ある一つの話をしよう。
アニメ『ご注文はうさぎですか?』とゲーム『メタルギアソリッド』を
組み合わせたMAD動画が一時期、ニコニコ動画に流行り始めた。
アニメのシーンとゲームのプレイ動画を巧妙に上手く編集して繋げた
MAD動画だが、その超絶な神プレイと可愛いアニメの声や
アニメのシーンなどで編集したMAD動画は瞬く間に有名になり、
100万再生を越えていた。
次から次へとプレイ動画MADを上げていっては100万再生を達成する。
誰もが思った。このうp主は何者なんだろうと。
僕とその友人もそう思った。
僕と友人は大学生であった。趣味はアニメとゲームなので、
このMADの存在もいち早く知った。そしてこのアニメとゲームが
とてつもなく好きなんだと、うp主から感じ取れていた。
次第に僕達の興味はうp主に向いていく。
会ってみたいと思うようになっていたのだ。
彼と言っていいのか、彼女と言ってもいいかわからないが、
彼にコンタクトをとった。いや、正確には向こうからとられた。
コメントで僕達もアニメとゲームの好きさを語った。
そうしたらアカウントに直接メッセージが送られてきたのだ。
君たちはアニメも僕の事もとても好きなようだね、と。
そのメッセージは僕と友人にも送られていた。
なぜか知らないがチャンスだった。
会いませんか?と僕達二人は熱烈なラブコールをした。
今思うととても僕達の行動は褒められたものではない。
出会い厨そのものであった。
しかし向こうの反応は嫌々とも思えず、文章も淡々としたものであった。
わかりました。では会いましょう、と。
そんな快諾の返信が来たのはすぐであった。
当日。僕と友人は緊張していた。
指定場所を僕の家にしたのも原因の一つだが、一番はどういうやつで
どういう性格の人が来るんだろう?という事であった。
可愛い女性だったら……という期待もあったかもしれない。
だが緊張と裏腹に楽観視していた事もある。
きっとアニメとゲームの話で盛り上がれるに違いないと。
集合時間ピッタリでうp主は来た。家のドアを開けた瞬間、
僕たちはぎょっとした。
目の前には毛布にくるまっている人が立っていた。
いや、人なのだろうか。そのくるまりかたは小さく、
僕達、大学生の身長の半分であった。
あなたがうp主さんですか?待ってました。どうぞこちらへ。
その声はうわずっていたかもしれない。
うp主は無言でお辞儀をして家に上がった。靴ははいてたのか
はいてないのか確認するのは忘れたが、
もそもそと僕達の後ろを這いずっていくのはなんか奇妙であった。
部屋に入り僕達は自己紹介をした。
うp主はうなずくだけで言葉を一言も発しなかった。
うp主さんも自己紹介出来たら頼みます……。嫌ならいいですけど……。
その言葉に毛布の中から一枚のディスクを吐き出した。
僕達二人は一緒に顔を見合わせながらも、
パソコンにそのディスクを入れる。
入っていたファイルはMAD動画だった。
再生してもいいですか?との問いかけにうp主はうなずく。
心なしかテンション上がり気味にうなずいたように僕達は感じた。
それは新作であった。僕達とうp主は食い入るように
パソコン画面を見つめる。不思議な一体感であった。
言葉も通じない、姿も違うが好きな事だけは共通してる。
僕達は楽しく動画を観れた。
ここ、うp主さんのこだわりを感じるよね。コメントでも言ったけど、
ここの難しいプレイはやり込んでないと出来ない。
僕達は会話に花を咲かせた。
うんうんとテンション上がり気味にうなずくうp主。
それが喜んでるようにも感じた。動画の最後に文章が出てくる。
このMADで引退しますという内容であった。
えぇ!?なんでうp主さん!!僕達は声を荒げた。
自分の好きなモノを伝えられて良かった。
多くの人がその好きを共感してくれて良かった。
多くの人と知り合えた。だから引退。
この多くの人って僕達の事?うp主はこくこくと頷いた。
動画が終わり、静寂が流れる。その静寂さを感じたのか、
うp主は一冊の漫画を吐き出す。
なにこれ……?上手い!!もしかしてうp主さんが描いたの!?
こくこくと頷いた。僕達はその漫画を読み始めた。
まるで実際の漫画家のような画力であった。
どれだけ多才なんだろう、うp主さん。
漫画はとある大きな屋敷のシーンから始まっていた。
一族の由緒あるお家柄。そこの一人息子は外へ出たかった。
しかし周りや執事はそれを許さなかった。
一族一番の秀才で彼が居れば一族は安泰。
そんな彼に自由な生活など無かった。彼は頭が良かった。
漫画の最後に彼は脱出をする。執事などを斬り殺して。
彼は猫であったのだ。
うp主さんこの漫画……。僕達が問いかけた時、
彼は玄関に向かっていた。
ちょっと待って!!
玄関で立ち止まる毛布にくるまった彼。そして僕達は言った。
僕達はうp主さんの好きなモノに惹かれたし、うp主さんにも
惹かれたからこうして会ったんだ。
だからこれで最後じゃない。また次も会おう!!
