※第17話の前に18話をアップしてしまいました。既に読んでいただいた方もいらっしゃるようでしたが、こちらから先に読んでいただけたら幸いです。第18話は、一旦、取り下げたので、このあと改めてアップします。バタバタしてすみません。
誤字脱字ばかり、その辺りは想像していただけると助かります🤭
「この前はありがとね~」
次のレッスンで浅井と会うと聞えよがしにあいさつされた。
「小谷野さん、行ったんですか?」
高石は、バツが悪そうな顔をした。
「ええ、特に用事もなかったんで・・」
何と答えたらいいのかわからず、ただ正直に答えた。
「小谷野さんだけだよ。来てくれたのは・・」
あからさまなもの言いに小谷野は抜け駆けをしたような変な後ろめたさみたいなものまで感じてしまう。
「俺も行きたかったんだけど、ちょうどカミさんの用事が入っちゃって・・」
そんな言い訳言う必要があるのだろうか。もともと強制ではないし、チャージ料や飲食代も別に支払うわけだし、行かなかったからと言って恐縮する必要はまったくないのにと小谷野は思う。
「また、今度やるからさ。今度は来てみて。及川さんも良かったら」
同じレッスン仲間の若い女性、及川由香はきょとんとした顔をしている。
「え?え?何の話ですか?」
「聞いてなかったの?まあ、いいや」
ほんとに聞いてなかったのか、振りをしているだけなのかはわからない。後者だとすればなかなかのタヌキだ。小谷野は、面白い娘だなと、この及川という女性に興味が湧いてきた。
彼女は、小学校の教員をしているということが分かった。
講師の浅井が基礎練習をしながら入れてくる突っ込みでそれがわかったのである。別に答えたくなければ濁していればよいのであるが、なかなかそれができにくい雰囲気を浅井は持っている。
教員だと知ると例の小学生二人は、また顔を見合わせてクスクスと笑う。
それを知ると、隣に座っていた高石がどこの学校かと話しかけてきた。スティックを振り降ろすたびにベルトの上の肉が揺れている。及川は苦笑いを浮かべながら、それに対しては言葉を濁していた。
高石は、現在失業中で、雇用保険をしっかりもらってから次の仕事を考えているらしい。これも浅井の突っ込みからわかったことだ。もっとも、高石は話好きで、一番早くからレッスンを受けてきたせいか、浅井とは既にフレンドリーな関係になっていて、個人的な話も普通にできる間柄になっていた。
小谷野も振られることはあるが、差し支えないことは答えるにしてもそうでないことについては適当に濁している。小谷野は、こういった時間が不満であった。講師と生徒という関係上、コミュニケーションをとるのはいいことであるが、できればもっと練習に集中したい。
ただでさえ基礎練習が長いため、残った短い時間では新たに憶えることが少ないし、進み方も遅いと感じている。雑談に夢中になって、スティックを持つ手が止まってしまうことさえあるからだ。
安くはないレッスン料を払っているという思いもある。雑談をしに来ているわけではないのだと言いたかった。
「さ、今日は何やろうかな。前回はなにやったんだっけ?」
浅井が高石に訊くと持ってきたノートをえ~とと言いながら広げている。
「え?ノートつけてるの?真面目だね」
浅井は記録してないようだ。逆でしょと小谷野は呆れる。
「前回は・・・」
高石がノートを見ながら答えると、浅井はありがとうと言って「じゃあ、今日はこれやろう」と練習が始まった。
浅井のレッスンは、このように一定のカリキュラムがあるわけではなく、行き当たりばったり的なところがある。主宰している楽器店もレッスン内容は講師まかせのようであった。
この点、幾ばくかの不安もあるが、やることすべてが小谷野にとっては新しいことになるため、それはそれで新鮮であり、楽しくもあった。当面は、浅井のレッスンを続けようと考えていた。
ффффф ффффф ффффф
さて、本日取り上げるアルバムは、DEXTER GORDONの『GO』(1962年)である。
やっぱり、私はテナー・サックスが好きなようである。
デクスターのふくよかで哀愁ある演奏が好きである。
このアルバムでは、なんといっても1曲目の「Cheese Cake」である。この曲、デクスターを知る前からどこかで聴いていたような印象的なメロディである。
2曲目の「I Guess I’ll Hang My Tears Out To Dry」などのバラード演奏もいい。
演奏者は、
DEXTER GORDON(ts)
SONNY CLARK(p)
BUTCH WARREN(b)
BILLY HIGGINS(ds)
