Column227.病院変死、なぜ挙がらない容疑者。 | 打倒池上彰(さん)!? 元局アナ・元日雇派遣労働者がニュースの深層を斬る!!【毎週土曜更新】

打倒池上彰(さん)!? 元局アナ・元日雇派遣労働者がニュースの深層を斬る!!【毎週土曜更新】

テレビ局ディレクター、アナウンサー、国家資格予備校講師、W杯ボランティア、本書き、日雇派遣、不動産飛込営業、コールセンターマネージャ、ITベンチャー人事総務課長という多彩な経験から多角的な独自視点で、今起きているニュースの深層を、徹底的に好き勝手に斬ります。

横浜市の病院の同じ階で、入院患者2人が、
点滴に異物混入され、死亡した事件で、
今も容疑者検挙に至っていない。


どのマスコミもはっきり報じないが、
伝え方から、院内関係者であることは確実だ。


逃亡や証拠隠滅の恐れがない反面、
密室に近い状況での犯行のため、
神奈川県警察は、全面否認でも起訴できる証拠を、
慎重に集めていると推測される。


だから時間がかかっている。
というより、時間をかけているのだ。


もう一つの理由として、事件後、
同病院の同じ階で亡くなった患者は1人しかいない一方、
4月事件発覚まで、50人以上の患者が亡くなっている。


いくらターミナルケア(終末期医療:
死を回避できない重篤患者に対する医療)
の患者を対象にした階だとしても、

事件前後を境に一気に減るのは、
どう考えても不自然であり、
2人以外について調べているのであろう。


おそらくマスコミ各社には、
すでに容疑者らしき人物を把握しているが、
警察が逮捕もしくは指名手配していない以上、
報道するわけにはいかない。


しかしすでに映像や写真は多くとられており、
もしかしたらインタビューにも答えているかもしれない。


この構図はまさに、1998年に起きた和歌山県の
毒入りカレー事件を思い出させる。


この事件では、容疑者がカレーに毒を入れた証拠はなかったが、
自宅から発見された毒物と同じ化学構造をしていること、

事件現場付近の容疑者および容疑者以外の人物の
時系列の動線から、容疑者以外に毒を混入できる人物は
いないという証拠があったことから有罪判決となっている。


この事件でも、容疑者逮捕後に、初めて実名が報道された。


ましてや今回は院内だ。先に触れた人数面とも併せて、
まだまだ時間はかかるものと思われる。


今回のことで2つ腑に落ちないことがある。
1つは病院の対応だ。


事件発生前から、看護師の衣服が切り裂かれていたり、
カルテの紛失も発生し、それらが横浜市役所に通報され、
市からの改善要望があったにもかかわらず、
病院は、警察に通報はしなかった。


県内では、老人ホームの入居者を抱きかかえて、
高所から落とす殺人事件や、障害者入居施設で、
19人もの方を刺殺する事件が発生したばかりである。


服が切り裂かれ、カルテもなくなっている、
事件性を疑わないのは、危機意識が欠如しているとしか思えない。


もう1つは、無関係者が義憤にかられ、
抗議の電話を病院に入れていることである。
はっきりって、威力業務妨害以外の何物でもない。


入院したことのある患者やその家族では、という推測もあるが、
それなら抗議ではなく、病院や警察に問い合わせるのが自然だ。


となれば、無関係の人間が、異常事態に陥って
混乱している事件現場に、土足で入り込んで、
捜査の邪魔をもしているに等しい。


もちろんこれが行政であれば話は別だ。
行政なら、その地域住民全員が関係者だからだ。


義憤にかられる気持ちは理解できないわけではないが、
自身のとっている行動が、何のプラスにもならず、
ただ自分の憤りをぶつけているだけという自覚を促したい。


さて、腑に落ちないという点では、指摘される点滴袋の異常を、
看護師が見抜けなかったことも指摘されているが、
それは非常に難しいと思われる。


筆者も、この点滴袋と同じ形状の袋を
いくつも取り扱ったことがあるが、

ゴム栓にシールが貼られていても、
予防接種用の細い注射針なら、
シールのくぼみに紛れて、凝視しないと難しい。


この点からも、かなり専門的知識があり、
かつ取り扱いになれている専門職でしか難しいことから、
容疑者がすでに特定されていることは想像に難くない。


警察も大変であろうが、全容解明のために、
この難局を、乗り越えていただきたい。