彼はこくこくとテンション上がり気味にうなずいた。
後日、上がった新作MAD動画の最後にはこう文章が書いてあった。
辞めようと思ったけど、好きな人がいるかぎり続ける、と。
僕達二人は相変わらずMAD動画を観て楽しんでいた。
彼が猫であろうと人間であろうと関係無かった。
また会ってみたい。僕達二人、
いや三人はいつの間にか友達となっていたのだ。
おわり。
アニメ『ご注文はうさぎですか?』とゲーム『メタルギアソリッド』を
組み合わせたMAD動画が一時期、ニコニコ動画に流行り始めた。
アニメのシーンとゲームのプレイ動画を巧妙に上手く編集して繋げた
MAD動画だが、その超絶な神プレイと可愛いアニメの声や
アニメのシーンなどで編集したMAD動画は瞬く間に有名になり、
100万再生を越えていた。
次から次へとプレイ動画MADを上げていっては100万再生を達成する。
誰もが思った。このうp主は何者なんだろうと。
僕とその友人もそう思った。
僕と友人は大学生であった。趣味はアニメとゲームなので、
このMADの存在もいち早く知った。そしてこのアニメとゲームが
とてつもなく好きなんだと、うp主から感じ取れていた。
次第に僕達の興味はうp主に向いていく。
会ってみたいと思うようになっていたのだ。
彼と言っていいのか、彼女と言ってもいいかわからないが、
彼にコンタクトをとった。いや、正確には向こうからとられた。
コメントで僕達もアニメとゲームの好きさを語った。
そうしたらアカウントに直接メッセージが送られてきたのだ。
君たちはアニメも僕の事もとても好きなようだね、と。
そのメッセージは僕と友人にも送られていた。
なぜか知らないがチャンスだった。
会いませんか?と僕達二人は熱烈なラブコールをした。
今思うととても僕達の行動は褒められたものではない。
出会い厨そのものであった。
しかし向こうの反応は嫌々とも思えず、文章も淡々としたものであった。
わかりました。では会いましょう、と。
そんな快諾の返信が来たのはすぐであった。
当日。僕と友人は緊張していた。
指定場所を僕の家にしたのも原因の一つだが、一番はどういうやつで
どういう性格の人が来るんだろう?という事であった。
可愛い女性だったら……という期待もあったかもしれない。
だが緊張と裏腹に楽観視していた事もある。
きっとアニメとゲームの話で盛り上がれるに違いないと。
集合時間ピッタリでうp主は来た。家のドアを開けた瞬間、
僕たちはぎょっとした。
目の前には毛布にくるまっている人が立っていた。
いや、人なのだろうか。そのくるまりかたは小さく、
僕達、大学生の身長の半分であった。
あなたがうp主さんですか?待ってました。どうぞこちらへ。
その声はうわずっていたかもしれない。
うp主は無言でお辞儀をして家に上がった。靴ははいてたのか
はいてないのか確認するのは忘れたが、
もそもそと僕達の後ろを這いずっていくのはなんか奇妙であった。
部屋に入り僕達は自己紹介をした。
うp主はうなずくだけで言葉を一言も発しなかった。
うp主さんも自己紹介出来たら頼みます……。嫌ならいいですけど……。
その言葉に毛布の中から一枚のディスクを吐き出した。
僕達二人は一緒に顔を見合わせながらも、
パソコンにそのディスクを入れる。
入っていたファイルはMAD動画だった。
再生してもいいですか?との問いかけにうp主はうなずく。
心なしかテンション上がり気味にうなずいたように僕達は感じた。
それは新作であった。僕達とうp主は食い入るように
パソコン画面を見つめる。不思議な一体感であった。
言葉も通じない、姿も違うが好きな事だけは共通してる。
僕達は楽しく動画を観れた。
ここ、うp主さんのこだわりを感じるよね。コメントでも言ったけど、
ここの難しいプレイはやり込んでないと出来ない。
僕達は会話に花を咲かせた。
うんうんとテンション上がり気味にうなずくうp主。
それが喜んでるようにも感じた。動画の最後に文章が出てくる。
このMADで引退しますという内容であった。
えぇ!?なんでうp主さん!!僕達は声を荒げた。
自分の好きなモノを伝えられて良かった。
多くの人がその好きを共感してくれて良かった。
多くの人と知り合えた。だから引退。
この多くの人って僕達の事?うp主はこくこくと頷いた。
動画が終わり、静寂が流れる。その静寂さを感じたのか、
うp主は一冊の漫画を吐き出す。
なにこれ……?上手い!!もしかしてうp主さんが描いたの!?
こくこくと頷いた。僕達はその漫画を読み始めた。
まるで実際の漫画家のような画力であった。
どれだけ多才なんだろう、うp主さん。
漫画はとある大きな屋敷のシーンから始まっていた。
一族の由緒あるお家柄。そこの一人息子は外へ出たかった。
しかし周りや執事はそれを許さなかった。
一族一番の秀才で彼が居れば一族は安泰。
そんな彼に自由な生活など無かった。彼は頭が良かった。
漫画の最後に彼は脱出をする。執事などを斬り殺して。
彼は猫であったのだ。
うp主さんこの漫画……。僕達が問いかけた時、
彼は玄関に向かっていた。
ちょっと待って!!
玄関で立ち止まる毛布にくるまった彼。そして僕達は言った。
僕達はうp主さんの好きなモノに惹かれたし、うp主さんにも
惹かれたからこうして会ったんだ。
だからこれで最後じゃない。また次も会おう!!
彼はこくこくとテンション上がり気味にうなずいた。
後日、上がった新作MAD動画の最後にはこう文章が書いてあった。
辞めようと思ったけど、好きな人がいるかぎり続ける、と。
僕達二人は相変わらずMAD動画を観て楽しんでいた。
彼が猫であろうと人間であろうと関係無かった。
また会ってみたい。僕達二人、
いや三人はいつの間にか友達となっていたのだ。
おわり。