれるのではないだろうかと思い始めていた。加奈子に言ってしまえば、軽くなるのではないか。加奈子になら素直にほんとうのことが言えそうな気がしてきた。

「私ね・・さっきは誰もいないって言ったけど・・ほんとうは・・斎木君のことが好き」

 ああ、言ってしまった。言ってから、はっとしたような顔になる。まるで今気がついたような表情だ。

 加奈子は、杏子の本音を聞いてやっぱりねと納得したが、その一方では訊くんじゃなかったという後悔の念も頭を持ち上げてきた。でも、もう後戻りはできない。“最後”まで行くしかないんだ。

「斎木君のどういうところが好きなの?」

「斎木君って、あまり出しゃばらないじゃない」

 杏子は、我慢していた思いが溢れ出して、いつになく饒舌になっていく。

「みんなといるときは、どちらかというと聞き役だよね。ある意味、神秘的っていうのかな・・。見ていると誰にでも優しいし、何事にも誠実な気がする。安心感というか、一緒にいたいという気持ちにさせるんだよね」

「そうだね~」

 加奈子は、杏子が自分と同じようなところを見ていて、同じような思いをしていることに安心と共感を覚えたが、私も好きだなどとは今更言えない。

 だけど・・・。

 そう思っても、やっぱり私も好きなのだ。

(どうしよう)

 加奈子は、杏子から本音を訊きだしたのは良かったがそのあとの展望を持ち合わせていなかった。

「どうしたの?加奈子」

「あ、ごめん。ぼうっとしてた」

 加奈子は作り笑いをして見せる。

「斎木君も杏子のこと好きみたいよ」

 加奈子は橋口とのやり取りを思い出すと、子どもがする何かの言い訳のようにとっさに口にしてしまった。

 自分の気持ちを吹っ切るためには、言ってしまった方が反ってよかったのだと、言ったあとで自分に言い聞かせた。

「え?うそ!」

 杏子の眼がパッと開く。同時に耳が赤くなった。

「そんなこと、誰から聞いたの?」

「この前、橋口が言ってた」

 それはほんとのことだ。

「え~、ほんとに?」

 杏子は、頬まで赤くしながら嬉しさをこらえているように見えた。かわいいと改めて感じる。やっぱり“両想い”じゃ勝ち目ないな。杏子には勝てない。勝とうとも思わない。自分のホントの気持ちは言わないでやっぱりよかったんだ。

 でも・・・

(なんだか泣きそうだ・・)

「ちょっと、トイレ・・」

 そう言って、加奈子は突然腰を上げた。下を向くと今にも涙がこぼれ落ちそうだった。加奈子は少し天井を見上げるようにしてそのまま小走りに出て行った。

 

 しばらくして加奈子が戻ってくると大丈夫?と杏子が心配する。

 加奈子は大丈夫と答えると、何か良いことを思いついたような口調で提案した。

「そしたらさ、杏子から言っちゃいなよ」

「え?何を?」

「斎木君って、優しいけど煮え切らないところもあるんじゃない?だから、杏子から告白しちゃいなよ」

「ええ?いいよ、恥ずかしいよ」

「大丈夫だよ。私が応援するから・・」

「ええ?どうしよう」

 そう言いながら、杏子は半分その気になってきた。

 

 消灯時間になると、二人は部屋の一番奥の布団に隣り合わせで寝た。布団の中でヒソヒソと告白作戦の続きを練っていたのである。

「そこの二人、いい加減もう寝てよね」

 入口に一番近いところの布団に真っ先で陣取っていた学級委員の安田秀子が少しヒステリックに半身を起こした。

「あ、ごめん」

「もう、寝ま~す」

 怒られちゃったね、クスっと笑うと二人は「もう、寝よう。お休み」と言って布団にもぐりこんだ。

 お休みと言ったものの加奈子はなかなか寝つけなかった。眼をつむるといろいろなことが頭に浮かんできては消えていく。改めてこれでよかったのかと自分に問うてみても、なかなか答えを出せないでいる。

 となりで杏子は早くも寝息をかいていた。

 仕方ない。これでいいんだ。杏子の無防備な寝顔を見ていたらそう思えてきた。私は杏子のキューピッドになろう、そう自分に言い聞かせて寝返りを打つと右の耳に流れてきた温かいものに気づいた。

 加奈子は枕でそっと拭うと、やがて深いしじまの中へ沈んでいった。

 

 

 

 

 

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 先日は、昔の会社仲間とゴルフに行ってきた。今回はいつになく事前に練習を重ねた。これまではどうやってもいいショットが出ないと拙いスイングが身についてしまうからと早々にやめて帰ってしまうのだが、今回はむしろ納得のいくショットができるまで粘って練習した。

 その結果、前半はまずまずだった。スコア以上に内容が良かった。やはり、練習の成果なのだろうと益々やる気になった。

 こうやってコツコツと練習を積めばいくらかは上達するだろうにと思えるのはゴルフだけで、どうしてドラムは同じように思えないのだろう。





 さて、本日取り上げるアルバムは、DIANA ROSSの『DIANA ROSS』(1976年)である。



 

ダイアナ・ロスは、同じタイトルのアルバムを実は1970年にもリリースしていて、そちらはソロ・デヴューアルバムで前に取り上げたことがあった。

 

 他にも『ROSS』というタイトルのアルバムも2作、『DIANA』というアルバムもあって紛らわしい。

 

 本アルバムは、ソロ6作目にあたり、自ら主演した2作目の映画「マホガニー」のテーマ曲「Theme from Mahogany」や「Love Hangover」などの大ヒット曲が収められている。

 



Diana Ross - Do You Know Where You're Going To (Theme from Mahogany) / Mahogany (1975) - YouTube

 

 



https://www.youtube.com/watch?v=Y9-7rcKxIc8&list=RDY9-7rcKxIc8&start_radio=1