文字を入力して読み上げるアプリは、声で話しにくい人の会話手段になります。自由入力を中心に使う場合は、伝えたいことを文字にでき、本人に合った方法で入力・再生できるかが判断のポイントです。難しい部分があれば、そこで「本人には使えない」と決めず、文の作り方と操作方法を分けて調整します。
選ぶときは、Web記事やPDFを聴くためのリーダーと、入力した短文や保存文をすぐ再生できる会話用アプリを分けて見ます。会話用では、入力のしやすさ、定型文の呼び出しやすさ、相手に見せる文字の大きさを確かめてください。入力した文は「読む内容」ではなく、本人の発言になります。
「文字が読める」だけでは判断できない
まず確かめたいのは、本人が日常で使う文を自分で作れるかです。メニューに書かれた「うどん」を読めても、「ねぎは抜いてください」を入力できるとは限りません。自由入力では、質問を理解することに加えて、言葉を選び、文字にして入力する負担もかかります。
特に、失語症などで話す言葉が出にくい人は、文字なら必ず出せるとは限りません。反対に、声が出なくても読み書きは保たれていて、スマートフォンの入力に慣れている人なら、文字読み上げが実用的な発話手段になることがあります。診断名や「声が出る・出ない」だけで決めず、本人が実際に作れるメッセージを見ます。
操作については、端末を置く位置やキーの大きさを調整したうえで、入力や訂正を無理なく続けられるかを確かめます。文字を作れても、再生ボタンが見つからない、手の震えで隣のキーに触れる、画面を見ると強く疲れるのであれば、表示や入力方法の調整が必要です。
問診では、どこまで会話を続けられるかを見る
たとえば診察室で、医師が「いつから痛みますか」と尋ね、本人が「昨日の夜からです」と入力して読み上げたとします。続けて「どのあたりですか」と聞かれ、「右の耳の奥です」と返せる。さらに「薬で発疹が出たことがあります」と自分から付け加えられる。この一連のやり取りができるなら、文字入力型の道具は問診の会話手段として機能しています。
ところが、一問目の意味は分かっても答えを文字にできない、選びたい漢字が見つからない、入力中に疲れて止まるという場合があります。家族が毎回答えを推測して代わりに話しているなら、本人が選んだ内容を伝えられる方法へ調整が必要です。
答えを文にしにくければ、「今日/昨日/一週間前」の選択肢を指す、身体図で場所を示す、はい・いいえで確認する、写真や絵記号から選ぶなど、本人が答えを作りやすい形に変えます。文字で答えを作れても手で押しにくいなら、キーガード、スイッチ、視線など、文字入力を続けられる操作方法から検討します。
自由に打てる人にも、定型文が役立つ場面がある
自由に文章を打てる人でも、すべてを毎回入力する必要はありません。「文字で返事をするので待ってください」「もう一度、短く言ってください」「違います。入力し直します」といった文をすぐ出せると、会話の進め方そのものを本人が調整できます。
受診前には、服薬やアレルギーに関する文も準備できます。よく使う文は保存しておき、その場で変わる症状や時期を自由入力で補います。
会話相手には、本人が入力している間は話題を変えず、勝手に文を完成させず、音声が終わるまで待ってもらいます。聞き取れなければ、本人の了解を得て画面の文字を見ます。
試すときは、やり取りが止まった場所を見る
次の受診で起こりそうなやり取りを一つ選び、使う場所に近い条件で試します。質問に答えたあと、聞き返しや訂正まで続けてください。できた数で採点するのではなく、どこで止まり、何を変えれば続けられるかを見ます。
文を作るところで止まるなら、選択肢や写真を加えます。内容が決まっているのに押せないなら、端末の置き方や入力方法を変えます。調整後も本人が選んだ内容を無理なく相手へ届けられるなら、そのアプリは会話手段の有力な候補です。