「飼い猫の気持ちがわかる機械?」
「そう。気にならない?自分の飼い猫がどう思ってるのか、って」
「うぅ~ん、そりゃ気になるけど……。でも知るのが怖いよ」
「なんで?」
「自分の事を嫌ってたら嫌だもん。本音を知るって凄く怖くない?
わたしはこの機械はなんかなぁ……、使う気になれないよ」
「そうかもしれないけどさ。大事な事だとも思うよ。
腹を割って話すとかさ。そういうのがあってもいいんじゃないかな」
■ ■ ■
「りきまる……あなたはいつもわたしの後ろをついてくるね」
「にゃぁにゃぁ」
「わたしの事、好きなのかな~?」
「にゃぁにゃぁ」
……。わたしは思う。相手の気持ちがわからないからこそ、
だからこそ素敵な感じってすると思う。機械は使わずにとっておこう。
それから何年か経った。りきまるはすっかり歳をとった。
元気に歩いていたころが懐かしいくらいに。今はもうじっとしてあまり動かない。
「……りきまる」
もう先は長くないかもしれない。わたしは押し入れを探していた。
若いころは……本音を知りたくなかった。でも今は聞ける気がする。
今なら素直に彼の気持ちを受け入れられる。
電源を入れた。
古い機械なのにも関わらず、起動音と同時に明るい液晶が付く。
うぃーーん、うぃーんとモーター音が無音な部屋に鳴り響いた。
一匹と、一人しかいない部屋に、鳴り響いた。
「りきまる。まず、わたしの本音を言うね?
あのさ……あなたとずっと一緒に過ごしてきて、すごく楽しかったよ。
だからお願い。もうちょっとだけ……生きてほしい。お願い」
液晶がチカチカと光る。文字として気持ちが表示されていく。
彼の本音が──、気持ちが──、
「ぼ、く、も……?」
文字がどんどん表示されていった。溢れんばかりに。
ぼくも同じ気持ち!!たのしかった!!
とてもうれしいよ!!ぼくを立派に育ててくれてありがとう!!
ぼくはとてもしあわせだった!!しあわせだったよー!!
「ふふっ、おかしいね。あなたはそんな性格だったんだ。
とても飼い主想いで面白いんだね……」
液晶は光を失い、モーターは音を失った。静寂な世界が訪れる。
「……りきまる。ありがとう」
「……にゃおーーん!」
END
「そう。気にならない?自分の飼い猫がどう思ってるのか、って」
「うぅ~ん、そりゃ気になるけど……。でも知るのが怖いよ」
「なんで?」
「自分の事を嫌ってたら嫌だもん。本音を知るって凄く怖くない?
わたしはこの機械はなんかなぁ……、使う気になれないよ」
「そうかもしれないけどさ。大事な事だとも思うよ。
腹を割って話すとかさ。そういうのがあってもいいんじゃないかな」
■ ■ ■
「りきまる……あなたはいつもわたしの後ろをついてくるね」
「にゃぁにゃぁ」
「わたしの事、好きなのかな~?」
「にゃぁにゃぁ」
……。わたしは思う。相手の気持ちがわからないからこそ、
だからこそ素敵な感じってすると思う。機械は使わずにとっておこう。
それから何年か経った。りきまるはすっかり歳をとった。
元気に歩いていたころが懐かしいくらいに。今はもうじっとしてあまり動かない。
「……りきまる」
もう先は長くないかもしれない。わたしは押し入れを探していた。
若いころは……本音を知りたくなかった。でも今は聞ける気がする。
今なら素直に彼の気持ちを受け入れられる。
電源を入れた。
古い機械なのにも関わらず、起動音と同時に明るい液晶が付く。
うぃーーん、うぃーんとモーター音が無音な部屋に鳴り響いた。
一匹と、一人しかいない部屋に、鳴り響いた。
「りきまる。まず、わたしの本音を言うね?
あのさ……あなたとずっと一緒に過ごしてきて、すごく楽しかったよ。
だからお願い。もうちょっとだけ……生きてほしい。お願い」
液晶がチカチカと光る。文字として気持ちが表示されていく。
彼の本音が──、気持ちが──、
「ぼ、く、も……?」
文字がどんどん表示されていった。溢れんばかりに。
ぼくも同じ気持ち!!たのしかった!!
とてもうれしいよ!!ぼくを立派に育ててくれてありがとう!!
ぼくはとてもしあわせだった!!しあわせだったよー!!
「ふふっ、おかしいね。あなたはそんな性格だったんだ。
とても飼い主想いで面白いんだね……」
液晶は光を失い、モーターは音を失った。静寂な世界が訪れる。
「……りきまる。ありがとう」
「……にゃおーーん!」
END